診察室
診察日:2007年8月28日
テーマ:おならで病気を早期発見スペシャル
「本当は怖い臭いおなら〜出口のない闇〜」
「本当は怖い臭くないおなら〜悪魔の雄叫び〜」

『本当は怖い臭いおなら〜出口のない闇〜』

K・Mさん(男性)/55歳 サラリーマン
広告代理店に勤めるK・Mさんは、妻と年頃の娘との3人暮らし。「おならを我慢するのは健康に悪い」と信じる彼は、食事中でさえ猛烈に臭いおならを何度もして家族から嫌がられていました。そんなK・Mさん、実は便がゆるくいつも下痢気味。自分では毎晩酒をたくさん飲むからだろうと気にも留めていませんでしたが、やがて腹部の膨満感などを覚えるように。さらに、なぜか以前のような豪快なおならが出なくなるなど、様々な異変が現れました。
(1)臭いおならがよく出る
(2)下痢
(3)腹部膨満感
(4)お腹が重く痛む
(5)すかし屁
(6)便秘
(7)おならが出ない
(8)お腹の激痛
大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)
<なぜ、臭いおならから大腸憩室炎に?>
「大腸憩室炎」とは、何らかの原因で大腸の壁に「憩室」と呼ばれる窪みができてしまい、そこに便などが詰まり、炎症を起こしてしまう病気。そのまま放置すると、炎症部分が化膿。最悪の場合、腸閉塞などを起こし、死亡することもある恐ろしい病です。では、一体なぜ腸に憩室ができてしまうのでしょうか?その最大の原因は便秘です。長い間便秘が続くと、腸は便を押し出そうと、蠕動(ぜんどう)運動を繰り返します。すると、腸の壁は次第に弱り、張りが無くなってしまうのです。それと同時に、便は腸内細菌により発酵し、臭いガスを大量に放出。このガスが、弱った腸の壁に圧力を加え、憩室が出来てしまうとも考えられています。しかし、K・Mさんの場合は便秘ではなく、むしろ下痢気味だったはず…。一体どういう事なのでしょうか?実は彼の腸の中では、下痢状の便以外に、いわゆる宿便が溜まっていたのです。これは長年、肉中心の食事ばかりを続けている人に多く見られる傾向。肉中心の食事は、固い便を生み、それが宿便として腸に溜まります。腸はこれをなんとか流そうと水分を放出。その結果、宿便が残ったまま下痢となるのです。下痢の陰に潜む便秘、すなわち「隠れ便秘」の状態だったためK・Mさんの腸には憩室ができてしまいました。そうとも知らず、食生活に全く気を使わなかったK・Mさん。その結果、彼の憩室に便がつまり、炎症が起こり腹部の痛みとなって現れ始めました。さらに炎症が進むと、腸壁が炎症で腫れ始め、腸内を圧迫。余計に便が通りにくくなっていきました。そのため、おならさえも出にくくなり、腸内に滞留。やがて、おならは細い隙間を縫って、すぅーっと音のないおならとして出て行きました。そして最後の瞬間。ついには炎症部分に膿が溜まり、腸内細菌がお腹中に広がり、お腹に激痛が襲ったのです。では、K・Mさんには、この病を未然に防ぐチャンスはなかったのでしょうか?そのサインこそあの「臭くて回数の多いおなら」。あのおならは、彼が肉中心の食生活を続け、隠れ便秘になっていた事のサイン。K・Mさんのように、おならの警告を無視し便秘を放っておくと、大腸憩室炎にかかるリスクも高まるのです。憩室は、50代以上の10人に1人が持っていると言われています。この病にならないためにも、臭くて回数の多いおならをする人は、日頃から食物繊維をたくさん摂り、健康的な排便をすることが肝心なのです。
『本当は怖い臭くないおなら〜悪魔の雄叫び〜』
S・Cさん(女性)/40歳 主婦
主婦のS・Cさんは現在、夫と離婚調停中。半年前に夫が長年に渡り浮気をしていたことが発覚し、以来夫の下を離れ一人暮らしをしてきました。そんなS・Cさんにとって、もう一つの悩みがおなら。一日に何度もおならがしたくなってしまうのです。おならはなぜか全く臭くなかったのですが、緊張すればするほど腹部に違和感を覚え、猛烈にしたくなるS・Cさん。さらに、決まって夕方におならをしたくなるなど奇妙な異変が続きました。
(1)臭くないおならがよく出る
(2)緊張するとおならがしたくなる
(3)夕方になるとおならがしたくなる
(4)激しい動悸
噛みしめ呑気(どんき)症候群
<なぜ、臭くないおならから噛みしめ呑気症候群に?>
「噛みしめ呑気症候群」とは、緊張やストレスが原因で、ゲップやおなら、腹部の膨満感など身体に様々な異変を引き起こす心身症のひとつ。原因が分かりづらいことから、不登校や出社拒否などの社会不適応、さらにはうつ病などになることもある恐ろしい病です。あまり聞き慣れない病名ですが、実は日本人の8人に1人がこの病気を患っているとも言われ、中でもストレスを受けやすい20代〜50代の女性に多いのが特徴。そう、この病の原因はストレス。S・Cさんの場合も、夫の浮気や離婚調停などが精神的なストレスとなって襲いかかっていました。では、なぜストレスを受けると、この病になってしまうのでしょうか?実は人間はストレスがかかると、無意識のうちに上下の歯を噛みしめるため、舌が上あごに押し当てられる状態になります。すると、のどの奥に溜まった唾液と共に、空気も一緒に飲み込み、消化器に入ってしまいます。そして、これを何回も繰り返してしまうのです。普通であれば、一日に飲み込む空気の量はごくわずか。しかし、この病を患うと、気付かないうちに、胃がパンパンに膨らんでしまうほど空気も飲み込んでしまっているのです。そう、この空気こそ、あの大量のおならの原因。空気をたくさん飲み込んでいたから、頻繁におならが出ていたのです。ではなぜ夕方におならが出やすくなるのでしょうか?朝、活動を開始してから、飲み込んだ空気が大腸に届くまでおよそ5〜6時間。溜まりに溜まった空気が、大腸の内圧を高めるのが夕方以降なのです。さらに、緊張すると、胃の動きが活発になり、飲み込んだ空気が大量に大腸に送り出されるため、おならをしたくなるのです。激しい動悸を感じたのは、心臓の鼓動がまるで太鼓のように、空気で膨らんだ胃に反響したために起こったことでした。でも、これら全ての症状は、空気の飲みすぎが原因。それ以外は、彼女の身体は正常なため、いくら検査をしても原因が見つからないのは当然のことでした。まさかおならの原因がストレスだとは思ってもいなかったS・Cさん。ドクターショッピングを重ねた上、辛い症状の原因が分からない事で、さらにストレスを感じ、うつ状態になるという悪循環に陥っていたのです。では彼女は、この病に気付くことは出来なかったのでしょうか?そのサインこそ、あの“臭くない”おなら。この病気の場合、おならの成分のほとんどが空気のため、普通のおならより臭くないのが特徴。「匂いのないおなら」こそが病を警告するメッセージだったのです。