診察日:2009年1月20日
テーマ:
「本当は怖い寒がり〜その身を凍らす悪魔〜」
『本当は怖い寒がり〜その身を凍らす悪魔〜』
T・Sさん(女性)/30歳
主婦
主婦のT・Sさんの悩みは、人よりちょっと寒がりなこと。冬には夫と暖房の設定温度で言い争い、夏には職場のクーラーで体が冷えるのを我慢していました。そんな中、残業続きの帰り道で、お腹がひどく冷えているのを感じた彼女。普段より厚着をして外出することにしますが、汗をかくのに体はなぜかどんどん冷えていくばかり。さらに気になる異変も現れます・・・。
(1)お腹が冷える
(2)厚着をしても身体が冷える
(3)風邪を何度も引いてしまう
(4)倦怠感
(5)冷えがひどく動けなくなる
裏寒(りかん)による冷え(内蔵型冷え症)
<なぜ、寒がりから内臓型冷え症に?>
「内臓型冷え症」
とは、身体の中心部である内臓が冷えてしまう冷え症のこと。放っておくと、様々な合併症を引き起こすことがあります。では、そもそも一般的な冷え症とは、何なのでしょうか? 私たちは普段、食べることや筋肉を動かすことで体内に熱をうみ出しています。そして、温まった血液を全身に巡らせて、体温を維持しているのです。ところが、気温が低くなると、体に緊張を伝える交感神経が働き、熱を外へ逃がさないよう手足の血管が収縮し、血液を体の中心に集めようとします。これは、手足を犠牲にしても、生命維持に大切な内臓を守ろうとする人間の防御システム。この反応が過剰に起きるのが、手と足の先が特に冷える
「四肢末端型冷え症」
。日本の女性に最も多いタイプです。
ところが、内臓が冷えるタイプはそもそも交感神経の働きが弱く、気温が低くなっても手足の血管が収縮しないため、温かい血液が内臓に集まることもありません。すると、外気によって手足から熱が奪われ、体の中心がどんどん冷えてしまうのです。その結果、内臓を冷やしてしまうことで機能が落ち、免疫力低下という状態に陥ってしまったのです。すると、
風邪を何度も引く、膀胱炎や月経困難症
といった病を引き起こしやすくなります。
さらにこの内臓型冷え症には、手足の表面は血流がよく温かいため、症状に気付きにくいという落とし穴が。加えて重ね着で汗をかきやすくなり、汗が冷えることで体の中心をさらに冷やしてしまうのです。
ではなぜ彼女は、ここまで冷えを悪化させてしまったのでしょうか?元々、交感神経が弱く、体質的に寒がりだったにも関わらず、夏、必要以上にクーラーを浴び続けたことが最初の過ちでした。そして激務による疲労が重なったときに体のバランスが崩れ、内蔵型冷え症を発症したと考えられるのです。
日本人女性のおよそ7割が悩んでいるといわれる冷え症。全国的な疫学調査は行われていませんが、内臓型冷え症の潜在患者が数多く存在すると考えられています。お腹が冷えると下痢や便秘になることが多いあなたは、もしかすると、このタイプの冷え症かもしれません。たかが冷え症と考えず、自分の冷えのタイプを知っておくことが大切です。