診察室
診察日:2009年3月10日
テーマ: 『本当は怖い便秘の対処法』

『本当は怖い便秘の対処法』

S・Aさん(女性)/55歳 主婦
今から8年前、夫を病で亡くしたS・Aさん。生活費を稼ぐためホテルの社員食堂で働き始めたものの、朝が早いためつい朝食を抜き、仕事が忙しく便意が来ても職場ではなかなかトイレに行けない生活が続きました。そんなある日、もう丸3日も便が出なくなっていることに気付き、初めて便秘薬を試すと翌朝お通じがあったのですが、なぜかまだ便が残っているような感じがします。それでも出ないよりはましと一安心していましたが、やがて更なる異変に襲われます。
(1)3日便が出ない
(2)下痢気味で残便感がある
(3)お腹が張る
(4)便が出ない
(5)足がむくむ
(6)腰痛
直腸性便秘
<なぜ、S・Aさんは直腸性便秘に?>
 「直腸性便秘」とは、便が直腸まできているのに、便意が起こらなくなってしまう便秘のこと。ひどくなると、直腸に便が溜まりすぎ、腸管が膨れ上がってしまいます。これが「巨大直腸」、今にも破裂しそうにふくらんだ直腸のこと。本来の太さと比較すると、その違いは一目瞭然です。では一体なぜ、こんな状態になってしまったと考えられるのでしょうか?
  そもそもS・Eさんが便秘になってしまった原因の一つが、ストレス。夫を亡くしたショックや、初めての仕事などのストレスが交感神経を刺激。この時に出るホルモンが腸の運動を抑制し、便がスムーズに運ばれなくなっていたのです。もう1つの原因は、朝食を抜いていたこと。朝は腸の動きがもっとも活発になる時間帯。朝食で腸をしっかり刺激しないと、その動きが起こらず、1番便を排出できるチャンスを逃してしまうのです。
 このような生活を続けていた彼女は、腸内環境を徐々に悪化させていきました。腸の中には、腸の動きを促進してくれる善玉菌と、毒素を作り、腸内腐敗を起こす悪玉菌があります。便秘が進むと溜まった便が悪玉菌によって腐敗し、毒素を発生。悪玉菌がさらに増殖し、どんどん腸内環境が悪化します。すると腸の動きが鈍り、ますます便秘を促進してしまうのです。
 さらに便意を我慢しすぎて、便意を感じなくなります。そもそも便意とは、便が直腸にたどり着き、その刺激で催すもの。ところが、我慢し排便しないと、常に便が直腸に溜まっている状態となります。すると、その状態に直腸が慣れてしまい、徐々に便意を感じなくなってしまうのです。これこそが、直腸性便秘、最大の落とし穴。便意を感じないため、次々と便が直腸に溜まり、腸内環境も悪化。さらに、便が出なくなるという負のスパイラルに陥ります。その結果、巨大直腸になってしまったと考えられるのです。その後、彼女は初期段階の治療として整腸剤が処方され、食生活の改善や、軽い便秘薬で治療を続けています。
腸内環境を改善!手軽に作れる朝食メニュー