診察室
診察日:2009年3月3日
テーマ: 『しこりのない乳ガン〜見逃す恐怖〜』

『しこりのない乳ガン〜見逃す恐怖〜』

M・Kさん(女性)/74歳 主婦
今から6年前、右の乳房に新しいタイプの乳ガンが発見されたM・Kさん。病が発覚する1年前、乳ガンは「しこり」ができる病気と思っていた彼女は、見よう見まねで自己触診をしたところ、「しこり」がないので胸をなで下ろしていました。そんなある日、脱衣所で着替え始めた時、右の乳首が湿っているように感じ、下着を見ると、乳首が当たる場所に小指の先程度の薄茶色のシミが付いていました。よくある分泌物だろうとあまり気にしていなかったのですが、異変はさらに続いたのです。
(1)乳首から薄茶色の分泌物が出る
(2)下着の同じ場所にシミが付く
(3)茶色い分泌物が出る
(4)乳頭から出血
非浸潤性乳管癌(ひしんじゅんせいにゅうかんがん)
<なぜ、「しこり」がないのに乳ガンに?>
 通常、乳ガンは乳房の中にある母乳の通り道「乳管」の内部に発生。その後、大部分はガン細胞の成長とともに乳管の壁を破り、周りの組織を巻き込みながら「かたまり」を作っていきます。このかたまりこそが、触診した時に「しこり」として感じられるもの。
  ところが、M・Kさんの乳ガンは違いました。ガン細胞が、乳管の壁を破らずに成長。その内部を満たすようにして、乳管全体に広がっていったのです。これでは、しこりを感じようがありません。彼女を蝕んでいた「非浸潤性乳管癌」は、触診で見つけることが極めて難しい病なのです。
 非浸潤性乳管癌の患者数は、年々増加。40代から50代の女性を中心に、現在では乳ガン全体の1割から2割を占めるようになりました。しこりもなく、つかみどころのないガンですが、その中で唯一手がかりとなる症状が、乳頭からの分泌物です。
 そもそも乳管は、母乳を運ぶ器官。授乳期間以外でも、白や無色透明の分泌物が出ることは決して珍しくありません。しかし、分泌物の色が茶色や赤色の時は、注意が必要。ガン細胞のもろい血管が破れ、乳管を通って分泌された可能性もあるからです。とはいえ、唯一の症状といえるこの分泌物。人によっては出ないこともあり、残念ながら早期発見の決め手にはなりません。
 では、どうすれば、この乳ガンの早期発見が可能なのでしょうか?その手段こそ、「乳ガン検診」。全国の乳ガン検診で実施されている乳房専用のレントゲン「マンモグラフィ検査」や超音波を使った「エコー検査」を受診すれば、しこりを感じる乳ガンはもちろん、しこりを感じにくい乳ガンも高い確率で早期発見することができるのです。ところが現在、日本でのマンモグラフィ受診率は、たったの4.1%。欧米諸国に比べて、著しく低い状況なのです。
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