診察室
診察日:2008年4月15日
男子禁制!家庭でできるレディース人間ドックスペシャル
テーマ:「産婦人科『尿漏れ』」
「整形外科」
「特別診察室『線維筋痛症』」
「耳鼻咽喉科」

「産婦人科『尿漏れ』」

K・Tさん(女性)/40歳(現在) 主婦
高校生の頃、大笑いした時にごく少量の尿漏れを経験したK・Tさん。でもそれは年に1回あるかないかという程度のごくささいなものでした。それから18年、結婚し出産を経験した3年後、くしゃみや咳をした時に小さじ一杯程度の尿漏れが始まったK・Tさん。病状は瞬く間に悪化。1週間に3、4回と尿漏れを繰り返すようになり、3ヵ月後にはトイレに向かう一歩一歩ごとに漏れ、自分の意思ではどうにも出来ない状態になってしまいます。
腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)
<なぜ、尿漏れから腹圧性尿失禁に?>
「腹圧性尿失禁」とは、自分の意思に反して、お腹に力を入れた時などの腹圧で尿が漏れ出してしまう病気。40代から50代の女性に特に多いと言われる病です。そもそも膀胱を始め子宮・直腸などの臓器は、「骨盤底筋」という腹部の一番下にある筋肉やじん帯によって支えられています。成人女性の尿漏れは、この骨盤底筋がゆるむことによって起こるのです。そして、このゆるみがさらに進行すると、膀胱や尿道が不安定に動くようになり、ささいな圧力がお腹にかかっただけで尿が漏れるようになってしまうのです。膀胱付近のエコー画像を見ると、膀胱のすぐ下で骨盤底筋がそれを支えているのがわかります。お腹に力を入れても、健康な人なら膀胱はしっかり支えられ、尿道も締め付けて尿が漏れることはありません。ところが、骨盤のゆるみが進行し、腹圧性尿失禁になると、膀胱や尿道を固定することが出来ずに下がってしまい、大きく変形。尿道を締め付ける力もしっかり伝わらず、尿道を閉じることが出来ずに漏れ出てしまうのです。さらにこの状態を放っておくと、やがて股の間から子宮が飛び出すという最悪の事態が。骨盤底筋が衰え続けると、支え切れなくなった子宮が体外に出てしまうことがあるのです。これは「性器脱」と呼ばれ、子宮が下から出てしまった場合、元に戻すのは難しく、手術などが必要な場合も。骨盤底筋は意識して使うことがないため、衰えやすい筋肉の一つ。さらに日頃の生活習慣の中にも、この骨盤底筋に悪影響を与える行動が数々あると言います。あなたは大丈夫ですか?将来の骨盤底筋の危険度がチェック出来る問診がご覧のホームページに載っています。気になる方は、ぜひチェックしてみて下さい。
特別診察室『線維筋痛症』」
H・Hさん(女性)/53歳(現在) 主婦
16歳の時、跳び箱を飛んで着地した際に、両足の骨が爆発したような痛みに襲われたH・Hさん。レントゲンを撮っても骨に異常は見当たらず、痛み止めの薬や湿布薬による治療を受けたものの、両足の激痛は治まりませんでした。その後も、様々な病院を訪ね検査を受けますが、結果は「異常なし」ばかり。発症から3年、爆発するような痛みが、今度は両腕にも生じるようになりました。そして発症から30年、あまりの激痛のため手足が全く動かせなくなったH・Hさん。30年以上に及んだドクターショッピングの結果、ある病院での医師の一言から、ついに病名が明らかになります。
(1)両足の激痛
(2)激痛で眠れない
(3)両腕の激痛
(4)寝たきり
線維筋痛症(せんいきんつうしょう)
<なぜ、足の骨の激痛から線維筋痛症に?>
「線維筋痛症」とは、関節や筋肉など身体のあちこちに激痛を感じる病。命を失う危険はありませんが、余りにひどい痛みのため、日常生活に多大な支障が生じます。実は線維筋痛症は、1990年にアメリカで診断基準が決まり、日本では2003年にようやく厚生労働省が研究班を立ち上げた極めて新しい病です。その後、研究が進み、現在、線維筋痛症の予備軍を含めた推定患者数はおよそ200万人。しかもその8割以上が女性ということが分かってきました。そして、その最大の特徴こそ…全身を襲う激しい痛み。しかし、実はその痛み、手や足の異常によって起こる痛みではなく、脳が勝手に体中に発信した痛みだったのです。そもそも私たちの体は刺激を受けると、その刺激は信号となって神経から脳の「視床下部」へと伝わり、そこで痛みという感覚が認識されます。脳が痛みを感じると、「下垂体」からセロトニンなどの痛みを抑制する物質が出て、これを抑えます。ところが、線維筋痛症を発症すると、脳が誤作動を起こし、痛みを抑制するセロトニンの量が減少。痛みを抑えることが出来なくなってしまいます。さらに、原因は定かではありませんが、ちょっとした刺激が10倍にも100倍にも増幅してしまうのです。つまりこの病は、脳の誤作動によって、ごく軽い刺激が猛烈な痛みに化けてしまったものなのです。事実、線維筋痛症の患者は、自らの痛みを「体中をガラスの破片が流れる」、「高電圧を体に流された」と、表現しています。そして、この病の最大の落とし穴が、どんな検査をしても異常が認められないこと。この病は、あくまで脳の中の誤作動によるもの。そのため、レントゲン、血液検査、血管造影検査など、いかなる検査でも痛みの原因が見つからないのです。それにしても、なぜH・Hさんはこの病を発症してしまったのでしょうか?きっかけは、あの跳び箱で着地した時の衝撃。原因はわかっていませんが、あの衝撃が引き金となり、脳が誤作動を起こしたと考えられるのです。線維筋痛症を発症するきっかけは、こうした衝撃やケガ、手術などのいわゆる「外傷」が全体の半数。残る半数は、度重なるストレスが引き金になると考えられています。そう、この病はいつ誰が発症しても不思議ではないのです。とはいえ、そんな線維筋痛症も、発病から3年以内に適切な治療を受ければ、回復の見通しが立つようになってきました。H・Hさんの場合も、本格的な治療が始まったばかり。激痛と戦いながら、根気よく投薬とリハビリを続けています。誰にでも発症する危険性がある、線維筋痛症。 ご覧のホームページに家庭で簡単に分かる線維筋痛症の発見法が載っています。気になる方はぜひチェックしてみて下さい。
家庭でできるレディース人間ドック