境遇

インタビュー -Interview-

#01 高倉陽子役
松雪泰子さん インタビュー
息ができなくなってしまうほど、緊張感があるかもしれませんが、しっかりと腰を据えて観ていただける作品に仕上がっていると思います。ぜひご覧ください!
松雪泰子
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―― まずは脚本を読んでのご感想・印象をお聞かせ下さい

ドラマの脚本を読む前に、湊かなえさんが書かれた原作の草稿を読ませていただいたのですが、二人の女性の深い繋がりを描いた作品で、心理描写がとても丁寧に描かれているなと思いました。ミステリーの要素もありますが、あくまでも人間を描いている作品ですので、深い境遇で結ばれた二人の女性を、どう表現していったらいいのだろうと、最初に思いました。

―― 松雪さんからみて、陽子はどのような女性だと捉えていらっしゃいますか?

自分の生い立ちや置かれている状況を、静かにしっかりと受け止めている女性だと思います。高倉家での佇まいなどをみると、お義母さんに辛く当たられたり、受け入れてもらえない状況も、ネガティブに捉えているのではなくて、自分の生い立ちを考えれば、そうなっても仕方がないと思っている。それは、正紀さんの愛情に支えられているという部分がとても大きいと思いますし、家の中でも選挙事務所でも、自分はいまどうあるべきかというのをしっかりと洞察できていて、常にあらゆる物事をいい方向に転換していく何かを無意識的に持っているのだと思います。彼女にそういう資質があるからこそ、正紀さんにも愛され、幸せな状況を作っていくことができるのではないかと感じました。

―― そんな陽子を演じて、いかがでしたか?

今回はどちらかというと仕掛けられている、翻弄されていく受け手側の表現でしたので、そのときの感情の度合いをどのように表現して、何をどう受け止めていくのかということを的確に表現していく必要があって、その積み重ねが作品全体を構成していくというような役割でしたので、本当に難しかったです。一見、何気ないお芝居だったりするのですが、それがいちばん難しいんだなと今回改めて思いましたし、大変勉強になりました。

本当にとても繊細なやり取りが続くお芝居だったので、一瞬の動きや微妙な間合い、ほんのわずかな呼吸の違いでまったく違うシーンになってしまうような緊張感の連続の中で、いつもりょうさんとご一緒していた気がします。陽子は晴ちゃんのことを、とにかく本当に大好きなんですね。友情より深い、魂の繋がり。表面的なところでは表現されていない、もっと深いところで二人が繋がっているという感覚をいつも持って演じていたので、そういう親友同士の役をりょうさんと一緒に演じることができて、本当によかったです。

―― 今回は若松監督が演出を担当され、単発ドラマながら約一ヶ月の期間をかけ、
オール地方ロケという映画なみの撮影でしたが、そんな現場に参加されて、いかがでしたか?

若松監督とは何度もご一緒させていただいていますが、今回は特に細かく密にコミュニケーションを取りながらやらせていただきました。陽子という役は、非常に繊細な表現が求められましたし、本当に難しい作品だったので、役をどう捉えて、どのように表現していくかという細かい部分から、どういう風に集中していけばいいのかということまで、とても的確にアドバイスしてくださいました。撮影が終わって、まさに監督と一緒に乗り越えたという気持ちです。

ずっと松本で撮影していましたが、ロケーションも素晴らしかったですし、ひとつの土地で撮影するというのは、空気感が統一されていいですね。

―― 原作者の湊さんが陣中見舞いにいらしたそうですが、お会いしていかがでしたか?

湊さんの作品は拝見していたので、本当に素晴らしい作品を書かれる方という印象でしたが、その作品を実際に演じてみると非常に繊細な構造ですし、俳優としてはすごくハードルの高い作品だなという感じがします。あまり時間がなかったので、そんなにたくさんお話は出来なかったのですが、お会いした印象はとても丁寧でもの静かな方でした。

―― 放送を楽しみにしている、視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします

若松監督のもと、出演者全員、本当に丁寧に挑んで、作り上げた作品です。全編を通して、もしかしたら息ができなくなってしまうほど、緊張感があるかもしれませんが、しっかりと腰を据えて観ていただける作品に仕上がっていると思います。私自身、常にそういう重厚な作品作りをしたいと思っているので、今回はそういった作品をお届けできるのがとてもうれしいです。ぜひご覧ください!

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