神奈川県相模原市にある「16号整形外科」は、枕の力で病を和らげる、日本で唯一の専門外来、「枕外来」がある病院。枕が原因で不眠、頭痛、肩こりなどに悩む患者一人一人にオーダーメイドで最適な枕を作り、治療をしています。この枕外来の責任者である、整形外科医の山田朱織院長は、「枕は睡眠の姿勢を整えるために、一番影響力の大きいもの」だと言います。
では、どんな姿勢が快眠につながるというのでしょうか?その謎を解くカギは、「寝返り」。「寝返り」とは、血液やリンパ液などが体の下側に滞らないよう循環させるためにするもの。「寝返り」が正しくうてないと、寝苦しかったり、途中で目が覚めてしまったりと、不眠の大きな原因になってしまうのです。
では、その「正しい寝返り」とは?それは、お尻から頭まで一本の棒になったような、真っすぐな状態で転がること。これなら、どこにも余分な力が入らないため、目を覚ましてしまうこともありません。そして、身体に合った適切な枕を使っていないと、正しい寝返りは打てないのです。
「正しい寝返りが打てる枕」とは、どんな物なのでしょうか?最大のポイントは、「枕の高さ」です。横を向いた時、おでことあごの中心を結んだ線(顔の中心線)と敷き布団が平行であると、最も身体に合った枕の高さであり、正しい寝返りがうてるというのです。枕の硬さも、あまり沈み込まないのが理想的。柔らかすぎると、適切な高さを維持出来ません。
では実際に、枕は寝返りにどんな影響を及ぼすのでしょうか?小型のレーザー装置を頭とお腹に装着し、周囲のドームに当たったレーザーの光が、どのように動くかを観察しました。まず身体に合わない低い枕で寝返りを打ってもらうと、先に腰が動き、後から頭がついてくるため、動きがバラバラです。次に身体に合った高さの枕で試してもらうと、頭と腰がほぼ同時に移動。一本の棒になったような、正しい寝返りが打てていることがわかりました。このように、自然な寝返りが打てる枕こそ、快眠をもたらす重要な要素と言えるのです。
(実験協力:福井大学工学部 塩島謙次先生) |