―― まずは脚本を読んでのご感想・印象をお聞かせ下さい
すごく複雑な心境のお話ですよね。主人公の二人は本当の母親の顔を知らない。それはとても辛いことですが、最近は本当の親子で一緒に暮らしていても、いつもいがみ合っていたり、変な例えですが、事件が起きたらまず家族を疑うような風潮で、それだけ人間関係が複雑になっているし、みんないい意味でも悪い意味でも自己中心になっている。だから、例え離れていても、自分の想像の中に優しいお母さんがいる方がむしろ幸せなのかなとも思いました。
私も昨年、母を亡くしましたが、14歳のときに一人で東京に出てきて、それから密に母と一緒に過ごしたのは、お盆やお正月の帰省を全部数えても365日なかったんじゃないかと思うんです。でもその分、私がいちばん親孝行なんですよ。離れているからいがみ合いもないし、嫌な部分も見ていないんですね。だから、お母さんっていうと、優しい甘い卵焼きみたいなイメージ。ずっと一緒に住んでいたら、卵焼きなんて作ってくれないかもしれないのにね(笑)。そう考えると、主人公の二人が、「お母さんはお空から青いリボンでいつも私たちを見てくれている」と、この年になるまでずっと思い続けられるということは、とても幸せなことなのかもしれませんね。
――今回演じている弥生に対して、どんな印象をお持ちになりましたか?
もし本当にこういうことがあったら、一生悔やみきれないだろうな。辛いだろうなって思います。きっかけは、それこそ運命のいたずらですよね。こんなことがあってはいけないと思うんですけど、でも、複雑な事情があって仕方がなかったのかもしれない。だから、観てくださる方が彼女を赦す気持ちになってくれるような、そんな女性を演じなければいけないなと思いました。
―― 撮影現場はいかがですか? 監督や共演者の方の印象は?
松雪さん、りょうさんをはじめ、今回はほとんどのみなさんが初共演です。お二人の大ファンだったので、キャスティングを聞いてとてもうれしかったですね。是非ご一緒したいと思って。松雪さんもりょうさんも、とっても爽やかで透明感のある素敵な女性なので、今回の役にピッタリだし、ぜったいに素敵な作品になると思いました。
若松監督とも初めてご一緒するのですが、いつもカメラの傍にいて下さるので、安心しますね。演出も細かくて、足らないところは足してくださいますし、やり過ぎたところは減らして…ときちんと加減してくださるので、心から安心して撮影に参加しています。
―― オールロケというのはいかがでしたか?
変な言い方かもしれませんが、例えで言うと、雨が降っているお葬式よりも晴天のお葬式の方が寂しくて悲しい。そんなギャップが撮れていると思います。透明感のある美しい映像ですが、内容的には人間の業や複雑な事情が描かれている。景色や映像が美しいことで、登場人物たちの感情がより際立つんじゃないかなと思います。
―― 放送を楽しみにしている、視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします
一見、とても複雑で不幸なお話かと思うかもしれませんが、決してそうではなくて、観た後には、人を赦すという気持ちを感じられる、希望のある素敵な作品だと思います。赦すということは気持ちの転換で、一旦赦してしまえば自分も楽になれるし、気持ちも穏やかになれる。そんなことを考えながら、観ていただければと思います。