今年４月、のどかな田園風景が広がる京都府京田辺市に一軒のレストランがオープンした。腕を振るうのは、フレンチ、イタリアンと名だたる名店を渡り歩いた新進気鋭のシェフ、河村昭多さん。フレンチにもイタリアンの枠にも当てはまらない料理は、地元の素材と和の手法を取り入れた新感覚の創作料理で、ジャンルにとらわれない自由な発想が評判を集めている。そんな河村さんの料理の魅力を紹介。さらに、地元ならではの素材を使った新たなコース作りに挑む河村さんに密着した。

スカンジナビア語で“月”を意味する「モーネ」という名を掲げたレストラン。ここで河村さんが作るのは、京田辺の食材をふんだんに使ったメニュー。一見すると和食と見まごうような、お箸でいただける料理だが、口にすると印象は一変。フレンチやイタリアンの手法が楽しめ、新鮮な驚きを与えてくれる。

大学時代に体験した飲食店のアルバイトをきっかけにシェフの道を志した河村さん。京都のフレンチの名店「レストランよねむら」に入社し、サービスを経て、米村シェフの下で修行。１０年に及ぶ修行の後、今度はイタリアンを学びたいと、イタリアへ飛び、ミシュラン２つ星のレストランで本場のイタリアンを学ぶ。しかし、日本人でありながら、和食の技術が足りないと初めて気づいた河村さん。そこで、和の季節感やしつらえを大切にしたフレンチを提供する「レストランよねむら」で、再び、仕事をすることに。さらに、京都のイタリアンの名店での修行を経て、今年の４月、自らの店をオープンした。

季節の野菜や京田辺ならではの食材にこだわる河村さんのコース料理。５月のコース料理を考える河村さんは、京田辺の名産品「一休寺納豆」と「玉露」を使いたいと、まずは、一休和尚ゆかりの一休寺を訪ねる。保存が効き、栄養価の高い食材として一休和尚が伝えたのが一休寺納豆。河村さんは住職のお話を聞きながら、納豆の仕込みを拝見し、精進料理としての納豆を試食する。さらに、茶園の「舞妓の茶本舗」を訪れ、緑茶専門の喫茶室「MAIKO茶ブティック」で、緑茶の多彩な味わいを体験。一休寺納豆と玉露を使った、それぞれのメニューを考案する。さらに、師匠であり、恩人でもある「レストランよねむら」のオーナーシェフ、米村氏を招き、新メニューを食べてもらった。