診察室
診察日:2008年1月22日
女性が気をつける病気スペシャル
テーマ:
「本当は怖い思い込み〜誤解が招く悲劇〜」

『本当は怖い思い込み〜誤解が招く悲劇〜』

S・Sさん(女性)/34歳 OL
中堅商社のOL、S・Sさんは、ある日、同期入社の友人から「乳ガンかも知れない」との相談を受けました。幸い友人は乳腺症だったことが分かりますが、本当の魔の手は、この時、相談に乗っていたS・Sさんに忍び寄っていました。友人の一件以来、時折、自分の胸をチェックするようにしていたS・Sさん。ある日、右胸の外側に柔らかく弾力のあるしこりがあるのに気付きます。心配になり、インターネットで調べますが、「乳ガンのしこりは硬い」と書かれていた上、友人も「しこりの殆どが乳腺症」と言っていたため、「私のしこりも乳腺症に違いない」と自分勝手な判断をしてしまいます。しかし、そんなS・Sさんに、さらなる異変が襲いかかりました。
(1)柔らかいしこり
(2)しこりが痛む
(3)乳房が痛む
(4)しこりが硬くなる
乳ガン
<なぜ、柔らかいしこりから乳ガンに?>
「乳ガン」とは、乳房にある乳腺の組織に発生するガンのこと。日本では、年間約3万5千人が発症。日本人女性の約20人に1人が患う、女性にとって最も身近なガンの1つです。しかも死亡者数は、年々増加の一途をたどり、現在、年間約1万人が死亡しています。しかし、一体なぜ、亡くなる人がこんなに増えているのでしょうか?その大きな原因の一つが、乳ガンに対する認知度の低さです。女性の大敵である乳ガンですが、日本ではまだ身近な病ととらえていない女性が多く、それが死亡者数の増加につながっていると考えられているのです。S・Sさんも、乳ガンには注意はしていましたが、聞きかじりの情報などによる間違った思い込みをしてしまいました。その1つが、「乳ガンのしこりは硬い」ということ。そもそも、殆どの乳ガンのしこりは乳管の中で発生・増殖したガン細胞が、乳管の外へと染み出し、塊をつくったもの。このしこりがある程度成長すると、外から触れる事ができる大きさにまで発達します。確かに通常、乳ガンのしこりの多くは、硬いものと言われています。しかし、中には周りの脂肪組織をまとうように増殖し、初期の頃には、しこりが柔らかいタイプのものもあるのです。そして、2つ目の思い込みが「乳ガンは痛まない」ということ。一般的に、乳ガンのしこりは痛まないものとされています。ところが、理由は定かではありませんが、まれに乳ガンのしこりに痛みを感じる患者もいるのです。つまり、痛みのあるなしだけで、乳ガンを見分けるのは極めて危険。勝手な自己判断をしてはならないのです。こうした思い込みで、病に気付くのが遅れたS・Sさん。既にこの時、ガンは大きく成長。やむなく、右の乳房を切除する事になってしまいました。先進国で乳ガンの死亡者数が増加しているのは日本だけです。早期発見するためには、普段から正しい方法で月に1度は自己触診を行い、少しでも異変を感じたら、すぐに乳腺専門のクリニックなどを受診することが大切です。
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