近鉄奈良駅の商店街にたたずむ小さなドーナツ屋「フロレスタ本店」。店頭には素朴で優しい手作りドーナツがズラリ。作り置きをせず、常に揚げたてを楽しめるとあって、地元でも人気のある評判の店だ。工房でドーナツを作るのは、オーナーで、ドーナツ作り職人の前田利安さん。「毎朝、生地を仕込み、揚げたてを提供するのがモットー」と話す。ドーナツへのこだわりは、生地の材料はもちろんのこと、揚げる油にまで。使うのは酸化の少ない菜種サラダ油で、ひんぱんに変えることによって常にフレッシュな油を使用し、美味しさを保っている。そこから、サクッと香ばしく、体にも優しいホームメイドのような味が生まれるのだ。

前田さんがドーナツ作りの世界に入ったのは、子どもの誕生がきっかけだった。それまでは様々な職種を転々とし、お金が貯まれば好きな海外旅行を楽しむという、後先を考えない生活をしていた前田さん。だが、現在の奥様と知り合い、結婚。２００２年に双子を授かってから、彼の人生観は１８０度転換した。「子どもが天使のように思えた」というところから、天使の輪のようなドーナツ作りを始める。独学で研究を重ね、「まえだのドーナツ」としてワゴン車での移動販売をスタート。シンプルで美味しいドーナツは口コミで話題になり、２００４年には全国各地に冷凍ドーナツを届けるネットショップをオープンし、名称も現在の「フロレスタ」に改めた。その後、奈良で揚げたてを食べられる実店舗をオープン。彼のドーナツのおいしさに衝撃を受けたファンの中からは姉妹店を願い出る人たちまで現れ、今や全国に２０店舗以上の姉妹店が存在する。

全国区の人気となった前田さんのドーナツ。今年１月には、創業当時を思い出し、お客さんの反応をダイレクトに感じることのできる屋台スタイルの新店を立ち上げた。

前田さんの家にはもうすぐ４人目の天使が誕生する予定。そんな幸せいっぱいの前田さんが新たな試みに挑戦することに！それは、地元の大和郡山市にある老舗の和菓子屋「杉屋」とのコラボレーションで、地域のためのドーナツを作りたいという思いから始まった。「杉屋」の３代目は前田さんの友人であり、同じ職人として尊敬するすばらしい仲間でもある。和菓子とドーナツのコラボというユニークな企画。はたして、どんな商品ができあがるのか！？試行錯誤する前田さんに密着し、新商品開発の裏側に迫った。