 |
『本当は怖い夏休みの旅行~行楽に潜む赤い暴走魔~』 |
 |
K・Yさん(男性)/66歳 |
 |
会社員(発症当時) |
4年前の夏休み、会社の同僚と栃木県へ1泊2日の慰安旅行に出かけたK・Yさん。ワゴン車に乗った一行は、片道3時間半の道のりを休憩も取らず日光まで。昼食後、名所を巡りながら夏の日光を満喫しましたが、車での移動を考慮して水分を控えていたK・Yさん。宿では露天風呂で旅の疲れをいやし、夜の宴会ではつい飲み過ぎてしまいます。翌日、帰路につくも渋滞に巻き込まれ、4時間以上も車中で過ごし旅を終えました。
そんな彼に最初の異変が現れたのは、旅行から帰った翌日のこと。日課の散歩に出かけると、突然、胸を締め付けられるような息切れに襲われました。そして2日後、ついに決定的な事態が訪れるのです。 |
 |
(1)息切れ
(2)呼吸困難 |
|
肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう) |
<なぜ、夏休みの旅行で肺血栓塞栓症に?> |
「肺血栓塞栓症」は、かつてエコノミークラス症候群とも呼ばれ、飛行機での長距離移動で発症する病も、この一種。
「肺血栓塞栓症」とは、静脈の血流が何らかの理由で滞った時にできる血の塊、血栓が肺の動脈に飛んで、詰まることで、呼吸困難や動悸を引き起こし、最悪の場合、突然死に至る恐ろしい病です。その特徴は、サッカー元日本代表の高原選手が発症したことからもわかるように、健康上問題の無い人にでも起こること。
では、K・Yさんには、いつ血栓ができてしまったのか?答えはもちろん、1泊2日の旅行中にありました。それは、長時間、車の中で座り続けたこと。彼のひざは、座席に押しつけられ、ひざ下の静脈が圧迫されていました。すると、静脈の血流が悪くなり、ふくらはぎ付近に血がたまる「うっ滞」と呼ばれる状態に。それが長時間続き、血液凝固物質が血管の壁にくっつき、血栓が出来たと考えられるのです。そもそも人間の足は、ふくらはぎの筋肉を動かし、心臓へ血液を送り返すポンプの役割を果たしています。同じ姿勢で座っているだけでは、その役割を果たせず、うっ滞を加速させてしまうのです。
では、その移動中に、どんな所に注意をすれば病のリスクを下げることが出来るのでしょうか?それは、「3時間以上の移動」に注意をすること。イギリスで発表された論文によると、3時間未満のフライトではこの病の発症例は無く、WHOでも、4時間以上の搭乗で肺血栓塞栓症のリスクが2倍になると警告しています。K・Yさんの旅行でも、3時間以上の移動が2回ありました。
しかしなぜ、あの旅行で彼だけに血栓が出来てしまったのでしょうか?その原因は他の3人より水分を控え、長風呂に入り、多めのアルコールを摂取したこと。すると、血液中から水分が失われ、血栓が出来やすい状態だったと考えられるのです。どんな健康な人でも、発症することがあるこの病。長距離移動をする際は、最低でも2時間に1度は休憩をとるようにしましょう。 |