診察日:2008年2月12日
テーマ:
「本当は怖い立って靴下が履けないこと〜ものぐさ妻の悲劇〜」
『本当は怖い立って靴下が履けないこと〜ものぐさ妻の悲劇〜』
S・Tさん(女性)/57歳
主婦
身体を動かすのが嫌いで、50歳を過ぎた頃から少々肥満気味だった主婦、S・Tさん。ある朝、立ったまま靴下を履こうとしたところ、バランスが取れず、上手く履けないことに気付きました。それから5年後、ますます貫禄がついたS・Tさんは、靴下はどっしり座って履くのが当たり前になったばかりか、階段を上る時には手すりにつかまらないと足元がおぼつかなくなっていました。
(1)立ったまま靴下が履けない
(2)階段の手すりが必要
(3)膝の痛み
(4)ちょっとしたことですぐによろける
運動器不安定症⇒寝たきり状態に
<なぜ、“立ったまま靴下が履けないこと”から運動器不安定症に?>
「運動器不安定症」は、社会の高齢化に伴い、高齢者の転倒を予防するため新たに認定されたばかりの病。「加齢によりバランス能力や歩く力が低下し、転倒する危険が高まった状態」を指します。著しい運動能力の低下に加え、膝や腰などの関節や骨に何らかの異常があると、この病と診断されます。では、S・Tさんの場合は? 50代後半から、立ったまま靴下が履けないなど、運動能力が低下してしまった彼女。それを放っておいた結果、筋力はさらに衰え、今度は膝に痛みを覚えるようになってしまいました。これは「変形性膝関節症」というもの。筋力が衰えることで関節がぐらつき、軟骨がすり減って痛みを覚える病です。もともと運動能力が低下していたS・Tさんは、この膝の痛みが起きた時点で、運動器不安定症になってしまったと考えられるのです。とはいえ、加齢とともに運動能力が低下するのは、誰もが経験すること。それでは、運動器不安定症になることは避けられないのでしょうか? いいえ、防ぐ方法はありました。それが運動。S・Tさんも、肥満解消のために始めた運動を続けていれば、転倒するリスクは下げられたはず。さらに膝の痛みを年のせいと諦めず、病院で適切な治療を受けていれば、大事には至らずに済んだのです。それらを放置した結果、家の中で転倒し骨折。3年後には寝たきりとなってしまいました。転倒・寝たきりを避けるために、何より大切なのは運動。若い世代は勿論ですが、今からでも決して遅くはありません。今出来る運動をすることこそが、あなたの運動寿命を延ばすのです。