診察室
診察日:2008年8月5日
女性が恥ずかしくて受診しにくい病スペシャル
テーマ:「女性が恥ずかしくて受診しにくい病<1>」
「女性が恥ずかしくて受診しにくい病<2>」

「女性が恥ずかしくて受診しにくい病<1>」

 I・Sさん(女性)/36歳(発症当時) OL
結婚10年目にして子づくりを決意したものの、なかなか妊娠の機会に恵まれないI・Sさん。職場の先輩に相談したところ、産婦人科で不妊の原因を調べてもらうようアドバイスされますが、内診台の上で脚を開くことに抵抗があり病院に行くのを敬遠していました。さらにその頃「子宮ガン検診のお知らせ」が送られてきましたが、こちらも診察されるのが恥ずかしくて行かずじまい。そうして1年が過ぎたある日、ピンク色のおりものが出ていることに気付いたI・Sさん。おりものは生理が終わっても出続けたばかりか、はっきりとした血の色に近くなっているようでした。
(1)ピンク色のおりもの
(2)不正出血
子宮頸癌ガン(しきゅうけいがん)
<なぜ、おりものから子宮頸ガンに?>
子宮頸ガンとは、子宮の下の方、子宮頸部にできるガンのこと。比較的無症状のうちに進行し、全身に転移して最悪の場合、死に至ることもある病。死亡者数は年間およそ2400人にものぼります。子宮頸ガンは、子宮の上部にできる子宮体ガンと合わせて、「子宮ガン」と呼ばれています。しかし両者は似て非なるもの。子宮体ガンは、50代以降に多い病ですが、子宮頸ガンは、最近20代、30代など若い女性に急増している病。その発症原因も、女性ホルモンが関係する子宮体ガンに対して、子宮頸ガンの場合はウィルス感染。「ヒトパピローマウィルス」というウィルスが、大きく関わっているのです。このウィルス自体は、女性の2人に1人が一生に一度は感染すると言われる、ごく身近なウィルス。性交渉によって感染するため、経験のある人は誰もが感染の可能性があります。しかし、感染した人全てが、ガンになる訳ではありません。ガンまで進行する人はごくわずか。感染してもおよそ9割の人は身体の免疫機能によって、ウィルスを撃退してしまうのです。ところが残りの1割の人は、ウィルスが撃退できず、感染し続ける状態に。そしてそのうちの1割の人が、異形成と呼ばれる前ガン状態に発展。とはいえ、この段階でもまだ大丈夫。徐々に正常な細胞に戻ることがあるのです。ところが、中には正常な細胞に戻らない人も。そしてガンという後戻りできない段階に突入してしまいます。I・Sさんの場合、発見が遅れてしまったために、ガンは2cm程度にまで成長。そこから直接出血し始めていました。あのピンク色のおりものや不正出血は、ガン細胞からの出血によって起きたものだったのです。結果、I・Sさんは子宮の全摘出という辛い選択を余儀なくされてしまいました。発見のチャンスは、子宮ガン検診にありました。I・Sさんの場合、検診の案内が届いたあの時、病変部は、まだ異形成か、ガンでも初期の段階だったと考えられます。子宮ガン検診では、ガンへ発展する前の、細胞の異変を高い精度で発見することが可能。定期的に受診さえしていれば、たとえガン化しても、早いうちに患部だけを一部切り取り、子宮を温存することも出来るのです。しかし、I・Sさんのように産婦人科の検診に抵抗感を感じ、受診しない人が多いのも事実。実際に子宮頸ガンの受診率を海外と比較すると、欧米の70〜80%に対し、日本は23.7%。まだまだ受診率が低い状況です。子宮頸ガンは、検診さえしっかり受けていれば、ほぼ100%防ぐことができる病。ガンの中でも、唯一予防可能なガンなのです。
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「女性が恥ずかしくて受診しにくい病<2>」
K・Sさん(女性)/40歳(発症当時) 主婦
40歳にして待望の赤ちゃんを授かったK・Sさん。20年来の便秘に悩まされてきた彼女ですが、最近は特にひどくなったように感じ、トイレに長居することもしばしば。そんなある日、排泄後トイレットペーパーに血が付いていることに気付いたK・Sさん。ちょっと切れたのかと特に気にしていませんでしたが、その後も気になる異変が続きました。
(1)肛門から出血
(2)肛門からイボが飛び出す
(3)頻繁にイボが飛び出す
(4)肛門がヒリヒリ痛む
(5)イボが腫れあがる
(6)イボが戻らない
嵌頓痔核(かんとんじかく) 
<なぜ、出血から嵌頓痔核(かんとんじかく)に?>
「嵌頓痔核」とは、痔核、いわゆるイボ痔が肛門の外に飛び出したまま、急に腫れあがり、戻らなくなってしまう、激しい痛みを伴う病です。そもそも人間の肛門の周りには、細かい静脈が集まって出来たクッションのようなものがあり、肛門を閉じる手助けをしています。このクッション部分が何らかの原因で膨張し、腫れ上がってしまうと、イボ痔となってしまうのです。その原因は、便秘などでの習慣的ないきみ。いきむことで肛門の細い血管に圧力がかかり、血流が悪化してうっ血し、腫れ上がってしまうのです。しかし彼女の場合、大きなきっかけは、別の、女性ならではの出来事にありました。妊娠と出産です。妊娠すると、大きくなった子宮が、下半身の血管を圧迫。血流を悪くさせ、肛門の血管もやはり、うっ血させてしまいます。そして、出産時の長時間のいきみが、さらなる大きな圧力をかけ続け、クッション部分のうっ血を増長させたのです。ある調査によると、妊娠・出産を経験した人のおよそ2人に1人が、痔の経験ありといわれるほど関係が深いのです。K・Sさんの場合、元々便秘で、いきみ続ける生活から、彼女の肛門内には、軽いイボ痔が発生していたと考えられます。それが妊娠と出産をきっかけに悪化。イボが大きく膨らんで出血し、外に飛び出してしまったのです。ところが、K・Sさんは恥ずかしさから病院を訪れることはありませんでした。さらに、彼女はトイレでいきみ続ける生活を続けた結果、ついにはイボの中の血流が悪くなり、固まって血栓に。イボは、大きく腫れ上がったまま、元に戻らなくなってしまったのです。イボ痔は、早期に受診すれば、薬による治療だけで改善できる病。にもかかわらず、このように、恥ずかしさから放置し続けてしまうため、結局手術になってしまうケースが多いのです。
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