診察室
診察日:2008年11月18日
テーマ:「本当は怖い冷え〜まさかの原因〜」
「本当は怖い目のかすみ〜慢心〜」

『本当は怖い冷え〜まさかの原因〜』

S・Rさん(女性)/42歳 OL
ホームページの企画・デザインの会社に勤めるS・Rさん。手がけたホームページの人気が出るのが何より楽しみで、「結婚よりも仕事」と、この10年がんばってきましたが、ある日、手足が冷えてジンジンするようになります。その後、肩こりがひどくなり、目の奥が痛み、さらに離れたものが少しぼやけて見えるようになります。コンタクトレンズが合わなくなったせいだと思った彼女は、度数を上げたレンズをインターネットで購入。新しいコンタクトをつけると視界は見違えるようにくっきりしたものの、その日の午後、突然ひどい頭痛に襲われます。
(1)冷え
(2)肩こり
(3)目の奥の痛み
(4)頭痛
(5)吐き気
自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)
<なぜ、冷えから自律神経失調症に?>
 「自律神経」とは、自分の意志とは無関係に循環、呼吸、消化などの生命活動を調整する神経です。交感神経と副交感神経の2つで成り立っており、このバランスが崩れると、身体に様々な症状が現れます。これが「自律神経失調症」。
 実は彼女を苦しめた「冷え」、「肩こり」、「頭痛」、「吐き気」などの症状は、すべて自律神経のバランスが崩れたことで起きていたのです。そして、その原因は長年、自分の勝手な判断でコンタクトレンズの度数を上げていたこと。
 でも、なぜこのことが自律神経失調症につながるのでしょうか。実は目のピントを合わせるには、自律神経が大きく関わっているのです。そもそも、私たちの目は毛様体筋という筋肉が収縮することで、水晶体の厚さを変えてピントを合わせます。例えば、遠くを見るときは、筋肉の力を抜いて水晶体を薄くし、近くのものを見るときは、筋肉を収縮させ、水晶体を分厚くしてピントを調整します。この動きのコントロールをしているのが、自律神経なのです。
 しかし、近視の人は、水晶体が分厚くなってしまっているため、遠くのものを見たとき、ピントが合いません。そこで、コンタクトレンズや眼鏡を使うと、目に入る光の幅が広がり、ピントが合うのです。ところが、度数を間違って上げてしまうと、眼に入る光が、より一層広がるため、遠くを見ても近くを見ても、毛様体筋を常に収縮させなければならず、大きな負担がかかってしまうのです。
 このように度数の強すぎるレンズで、長年パソコン作業を続けた彼女は毛様体筋の疲労から、自律神経の異常を引き起こしてしまったのです。これはコンタクトだけに限ったことではありません。強すぎる度数の眼鏡でも、同じリスクを伴います。これを防ぐには自分の「適正度数」を知ること。適正度数とは、コンタクトやメガネをした時に遠くを見ても、近くを見ても眼の筋肉が疲れない度数です。自分勝手に判断せず、専門医の検査を受け、適正なレンズを処方してもらうことが何よりも大切なのです。
『本当は怖い目のかすみ〜慢心〜』
K・Yさん(女性)/58歳 主婦
編み物が趣味のK・Yさんは、目のかすみや、遠くのものが見えにくいなどの異変が現れるようになり、近所の眼科から「白内障」と宣告されました。医師から手術は短時間で安全と聞いて、ほっと胸をなでおろした彼女。手術も無事終わり、翌日、眼帯をはずすと、驚くほど目が見えるようになりました。しかし、術後の経過が良好な彼女は、3回目の健診をさぼってしまい、半月後から様々な異変に襲われ始めます。
(1)目のかすみ
(2)遠くの物が見づらい
(3)照明がまぶしい
白内障
(1)視野の中心が黒ずむ
(2)視野の中心がゆがむ
嚢胞様黄班浮腫(のうほうようおうはんふしゅ)
<なぜ、目のかすみから嚢胞様黄班浮腫に?>
 「嚢胞様黄班浮腫」とは、視力を司る網膜の黄班という部分がむくんでしまう病です。最悪の場合は、視野の中心にゆがみが残り、日常生活に重大な支障をきたしてしまいます。
 実は嚢胞様黄班浮腫は、白内障の術後合併症の代表的な病の一つ。手術を受けた人の50人に1人が発症しています。原因は、手術による眼球へのストレス。それがきっかけで黄斑部に炎症がおき、むくむのだと考えられています。しかし、どういう人が発症するかは明らかではないため、手術後は誰もが注意すべき病なのです。K・Yさんも、運悪く、術後に炎症が続いてしまい、この病を発症してしまいました。でも、これは早期発見できれば、投薬治療により完治が可能。視野がゆがむという重大な後遺症が残ることはありません。だからこそ、医師は定期検診に忘れずに来るように言ったのです。
 白内障の治療では、術後の合併症を早期発見するために、手術から最低1年間は患者が定期健診を受けることを細かく設定しているのです。しかし、目の調子がよいからと勝手に自己判断し、定期検診を怠ってしまいました。これこそが、彼女が犯してしまった最大の過ち。その結果、視野にゆがみが残るという最悪の事態をまねいてしまったのです。
  白内障の手術は、わずか15分ほどで終わります。でも大切なのは、その後の1年。そのためにも術後の定期検診は、欠かさず受け、一度でも目に異変が現れたら、ただちに病院を訪れることが大切なのです。