診察日:2009年8月18日
あなたの脳が勘違い!“本当の体力”徹底チェックSP
テーマ:
『過信が生む悲劇〜なぜ転んでしまったのか?〜』
『スーパーおばあちゃんに学べ!将来、寝たきりにならないための筋力づくり』
『過信が生む悲劇〜なぜ転んでしまったのか?〜』
O・Yさん(女性)/79歳(発症当時)
主婦
50歳で車の運転免許を取得してから、どこへ行くのにも車で出かけるようになったO・Yさん。60歳に差しかかった頃には、子供たちも次々と巣立ち、忙しい家事に追われることもなくなりました。70歳を迎えてもまだまだ体力には自信を持っていた彼女ですが、バスで15分ほど立っていただけで疲れを感じたり、思ったように体が動かなくなる症状を覚えるようになります。そして今年5月、道の真ん中にできた小さな水たまりを飛び越えようとした彼女は、足を地面につっかけてしまい、そのまま転倒。腰の辺りを強打してしまいました。
大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)
<なぜ、O・Yさんは大腿骨頸部骨折に?>
「大腿骨頸部骨折」
は、脚の付け根の骨が折れてしまう病のこと。発生件数は2007年で14万8100件、わずか5年間で約1.3倍に上昇。特に女性は、男性の3.7倍にものぼり、患者さんの20%がそのまま寝たきりになると言われています。
では、なぜO・Yさんは、小さな水たまりぐらいで転倒してしまったのでしょうか?そのもっとも大きな原因と考えられるのが、
「脳のイメージと筋力の差」
。そもそも人間は目で障害物を認識すると、脳の運動野がその障害物を乗り越えるよう筋肉に指令を出します。しかし、筋力が弱っていると、脳が大きく踏み出すという指令を出しても、筋肉がその通りに動かないため足が上がらず、障害物につっかかり転倒してしまうのです。
O・Yさんも、たかがこのくらいの水たまり…と、若い頃のイメージで脳は判断。しかし筋力が低下しているため足が前に出ず、そのまま転倒してしまいました。こうした脳と筋力のギャップは、年を取れば、多かれ少なかれ誰にでも存在します。しかし、自分はまだまだ元気。そう思い込んでいる人ほど、ギャップは大きく、転倒した時の危険性が高くなるのです。
東京都老人総合研究所によれば、
65歳以上の高齢者が健康的な生活をするため必要な歩数は、1日8000歩。
家庭の主婦が、掃除や洗濯などで動きまわっても、およそ4000歩程度にしかならないと言われています。O・Yさんの場合も、車中心の生活に変わったことで歩数が大幅に減り、筋力の低下を招いたと考えられます。そこに加齢による筋力の衰えが加わり、歩くときに重要な役割を果たす「大腿四頭筋」や「殿筋」などの筋力が大きく低下。その結果、知らず知らずのうちに、異変が生じるようになってしまったのです。
こうした筋力の低下は、早い人で40歳代から始まるといわれています。2007年、日本整形外科学会は、筋肉や骨・関節等の障害で寝たきりになる可能性が高い状態を、
「ロコモティブシンドローム」
と命名。その予防のため、自分の筋力を把握し、筋力にあった運動を続けることを推奨しています。
<テーマ>
『スーパーおばあちゃんに学べ!将来、寝たきりにならないための筋力づくり』
氏名/年齢
上中文代さん(女性)/72歳
厚生労働省も推奨する「ROADプロジェクト」
※
で、関節や筋肉の状態がトップクラスの成績を誇るスーパーおばあちゃん、上中文代さん。一体、彼女の筋力の秘密は、どこにあるのでしょうか?
そのポイントは、2つ。まず一つ目は、
「歩く」
こと。実は彼女の力の秘密は、グラウンドゴルフというスポーツにありました。ゲームの最中は、打つとき以外、ほとんど止まることなく、1日平均2時間前後のプレーをこなす上中さん。運動中の歩数は、5629歩。
さらに帰宅してからも、食事や庭の手入れなど忙しく家事をこなし、1日の合計歩数は
9719
歩。筋力低下を防ぐための歩数、8000歩を楽々クリアしていました。これはおよそ6kmを歩いたことになる距離です。
そして上中さんの筋力を維持しているもう一つのポイントは、
「適度なスクワット」
。山中さんは、毎日2時間、自宅近くの家庭菜園で、きゅうりやとうもろこしなどの野菜を育てています。そこで彼女がしばしば行っているのが、中腰での作業。この姿勢こそ彼女の筋力づくりの重要な要素だと言います。自然にしかも関節に負担のかからない形でのスクワットの状態になっていることで、大腿四頭筋などが鍛えられるというのです。
取材した日、上中さんが中腰になる作業を繰り返した回数は、およそ200回。大腿四頭筋などを適度に使い、知らず知らずのうちに筋力を保っていました。これら2つのポイントを日々こなすことで、上中さんは70代とは思えない筋力を手に入れていたのです。
※
「ROADプロジェクト」・・・・東京大学医学部附属病院22世紀医療センターが、40歳以上の男女、約3000人の筋力や関節の状態を10年に渡って追跡調査しているプロジェクト。
<上中さんの筋力の秘密>
(1)歩く
(2)適度なスクワット