診察室
診察日:2008年12月9日
テーマ:「本当は怖い首のコキコキ〜嘆きの塔〜」

『本当は怖い首のコキコキ〜嘆きの塔〜』

H・Tさん(女性)/47歳 書店経営
商店街で小さな書店を営むH・Tさんは、普段から姿勢が悪く、ひどい肩こり。そこでいつも首をコキコキと鳴らしてしまうのが癖でしたが、ある朝、突然指先にピリピリとしたしびれを感じました。ずいぶん寒くなってきたので、こんな日に水仕事をすればしびれぐらい当然と、特に気にしていなかったところ・・・気になる異変がその後も続きます。
(1)指のしびれ
(2)腕全体のしびれ
(3)首から両腕に鋭い痛みが走る
(4)指の動きがぎこちない
(5)両腕と両足に激しい痛み
頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)
<なぜ、首のコキコキから頚椎症性脊髄症に?>
 頚椎とは背骨の一番上、首の骨のこと。ここで骨と骨のクッションの役割をしているのが椎間板です。これは歳と共に弾力性を失い、次第にしぼんでいきます。すると、頚椎はグラグラと不安定になり、骨同士がガタついて擦れ合うように。その結果、今度は骨やじん帯が椎間板の代わりに頚椎を支えようと変形していくのです。この変形を横から見ると、まるでトゲのよう。この骨棘(こっきょく)が次第に首の神経を圧迫し、しびれや痛みを引き起こすのが「頚椎症性脊髄症」なのです。
 この病の原因は老化。50代以上の70%の人が、症状は無くとも骨に何らかの加齢変化が認められると言われています。では、47歳と比較的若かったH・Tさんはなぜ、この病になってしまったのでしょうか?そこには彼女の日頃の生活習慣が大きく作用していました。
 まずは首をコキコキと鳴らすクセ。これは椎間板に急激な負荷をかけて、椎間板の老化を後押ししてしまうのです。さらには肩こりの原因でもある、姿勢の悪さ。姿勢が良い場合、背骨はゆるやかにS字状のカーブを描き、4〜5kgある頭を支えます。しかし彼女の場合、前屈みでパソコンに向かう生活をずっと続けたことで、首の骨が本来の位置より後ろに反ってしまい、首全体に大きな負荷をかけていたのです。さらにうつぶせになって本を読むという姿勢も、椎間板に大きな負担となっていました。これらを長年し続けたことで、椎間板の老化を早めてしまったのです。その結果、首の骨は不安定になり、ついには骨にトゲができてしまいました。
 しかし症状が指先や腕のしびれ程度だったため、首のコキコキも姿勢の悪さも正すことはありませんでした。そしてついには・・・急に首を上げたあの時、トゲの圧迫でギリギリの状態だった神経が押しつぶされてしまったのです。すぐさま緊急手術を行い、腕のしびれこそ残ってしまったものの、重篤な麻痺などの後遺症はなんとか回避することができました。老化による骨や椎間板の変性は、誰しも避けることはできません。だからこそ、どんな生活習慣が椎間板の老化を早めるのかを理解し、改善することが重要なのです。
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