 |
『本当は怖い寝起きの悪さ』 |
 |
I・Hさん(男性)/35歳 |
 |
会社員 |
大手商社に就職後、体は疲れているのに1時間以上も寝付けず、寝起きも悪い感じが続いたI・Hさん。会社を度々遅刻し、上司から「意思が弱い」と非難されるようになりました。目覚まし時計を3つに増やし、なんとか頑張っていましたが、10年後、インフルエンザにかかり1週間会社を休んだのをきっかけに、その後1週間連続で遅刻してしまいます。なんと彼が朝起きられない原因は、彼の意思とは無関係の「体内時計」にあったのです。 |
 |
(1)眠ろうとしても眠れない
(2)寝起きが悪い
(3)目覚ましを止めた事に気付かない |
<I・Hさんが朝起きられなかった本当の原因は?> |
I・Hさんが朝起きられず度々遅刻してしまった原因は、体内時計と重要な関係のある、彼の時計遺伝子にありました。「時計遺伝子」とは、脳内の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分の細胞に存在している遺伝子。その名の通り、時間を刻む遺伝子です。そもそも1日を24時間として時計を作ったのは人間ですが、近年の研究で時計遺伝子そのものにも24時間を計る仕組みのある事が明らかになったのです。では一体、どうやって時間を計っているのでしょうか?
時計遺伝子はまず、細胞内にタンパク質を分泌させる指令を出します。このタンパク質が言わば、砂時計の「砂」の役割。細胞内にタンパク質が一杯になるまでが約12時間。次に一杯になったタンパク質を減らす指令を出します。これが砂時計をひっくり返した状態。こうして再びタンパク質が無くなるまでが、約12時間。こうやって1日のサイクル、24時間を計り、夜や朝を感知する事で、睡眠や血圧、体温など様々なリズムを司っているのです。
そう、この時計遺伝子が作り出すリズムこそが、体内時計の正体。しかし問題はこの体内時計が、人によって異なり、誰もが24時間ぴったりではないということ。検査の結果、I・Hさんの場合は、1日の時間が何と25時間に近いと推測されました。では彼は、いかにして病を悪化させていったのでしょうか?
毎朝、7時に起きなければならないI・Hさん。彼の体内時計は、人よりも1時間長い25時間周期なので、次の日は8時まで眠りたいところです。しかし、出勤のために朝7時に起きていました。つまりおよそ1時間分の睡眠が足りず、日中でも眠気が襲っていたのです。無論、この7時起きの習慣を毎日欠かさずしばらく続けていけば、徐々に身体が慣れていくはずなのですが、I・Hさんはここで大きな落とし穴にはまってしまいます。
それは睡眠不足を一気に解消しようとした週末の寝だめ。これで朝早い生活パターンに慣れ始めていた体内時計が、大きく狂ってしまいました。そのため週明けには朝起きる事ができず、遅刻をするようになってしまったのです。 |
<5つのタイプがある体内時計> |
人によって微妙に異なる体内時計。それは大きく5つのタイプに分類されています。朝型傾向の人は、1日の時間が24時間よりも短く設定。そのため寝付くのも起きるのも早い時間になりがちです。一方、夜型傾向の人は、1日の時間が24時間よりも長い時間に設定されています。そのため、そのズレが日々の寝る時間を遅くさせていくため、寝る時間も起きる時間も遅くなる傾向が強いのです。I・Hさんの場合は、1日25時間という超夜型のタイプだったのです。
専門医の治療によって、現在は症状がかなり改善したというI・Hさん。医師から処方されているのは、メラトニン(※)という睡眠を促進するホルモン剤。服用して5時間後には眠る事ができ、その分、起きる時間も早くする事が出来るのです。
※メラトニンは、薬事法で認められた医薬品ではありません。医師、または個人の
責任の元に海外で販売されているサプリメント等を使用することが可能です。
さらに大事なのが朝の光。目から入った太陽光は、体内時計を司る視交叉上核の時計遺伝子に直接働きかけ、体内時計をリセットしてくれます。毎日欠かさず同じ時間に起きて、朝の光を浴びていれば、徐々に朝型の生活パターンへ移行させる事ができるのです。そのため、寝る前にカーテンをあえて開けて、朝の光が室内に届くように改善。起きた時には、ベランダに出て日光を浴びるなどの工夫をしています。 |
 |