<テーマ> |
『家庭でできる歯を若返らせるプロジェクト』 |
<健康賢者>[氏名/年齢] |
見鳥武雄さん(男性)/84歳
妻・清美さん(女性)/83歳 |
<84歳で28本の歯を持つ健康賢者に学ぶ、歯を若く健康に保つ方法!> |
本来人間の歯は全部で32本ありますが、日本人の場合、ほとんどの人が歯周病になるため、それが原因で歯を抜く事態に陥る事もしばしば。すると、年を重ねるごとに歯の数が激減、80歳でなんと平均9本しか残らないと言われています。
自分の歯を守るために、私たちは何をするべきなのか?その答えを求めて向かったのは、愛知県刈谷市。ここに今年で結婚60周年を迎える歯の健康賢者がいました。見鳥武雄さんと妻の清美さんです。実は見鳥さんは昨年、県内の3500名を超える候補者の中から見事夫婦そろって、8020(ハチマルニイマル)運動(注1)の優秀賞に選ばれたのです。
ご自慢の歯を見せて頂くと、夫の武雄さんは現在28本、清美さんは25本の歯が残っています。日本人の年代別歯の本数データによれば、清美さんは、50代前半レベル。武雄さんは、なんと30代後半レベルの若さ。
さらに、お二人の噛む力の強さを専門の検査で調べると、成人男性の平均的な噛む力が60キロから70キロのところ、武雄さんの噛む力は、なんと109キロ。清美さんは45キロと、こちらも健康な方の標準を楽々クリア。歯周病の兆候もほとんどなく、歯のトラブルとはほぼ無縁。そこで早速、食事や歯磨きの様子など、ご夫妻の普段の生活に密着してみました。
朝食は、小あじの干物を骨ごとまるかじり。食後、武雄さんは早速歯を磨きます。朝の歯磨きは3分ほど。一方、清美さんは、朝は歯にものが挟まったら磨く程度。毎日は磨きません。この日の昼食は、五目ヤキソバ。しかしお昼は歯を磨かないご様子。そして夕食後、武雄さんが歯を磨くのは、お風呂の中で念入りに10分ほどかけて磨き、清美さんも夜の歯磨きには10分はかけています。お二人の生活のどこに歯を若く保つ秘密が隠されているのでしょうか?
愛知学院大学歯学部長、野口俊英先生に、ご夫妻の様子を見て頂きました。まず先生が注目したのは、お二人の食事内容。3食のメニューにすべて野菜がたっぷりで、どれも繊維質が豊富なものばかり。繊維質の多い食べ物は、噛む時に繊維が歯の表面をこするため、それだけで歯が磨かれる効果があるというのです。さらに注目したのは、食べ物を噛む回数。ご夫妻とも食物を口に入れてから飲み込むまでの時間が長く、よく噛んでいました。
咀嚼の専門家、元・神奈川歯科大学教授の斎藤滋先生によれば、噛むことには歯を守る様々な効果があり、その一つが「歯を新しくする」こと。よく噛むことで、骨の細胞が刺激され、新陳代謝が活性化。常に歯を新しく生まれ変わらせているというのです。さらに重要なのが「唾液の分泌」。唾液は噛むことによって安静時の10倍もの量が分泌されます。その唾液には、歯周病菌や虫歯菌の増殖を抑えたり、歯の表面を硬く作り直す働きがあります。良く噛んで唾液を出すことが、歯の健康につながっているのかもしれません。
しかし、斎藤先生の研究によれば、現代人の噛む回数は1食約620回。戦前に比べると、なんと半分にまで減っているというのです。見鳥夫妻の噛む回数をカウントしてみると、一食の平均咀嚼回数は、武雄さん1003回。清美さん1286回。このよく噛む行為こそが、お二人の歯を若く健康に保つ秘訣と考えられるのです。
(注1)「8020」とは、80歳を超えて20本以上の歯が残っている人のこと。日本歯科医師会が中心となって80歳を超えても、20本の歯を残そうと、この運動を推進。特に優れた歯を持っている人が模範として表彰されます。 |
<家庭でできる!歯を若返らせるプロジェクト、若返りポイント> |
(1)繊維質のものをたくさん食べる
(2)食べ物をよく噛む |
<家庭でできる、噛む回数を簡単にアップする方法!> |
“噛む回数と料理”の関係について研究されているスペシャリスト、和洋女子大学家政学群健康栄養学類教授、柳沢幸江先生に伺いました。30年に渡る研究から先生が考案した、“噛む回数を確実にアップさせる方法”は大きく3つです。
一つ目は「噛み応えのある食材をプラス」。柳澤先生は、200品目近い食べ物の「噛み応え」を精密に測定。最も柔らかいものをランク1として、その硬さを十段階に分類しています。私達の主食「ご飯」のランクは5。噛みごたえランクの高いものと組み合わせることで、簡単に噛む回数が上がると先生は言います。
例えば噛み応えランク6の「きのこ」。きのこをカレーの具として使った場合、噛む回数は、なんと普通のカレーの2倍近くにも上がるそうです。さらに先生がお勧めなのが、ジャコのふりかけ。噛み応えランク8のジャコをかけるだけで、確実に噛む回数はアップします。
続いてのポイントは、「食材を大きく切る」。ある研究結果によれば、大きく乱切りにしたキュウリの方が、細切りにしたキュウリより、噛む回数が25%アップするそうです。カレーや肉じゃがなどの煮物の具も、咀嚼回数アップのため、大きめに切ることをお勧めします。
最後のポイントは「繊維を長く切る」。大根やにんじんなどの野菜の繊維は、縦に走っています。この繊維にそって切ることで、噛み応えがアップします。いちょう切りではなく、短冊切りから千切りにするほうが噛む回数をアップさせやすいのです。
さらに健康賢者・見鳥ご夫妻の様子を見直すと、二人で喋りながら食べていました。そこで30代から60代の4組のご夫婦に協力頂き、まず和気あいあいと話しながら食べて頂き、続いて一人で黙々と食べて頂きました。その結果、8人中6人が二人で喋りながら食べると咀嚼回数が多く、平均では28.4回アップ。続いて、食事の前に「いただきます」と言う実験を開始。すると、「いただきます」と言って食べると、8名の平均咀嚼回数は224.3回。「いただきます」と言わない場合は、188.3回。なんと「いただきます」といった方が、噛む回数が36回も多く、8人中7人でその効果が認められました。 |
<歯を若返らせるプロジェクト、無理なく噛む回数を上げる方法> |
(1)噛み応えのある食材をプラス
(2)大きく切る
(3)繊維を長く切る
(4)二人で喋りながら食べる
(5)いただきますと言う |