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『本当は怖い喉の痛み<2>〜声なき悪魔〜』 |
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O・Yさん(女性)/54歳 |
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保険外交員 |
ベテラン保険外交員のO・Yさんは、3年前に夫に先立たれ、現在一人暮らし。若い頃から貧血気味だったものの、生活に支障がある訳ではありませんでした。そんなある日、食べ物を飲み込んだ時に、何かが触れるような違和感を覚えたO・Yさん。さらに3ヵ月後、今度は喉に小骨が刺さったような痛みを感じます。魚の骨ならそのうち取れるだろうと特に気にしていませんでしたが、その後、息子夫婦と幸せな同居生活を始めたO・Yさんに、病魔は容赦なく襲いかかりました。 |
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(1)喉の違和感
(2)喉に小骨が刺さったような痛み
(3)耳の奥にキュッとしまるような痛み
(4)喉に染みるような痛み |
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下咽頭癌(かいんとうがん) |
<なぜ、喉の痛みから下咽頭癌に?> |
下咽頭とは喉の一番下。この部分にできる癌が下咽頭癌です。原因は詳しくわかっていませんが、男性の方が女性より4〜5倍ほど多く、喫煙や飲酒などの刺激が大きく関係していると考えられています。しかし、O・Yさんは煙草も吸わず、お酒も週に1回程度。なのになぜ、この下咽頭癌に冒されてしまったのでしょうか。実はそれ以外にも、意外な危険因子があるのです。それが「貧血」。では、貧血の人がなぜ下咽頭癌になってしまうのか?鉄分には、粘膜を正常に保つ作用があります。つまりそれが欠乏すると逆に、粘膜に悪影響を及ぼすのです。この状態が全て病に直結する訳ではありませんが、人によっては潰瘍、そして癌へと発展してしまう事も。事実、女性の下咽頭癌患者のほとんどが長い間「鉄欠乏性貧血」を患っていた事がわかっています。O・Yさんの場合も、若い頃から何十年にもわたって貧血気味。喉の粘膜が徐々に変化していきました。しかしこれまで症状はほとんど出ず、半年前のあの飲み込んだ時の違和感が最初でした。これこそ潰瘍ができた証。食べ物が腫れた潰瘍にふれたことで起こったのです。しかしO・Yさんはそれを3ヵ月間も放っておいてしまいました。その結果、潰瘍は癌化。小骨が刺さったような痛みを感じるようになったのです。この時点で病院に行っていれば大事には至らなかったはず。しかしこれさえも見過ごしてしまったO・Yさん。癌はさらに進行し、あの耳の痛みに襲われたのです。あれは喉の痛みを耳で感じたもの。喉と耳の神経がつながっているために起こる、いわゆる放散痛でした。これは進行した下咽頭癌の特徴的な症状。このようにかなり進行しないと、症状がはっきりと表れないのです。事実、その70%程度が初診時には、すでに癌が咽頭に浸潤(しんじゅん)、または頸部リンパ節に転移していることが多いと言われています。O・Yさんの場合も、発見が遅かったため声帯ごと癌を切除しなければならず、結果、声を失うことになってしまったのです。現在、女性の2人に1人が「貧血」を患っていると言われます。もし、貧血の女性が、飲み込みづらいなど、喉に違和感を感じたら、注意が必要。ただの風邪と決めつけず、念のため耳鼻咽喉科を受診する事をお勧めします。 |