診察日:2008年5月13日
睡眠スペシャル
テーマ:「本当は恐い寝言〜真夜中の暴君〜」
「本当は恐い昼間の眠気〜失われた時間〜」
『本当は恐い寝言〜真夜中の暴君〜』
K・Yさん(男性)/53歳(現在)
会社員
今から6年前、長年働いていた経理部から営業部へと異動になったK・Yさん。慣れない仕事と人間関係に戸惑い、帰宅時間も以前よりかなり遅くなったため、明らかに疲れているように見えました。人事異動から1ヵ月後、妻のTさんが目を覚ますと、何やら寝言を言っていたK・Yさん。仕事で疲れているのだろうと、妻のTさんは特に気に留めていませんでしたが、その後もK・Yさんの異変は続いたのです。
(1)寝言を言う
(2)隣で寝ている妻の足を蹴る
(3)大声ではっきりした寝言
(4)隣で寝ている妻を殴る
レム睡眠行動障害
<なぜ、寝言からレム睡眠行動障害に?>
「レム睡眠行動障害」とは、夢で体験している事をそのまま言葉として発したり、行動に移してしまったりする病のこと。原因はまだはっきりとはわかっていませんが、K・Yさんの様に真面目でストレスを溜めやすいタイプの人が、この病を発症し易いと言われています。ある調査によれば、現在この病の患者数は、推定12万人。しかも、その患者の8割が50代以上の男性だと報告されています。この病にかかると、患者本人の気付かないところで、自分だけでなく隣に寝ているパートナーをも怪我をさせてしまう恐れがあるのです。しかし、一体なぜ、こんな異常行動が起きてしまうのでしょうか?そもそも人間の眠りは、2つの状態を繰り返す事で成り立っています。眠りが浅く、夢を見る「レム睡眠」と、眠りが深く夢を見ない「ノンレム睡眠」です。健康な人の場合、夢を見ているレム睡眠中には、脳からの命令が遮断され、寝言も身体を動かすこともありません。通常、寝言を言ったり身体を動かしたりするのは、夢を見ていないノンレム睡眠の時だけなのです。ところが、この病を発症すると、何らかの原因で脳幹部の機能が低下。レム睡眠中にも関わらず、脳の命令がそのまま身体に伝わり、夢の中で発した言葉や行動が、実際に寝言や身体の動きとなって現れてしまいます。そのため、夢の内容と一致した寝言や行動をとるようになるのです。この病を見分ける最大のポイントは、悪夢による、寝言・行動をしているかいないかなのです。現在、K・Yさんは、薬による対処療法を続けており、異常な行動を起こすことはほとんど無くなったと言います。だからこそ、大きな事故を起こす前に、病を早期発見する事が何より大切なのです。
『本当は恐い昼間の眠気〜失われた時間〜』
S・Jさん(女性)/52歳(現在)
保険のセールスレディ
保険のセールスレディとして働くS・Jさんは、仕事先で知り合ったFさんと再婚。以来、夜は夫の帰りを待って就寝は11時、朝は6時には起きて朝食と弁当づくりと、生活パターンが大きく変わりました。そんな生活にも慣れてきた頃、仕事中、強い眠気を覚えるようになったS・Jさん。毎日7時間は睡眠をとっているし、気が緩んでいるだけだと自分を納得させていましたが、眠気はエスカレートしていくばかりでした。
(1)昼間に強い眠気
(2)朝から眠気を感じる
睡眠不足症候群
<なぜ、昼間の眠気から睡眠不足症候群に?>
「睡眠不足症候群」とは、慢性的な睡眠不足によって、日中、強い眠気に襲われる病のこと。悪化すると、日常生活にも支障をきたすこの病は、2005年、国際的に認められたばかりの新しい病です。最新の調査では、交通事故を起した人の中に、この病を患っていた人が、多数いると分かり始めているのです。健康な人の場合は、眠気と覚醒のリズムで、日中は正午から午後3時頃までの間だけ眠気を感じます。しかし、この病になると、朝起きてすぐに眠気に襲われるばかりでなく、正午から午後3時の時間帯に耐え難い眠気を感じてしまうのです。S・Jさんの場合も、この眠気と覚醒のリズムで最も眠気を強く感じる、午後2時に居眠り運転をしてしまいました。しかし、S・Jさんの場合、毎日7時間は寝ていたはず。なのになぜ、この病になってしまったのでしょうか?実は1日に必要な睡眠時間は、人それぞれ個人差があるのです。そのタイプは大きく4種類に分けられます。5時間から8時間の睡眠が必要な人を『平均的睡眠者』と呼び、睡眠時間が5時間未満でも平気な人を『ショートスリーパー』、そして10時間以上必要な人を『ロングスリーパー』、8時間から10時間必要な人を『ロングスリーパー傾向者』と言います。このタイプの違いは、生まれ持った体質に加え、長年の生活習慣によって決まると言われています。事実、ロングスリーパー傾向の人は、6時間以上眠っているにも関わらず、睡眠不足症候群を発症してしまっているのです。元々ロングスリーパーの傾向があったS・Jさんは、本来最低8時間以上の睡眠が必要にも関わらず、毎日7時間しか眠っていなかったため、睡眠不足症候群を発症してしまいました。睡眠不足症候群が、通常の睡眠不足と異なる点は、1日や2日良く寝るだけでは足りず、およそ2週間は適正な睡眠時間をとらないと、昼間の眠気がとれないということ。そのため、S・Jさんは、週末だけぐっすり眠っても、眠気がとれなかったのです。睡眠不足症候群は、24時間社会となった現代、働き者の日本人に多いといわれる病。さらに今後、患者数は増えていくことが予想されます。だからこそ、自分の『適正睡眠時間』を知ることが大切なのです。