 |
『本当は怖い乾いた咳~飛び散った悪魔~』 |
 |
S・Mさん(女性)/36歳 |
 |
OL |
中堅商社で働くベテランOL、S・Mさんは、結婚して10年。これまで夫婦2人だけの時間を大事にしたいと考えてきましたが、そろそろママになりたいと考え、子作りに励むことに。しかし、半年経ってもなかなか妊娠の兆しはなく、なぜか乾いた咳が出るようになります。そして、もともと生理が重く、10代の頃から生理痛に悩まされてきたS・Mさんは、やがて乾いた咳が生理と全く同じ周期で起きていることに気付きますが、その後も異変は続きました。 |
 |
(1)乾いた咳
(2)生理痛の悪化
(3)乾いた咳がぶり返す
(4)更に生理痛が悪化
(5)胸の激痛
(6)呼吸困難 |
|
子宮内膜症(しきゅうないまくしょう) |
<なぜ、乾いた咳から子宮内膜症に?> |
「子宮内膜」とは、子宮の内側にある粘膜組織のこと。子宮内膜は卵子が排出される時期に合わせて成長し、妊娠しなかった場合は血液と共に排出されます。それが、生理つまり月経の度に繰り返されています。「子宮内膜症」は、この子宮内膜と同じ組織が子宮以外の場所で増殖し、炎症や出血といったトラブルを引き起こす病です。現在、国内の患者数は、月経のある人の実に10人に1人。近年、その数は増加の一途をたどりつつあるのです。しかしなぜ、子宮以外の場所に子宮内膜が出来てしまうのでしょうか?その訳は、月経の仕組みにあります。実は月経の血液は、全てが体の外に排出されている訳ではありません。その一部は、卵管を逆流し体内に留まってしまうのです。S・Mさんの場合も、逆流した血液に含まれていた子宮内膜の細胞組織が子宮の周りで増殖を開始。生理の度に子宮以外の場所で子宮内膜がはがれ、炎症の範囲を広げていったのです。そしてこの増殖した組織が、最後に到達した場所こそが肺でした。S・Mさんを繰り返し襲ったあの「乾いた咳」は肺に巣食った子宮内膜が原因。月経と同じ周期で咳が出たのも、月経の度にその組織がはがれ、炎症を起こしたせいだったのです。しかしS・Mさんは、度重なるそのサインを見過ごしていました。そのため、症状はさらに悪化。ついには、「胸の激痛」や「呼吸困難」に見舞われてしまったのです。では彼女が、この子宮内膜症に気付くポイントはなかったのでしょうか?それこそが、あの「生理痛の悪化」。「生理の度に徐々に痛みが重くなる」というのがこの病の最大の特徴。だからこそ「生理痛の悪化」に気付いたら、一度はこの病を疑い、専門医を受診することが大切なのです。緊急手術から2年。S・Mさんは、ついに念願のわが子を出産しました。子宮内膜症を患っても、適切な治療を受ければ、子供を授かることは充分に可能なのです。 |