診察室
診察日:2009年6月16日
病を招くお掃除スペシャル
テーマ:『本当は怖い掃除の仕方〜家庭に潜む謎の病魔〜』

『本当は怖い掃除の仕方〜家庭に潜む謎の病魔〜』

K・Tさん(女性)/65歳 主婦
今から14年前、長男一家と同居を始めたK・Tさん。仕事に追われる長男の嫁に代わって、家事をこなすことになった彼女は、週4日のパート勤めを続けながら、家中の掃除をこなしていました。ところが、同居を始めて7年目、喉がイガイガして咳が出始め、さらに微熱が。軽い夏風邪だと思い、様子を見ていたK・Tさんですが、やがて地獄のような苦しみを味わうことになるのです。
(1)咳
(2)微熱
(3)咳が続く
(4)家の外に出ると咳が治まる
(5)激しい息切れ
夏型過敏性肺炎(なつがたかびんせいはいえん)
<なぜ、掃除の見逃しで夏型過敏性肺炎に?>
 「夏型過敏性肺炎」とは、アレルギー性肺炎の一種で、湿気の多い夏に発症するのが特徴。最悪の場合、肺が硬くなって呼吸ができなくなり、死に至ることもあるのです。
この病気は、夏になると大量に発生する「トリコスポロン」というカビの一種を吸い込むことで起きると考えられています。そもそもカビは、繁殖するために種の役割をする胞子を大量に作り、それが空気に流されて漂います。この胞子こそ、K・Tさんの肺に侵入し、咳や熱などのアレルギー症状を引き起こした真犯人なのです。
トリコスポロンは、主に湿気のある屋内、それも掃除の行き届かない所が増殖しやすい場所と言われます。では、一体、家の中のどこにそれは潜んでいたのでしょうか?
その潜伏場所こそ、あの脱衣所の黒ずみ。木材が腐食した黒ずみの中から、大量のトリコスポロンが検出されたのです。さらにもう1箇所、台所の狭い隙間の湿ったホコリからも見つかりました。
カビが繁殖するためには、3つの条件が必要とされます。(1)温度20度以上、(2)湿度60パーセント以上、(3)有機物などの栄養があること。発見された2箇所は、この条件を全て満たしていました。
まず脱衣所は、子供たちによって、びしょびしょになるのは日常茶飯事。その度に丁寧に拭いてはいましたが、水分を完全に取り切ることはできません。やがて湿った木材が腐蝕し、カビには格好の場所になってしまったのです。台所のシンク脇の隙間も、食器などから垂れた水が、下にたまっていたホコリに付着。やはり、カビが好む環境を作り出していました。
その結果、空気中を漂うトリコスポロンの胞子が、着地するなり、一気に増殖を開始。温度や湿度の高い夏の到来と共に、大量の胞子を空気中に放出したと考えられるのです。さらに舞い上がった胞子は、ごく小さいため、知らずに肺の奥深くにまで入り込んでしまう場合があるのです。
そして、夏型過敏症肺炎には大きな落とし穴が。それはトリコスポロンの胞子を吸い込まなければ症状が出ないということ。K・Tさんのように、外出した時や冬の間は症状が治まるため、ついつい放置してしまう人が多いのです。しかも患者数は、女性が男性の2倍以上。そう、1日の大半を家で過ごす主婦が、真っ先に狙われる病なのです。
あなたの間違ったお掃除チェック