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『本当は怖い口の開けづらさ~忍び寄る開かずの扉~』 |
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T・Tさん(男性)/71歳(発症当時) |
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無職 |
定年後、趣味のソフトボールチームを楽しむなど第二の人生を満喫していたT・Tさん。これまで一度も大きな病気にかかったことがないのが自慢でしたが、最近、おにぎりを食べようとした時など妙に口が開けづらいのを感じていました。数ヵ月後、虫歯治療のために訪れた歯科医院でも口が大きく開かなかったT・Tさん。その様子をみた歯科医師は、「顎関節症」を疑い、T・Tさんに大学病院の専門医を紹介。大阪歯科大学附属病院病院長の覚道健治(かくどうけんじ)先生による診察とMRI検査によって、T・Tさんを蝕む病の正体が明らかになりました。 |
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(1)口が開けづらい
(2)歯の治療が出来ない程、口が開かない |
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咀嚼筋腱・腱膜過形成症(そしゃくきんけん・けんまくかけいせいしょう) |
<なぜ、咀嚼筋腱・腱膜過形成症に?> |
病名「咀嚼筋腱・腱膜過形成症」。そもそも私たちは、咀嚼筋と呼ばれる4つの筋肉を動かすことで、口を開け閉めしたり、物を食べたりしています。ところがこの病になると、4つの咀嚼筋と骨をつなぐ腱(けん)と呼ばれる硬い組織が異常発生。咀嚼筋を覆いつくし、筋肉の動きをさまたげるため、口が開きにくくなってしまうのです。T・Tさんの場合は、頭部に位置する咀嚼筋の腱が異常発生。その結果、口が2cm程度にしか開かなくなっていたのです。
この病の最も厄介な点は、「口が開けづらい」という症状から、「顎関節症」と誤って診断されてしまう危険性があるということ。現在、日本人の2人に1人といわれる顎関節症の潜在患者の中にも、実際はこの病を患っている人が少なくないと考えられるのです。残念ながら、この病の原因は未だに不明。治療法も手術以外には見つかっていません。
今回、T・Tさんが受けた手術は、腱で固まってしまった筋肉と骨の間を切除。残った健康な咀嚼筋で口の動きを代用させるというものです。T・Tさんは、手術のおかげで、2cmほどしか開かなかった口が5㎝程度まで開くようになりました。現在では、以前のように大きく口を開け、食事が出来るようになりました。 |