診察日:2008年6月17日
女性ホルモン徹底解明スペシャル!
テーマ:「本当は怖い胸の圧迫感〜閉ざされた道〜」
「本当は怖い月経前のイライラ〜操られた心〜」
「本当は怖い胸の圧迫感〜閉ざされた道〜」
F・Aさん(女性)/53歳(発症当時)
行政書士
毎日、様々な人の相談や書類の作成に追われていた行政書士のF・Aさん。その日も深夜に帰宅し、遅い夕食を摂ろうとした時、心臓がドキドキし胸の圧迫感に襲われました。3ヵ月後、今度は喉が圧迫される感覚に襲われたF・Aさん。その異変を同僚に話すと、更年期障害の症状だと言われました。少しでも症状が和らいでくれればと、更年期障害の市販薬を飲んでいたF・Aさんですが、さらなる異変が襲いかかります。
(1)胸の圧迫感
(2)喉の圧迫感
(3)再び胸を圧迫感が襲う
(4)胸の痛み
微小血管狭心症(びしょうけっかんきょうしんしょう)
<なぜ、胸の圧迫感から微小血管狭心症に?>
「微小血管狭心症」とは、心臓の筋肉の中を走る細い血管が狭くなり、一時的に血流が滞ることで胸の痛みなどを引き起こす病。では、なぜ、血管が狭くなってしまうのでしょうか?そこに深く関係しているのが、女性ホルモンだったのです。女性ホルモンは、45歳から55歳の閉経前後に、急激に減少します。これがいわゆる更年期と呼ばれる時期。実はこの更年期に、微小血管狭心症は起こりやすいのです。主に卵巣から分泌される女性ホルモン・エストロゲン。その重要な役割は、卵巣自身に働きかけ、その細胞から卵子を作り、排卵の準備をすること。さらに、もう一つ大切な役割が、血管の太さを拡張し、血管の内膜が傷つかないよう保護すること。そのため、女性ホルモンが出ている間は、女性は心筋梗塞など血管の病になりにくいと言われています。しかし、更年期を迎え、女性ホルモン・エストロゲンが減少すると、血管が徐々に収縮し、詰まりやすい状態に陥ってしまいます。とはいえ、更年期の女性すべてが、この病になるわけではありません。では、F・Aさんの何が原因だったのでしょうか?それは…ストレス。几帳面なF・Aさんは、非常にストレスを感じやすく、自らストレスを溜め込んでいたのです。すると、強いストレスがかかることで、交感神経が刺激され、血管が収縮。心臓の細い血管が、エストロゲンの減少で狭くなり、ストレスの影響で、さらに狭くなった結果、血流が滞ってしまったのです。彼女に起きた異変は、すべて心臓の細い血管が詰まり、酸素不足に陥ったことが原因でした。この病は、アメリカで1980年代に提唱された比較的新しいもの。そのため、いまだ認知度が低く、検査で見過ごされ、ドクターショッピングを繰り返してしまう人も多いのです。更年期障害でも、動悸や息切れなど様々な症状が出ます。しかし、すべて更年期だからと片付けていると、その陰に心臓の病が隠れていることもあるのです。
「本当は怖い月経前のイライラ〜操られた心〜」
F・Sさん(女性)/29歳(発症当時)
出版社勤務
出版社に勤めるF・Sさんは、この春から、念願の編集部に異動。不慣れな仕事に苦労しながらも充実した日々を送っていましたが、ある日、生理前になると妙にイライラ度が増していることに気付きました。1週間後、生理が終わると、あのイライラは消え、気分の良さが戻ってきたF・Sさん。ところが、その後も生理前になると、体がだるくなり、眠気やイライラも高まる異変が続いたのです。
(1)月経前にイライラする
(2)月経前の倦怠感
(3)うつ状態
月経前症候群(げっけいぜんしょうこうぐん)
<なぜ、生理前のイライラから月経前症候群に?>
「月経前症候群」とは、月経前に現れる「イライラする」「体がだるい」「眠い」といった様々な症状の総称で、女性の約8割が経験している状態のこと。では、なぜ、多くの女性に月経前、これらの症状が起きるのでしょうか?その原因は、女性ホルモンの急激な変動。そもそも女性ホルモンには、プロゲステロンとエストロゲンという2種類があります。この2つのホルモンが、バランスよく増えたり減ったりすることで、女性はその機能を保っているのです。この2つの女性ホルモンの分泌量には、ひと月の間に変動があります。エストロゲンは、卵巣を刺激して排卵の準備をするホルモンです。つまり月経の終わり頃から排卵前の周期で分泌が高まります。一方、プロゲステロンは、子宮の内膜を妊娠しやすい状態に保ち、受精卵を着床しやすくする働きがあります。だから排卵後の周期に多く分泌されるのです。月経前症候群は、この2つの女性ホルモンの急激な変動に、体がついて行けなくなった結果、月経前に様々な症状を引き起こすのです。プロゲステロンの分泌が高まると、妊娠した場合に備え、体はエネルギー源である糖分を子宮などに蓄えようとし、体全体の糖分が低下します。すると、脳が「糖分が低下している」ことを「アドレナリン」という物質を分泌して警告します。このアドレナリンは、人を興奮させ、攻撃意欲を高める作用もあるため、やけにイライラするようになったのです。一方、エストロゲンには、精神を安定させる脳内物質の働きを高める作用があります。そのため、エストロゲンが減少する月経前には、脳内物質の働きも弱まり、気力が失われてしまいがちになるのです。しかし、なぜF・Sさんは、うつ状態になるまで悪化してしまったのでしょうか?それは…ストレス。新しい部署への異動という環境の変化から来るストレスで、知らず知らずのうちに状態は悪化。さらに、仕事上のミスで、自分を責めてしまったことがきっかけで、うつ状態にまで陥ってしまったのです。彼女のように症状を悪化させないためには、自分の月経周期を正しく知ることが大切です。特に気にかけていない女性も多いようですが、月経周期をちゃんと知ってさえいれば、事前に心構えができ、症状を予防できると考えられています。事実、この月経前症候群で病院を受診した患者さんの多くは、その周期を知るだけで、驚くほど症状が改善されているのですから。