 |
『夫婦関係が引き起こす病(2)【うつ病】
~萩原流行・まゆ美夫妻の場合~』 |
 |
萩原流行さん(男性)/56歳
萩原まゆ美さん(女性)/56歳 |
 |
俳優
主婦 |
同じ劇団の役者仲間として知り合い、22歳の時に結婚した萩原流行さんとまゆ美さん。映画にテレビに活躍の場を広げる夫の姿を見たまゆ美さんは、女優をやめ専業主婦となることを決意。家事一切を取り仕切り、何でも妻に任せがちな夫を支え始めます。結婚から10年以上が経ち新居を購入した際も、全て一人で事を進めました。しかし、引っ越しの片付けも終わり一息ついた彼女に異変が現れます。新聞を読もうとしてもなぜか集中できず、強い倦怠感にも襲われるようになったのです。さらに、異変は流行さんの身にも起こり始めました。 |
 |
(1)新聞に集中できない
(2)強い倦怠感
(3)理由もなく涙があふれる |
 |
(1)テレビの音が早くなったり、遅くなったりするように聞こえる
(2)台詞が出ない |
|
うつ病 |
<なぜ、荻原流行夫妻はうつ病に?> |
「うつ病」とは、脳の神経伝達物質の分泌に異常が起きることで憂鬱な気分になり、日常生活に大きな支障をきたす脳の病気。推定患者数は、約400万人、いま急増しつつある病です。発症にいたる主な要因は「性格」と「ストレス」です。
性格のなかでリスクが高いのは、「メランコリー親和型」と呼ばれる、責任感が強く気遣いが細かい性格や、「執着気質」と呼ばれる、几帳面で完璧主義的な性格の持ち主。萩原まゆ美さんは、両方の性格を持ちあわせていました。
任せっきりの夫と、それをひたすら支える妻という夫婦関係から、まゆ美さんにはストレスが徐々に蓄積。そこへ、引越しという更なるストレスがのしかかり、ついに、うつ病を発症してしまったと考えられます。病の原因は、円満だと思っていた夫婦関係の中に潜んでいたのです。
まゆ美さんに病が発症して以来、妻に任せっきりという流行さんの暮らしは一変。朝、まゆ美さんが起きられない時は、自分で支度をし、そっと出かけるようにするなど、新たな生活を受け入れました。しかし、この時、すでに病魔は夫・流行さんの身にも忍び寄っていたのです。
この年、38歳になった流行さんは、大きな舞台の主役を熱演、見事大役を果たしました。ところが、公演終了から3日後の朝、出かける前にテレビを見ると音が奇妙に聞こえます。撮影現場でも、なぜかセリフが出てきません。そして急遽かけつけた病院で、「うつ病」という診断を下されたのです。
全てを任せきりにできなくなり、徐々にストレスが溜まっていった流行さん。そこに一世一代の大舞台という、更なるストレスが積み重なった結果、ついに彼も病を発症してしまったと考えられます。こうして仕事と病気との板挟みの中、流行さんはますます病を悪化させてしまいます。
そんな彼をただ一人温かく支えてくれた存在が、病の先輩ともいえる妻・まゆ美さんでした。奇しくも同じ病になってから、夫婦関係は大きく変わっていきました。互いが互いの様子を見守り、自分のことのように思いやるようになったのです。
うつ病は、いつ誰が発症してもおかしくない病。時には、夫婦関係がその引き金を引いてしまうことも。だからこそ大切なのは、二人の日頃の暮らしぶり。きちんと相手の心に向き合い、互いを思いやることこそが、夫婦の絆を強め、病の危険から守ってくれるのです。 |