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『整形外科・恐怖の症例』 |
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T・Mさん(女性)/50歳 |
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主婦 |
最近太り気味なのを気にして健康診断を受けたところ、メタボリックシンドロームと言われたT・Mさん。高校時代はバレーボール部のエースだった彼女は、少しでもあの頃の体型を取り戻したいと運動をしてやせることを決意。近所の主婦が集まるウォーキングサークルに入ってハードなウォーキングを続けていましたが、ある日突然、腰に痛みを感じます。それでも、ここで休むと怠け癖がついてしまうとウォーキングを続けたT・Mさん。そんな彼女にさらなる異変が襲いかかりました。 |
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(1)腰の痛み
(2)膝の痛み
(3)足の付け根の痛み
(4)正座ができない
(5)階段が上がれない |
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変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう) |
<なぜ、腰の痛みから変形性股関節症に?> |
「変形性股関節症」とは、何らかの原因で、股関節の動きが悪くなり、痛みや歩行障害などが出る病。そもそも股関節は、大腿骨頭と、それを覆うように包んでいる臼蓋(きゅうがい)と呼ばれる骨からできています。この病は、2つの骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減り、骨が削れて変形し、周りの組織に炎症が起きて、発症すると考えられています。40代後半から50代に多く、全国でおよそ100万人の患者がいると言われています。では、なぜT・Mさんはこの病になってしまったのでしょうか?その大きな原因こそが肥満。そして過度のウォーキング。そもそも軟骨は加齢とともに減っていくもの。しかし、彼女の場合は人一倍重い体重が圧力となり、軟骨のすり減りが加速。無理なウォーキングのせいで、さらに圧力がかかり、軟骨のすり減りが激化してしまいました。ウォーキングそのものは、身体に優しい運動ですが、痛みが出てまで続けるのは、逆効果なのです。そしてもう一つ、彼女の場合、臼蓋の丸みが不足していたことも病の原因となりました。これは、「臼蓋形成不全」と呼ばれ、日本人の300人に1人に見られる先天的な異常。女性に多く、そのため変形性股関節症の発症は、女性のほうが男性の5倍にものぼるのです。しかし、彼女の初期症状は、腰痛でした。なぜ股関節の痛みが腰に?これがこの病の落とし穴!股関節の周りには腰や膝につながるたくさんの神経が走っているため、股関節で起きた炎症が周りの神経に影響を与え、離れた腰や膝に痛みが出ることがよくあるのです。そのためただの腰痛と思い込み、悪化させてしまいがち。彼女の場合もそうでした。最終的に残された選択肢は、人工関節の手術しかなかったのです。軟骨は一度すり減ると、二度と復活することはありません。だからこそ早期に発見し、それ以上進行させないことが何より大切なのです。 |