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特別診察室『線維筋痛症』」 |
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H・Hさん(女性)/53歳(現在) |
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主婦 |
16歳の時、跳び箱を飛んで着地した際に、両足の骨が爆発したような痛みに襲われたH・Hさん。レントゲンを撮っても骨に異常は見当たらず、痛み止めの薬や湿布薬による治療を受けたものの、両足の激痛は治まりませんでした。その後も、様々な病院を訪ね検査を受けますが、結果は「異常なし」ばかり。発症から3年、爆発するような痛みが、今度は両腕にも生じるようになりました。そして発症から30年、あまりの激痛のため手足が全く動かせなくなったH・Hさん。30年以上に及んだドクターショッピングの結果、ある病院での医師の一言から、ついに病名が明らかになります。 |
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(1)両足の激痛
(2)激痛で眠れない
(3)両腕の激痛
(4)寝たきり |
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線維筋痛症(せんいきんつうしょう) |
<なぜ、足の骨の激痛から線維筋痛症に?> |
「線維筋痛症」とは、関節や筋肉など身体のあちこちに激痛を感じる病。命を失う危険はありませんが、余りにひどい痛みのため、日常生活に多大な支障が生じます。実は線維筋痛症は、1990年にアメリカで診断基準が決まり、日本では2003年にようやく厚生労働省が研究班を立ち上げた極めて新しい病です。その後、研究が進み、現在、線維筋痛症の予備軍を含めた推定患者数はおよそ200万人。しかもその8割以上が女性ということが分かってきました。そして、その最大の特徴こそ…全身を襲う激しい痛み。しかし、実はその痛み、手や足の異常によって起こる痛みではなく、脳が勝手に体中に発信した痛みだったのです。そもそも私たちの体は刺激を受けると、その刺激は信号となって神経から脳の「視床下部」へと伝わり、そこで痛みという感覚が認識されます。脳が痛みを感じると、「下垂体」からセロトニンなどの痛みを抑制する物質が出て、これを抑えます。ところが、線維筋痛症を発症すると、脳が誤作動を起こし、痛みを抑制するセロトニンの量が減少。痛みを抑えることが出来なくなってしまいます。さらに、原因は定かではありませんが、ちょっとした刺激が10倍にも100倍にも増幅してしまうのです。つまりこの病は、脳の誤作動によって、ごく軽い刺激が猛烈な痛みに化けてしまったものなのです。事実、線維筋痛症の患者は、自らの痛みを「体中をガラスの破片が流れる」、「高電圧を体に流された」と、表現しています。そして、この病の最大の落とし穴が、どんな検査をしても異常が認められないこと。この病は、あくまで脳の中の誤作動によるもの。そのため、レントゲン、血液検査、血管造影検査など、いかなる検査でも痛みの原因が見つからないのです。それにしても、なぜH・Hさんはこの病を発症してしまったのでしょうか?きっかけは、あの跳び箱で着地した時の衝撃。原因はわかっていませんが、あの衝撃が引き金となり、脳が誤作動を起こしたと考えられるのです。線維筋痛症を発症するきっかけは、こうした衝撃やケガ、手術などのいわゆる「外傷」が全体の半数。残る半数は、度重なるストレスが引き金になると考えられています。そう、この病はいつ誰が発症しても不思議ではないのです。とはいえ、そんな線維筋痛症も、発病から3年以内に適切な治療を受ければ、回復の見通しが立つようになってきました。H・Hさんの場合も、本格的な治療が始まったばかり。激痛と戦いながら、根気よく投薬とリハビリを続けています。誰にでも発症する危険性がある、線維筋痛症。
ご覧のホームページに家庭で簡単に分かる線維筋痛症の発見法が載っています。気になる方はぜひチェックしてみて下さい。 |