2013年6月2日(日)13時から | |
曇り | |
和歌山県立森林公園 根来山げんきの森 | |
60名 | |
八塚彩美アナ、おき太 |
和歌山県森林インストラクター会
岡田和久、大谷栄徳、田村恵利子、岡田恵美
実は、この時期の里山には毛虫や芋虫がうじゃうじゃいるのです。げんきの森に遊びに来た子ども達の多くは、森に入っても木の枝から垂れ下がる毛虫を見て、「ギャー」とか「ありえへん」とか叫びながら森から飛び出してきます。
ちょっと無謀かもしれませんが、今回はこの嫌われ者の"きもかわいさ"に気づいてもらうことを大きなテーマにしながら、命のつながりや森の仕組みについていくつか学んでもらう観察会を企画しました。
げんきの森にはタラヨウという字を書ける木の葉があります。長さ15cm、幅7〜8cmもある大きくて分厚い葉で、この葉の裏に木の枝などで字を書くとその字が黒く浮き出るのです。葉書の語源になった樹木だとも言われています。この特長を活かして参加した子ども達にタラヨウの名札を作ってもらいました。おき太くんをはじめ、参加者みんなの胸には素敵な木の葉の名札がぶら下がりました。これで、森に入って行くための心の準備もバッチリです。
参加者を4班に分け、それぞれのコースで毛虫や芋虫を見つけ、それらをスケッチしてもらいました。最初は恐がっていた子ども達も徐々に毛虫たちになじんでいき、スケッチが完成する頃には手のひらや腕に這わして遊ぶ子ども達も出てきたのです。
こうなると子ども達の好奇心は全開。みんな目を皿のようにしながらあちこちの木の葉を裏返しながら毛虫たちを探します。オオミズアオやクスサンなど大物の芋虫もたくさん見つかり、彼らのペットはだんだん増えていったのです。もちろん、毛虫の中にはドクガやイラガの仲間など触ると危険なものもいるので、やたらに触っちゃだめだということは、しっかり説明しました。
げんきの森には40個ほどの巣箱が架けられています。その巣箱の一つを下ろし中を覗いてみました。たくさんのコケを集めて巣を作っています。この春に雛をかえしたシジュウカラの巣です。子ども達にじっくり中を観察してもらい、小鳥がヒナを育てるにはさっき観察した毛虫や芋虫がなくてはならないことを説明しました。
里山には多様な落葉樹があって、それぞれの種類の木の葉をエサにするいろいろな種類の毛虫たちが生まれる。毛虫たちがたくさん生まれるから、それをエサにする多くの小鳥たちがこの森でエサの心配なくヒナを育てることができる。そんな命のつながりの仕組みを子ども達に知ってもらいました。
毛虫たちのエサになる木の葉ですが、秋になると里山の木の葉はほとんど落葉します。次は地面に積もっている落ち葉の観察です。表面の落ち葉はまだちゃんとした葉の形をしていますが、下に行くほど形が崩れ、粉々になっていきます。木の葉は毛虫たちのエサになるだけではなく、落ち葉となってきのこたちに分解されたり土の中で暮らす小さな虫たちに食べられたりする事によって土に還っていきます。そして、土に還った落ち葉は周りの樹木たちに栄養として利用されるのです。そんな栄養の循環の話をここではしました。森の植物たちは肥料をもらわなくてもこうして大きく成長することができるのです。
「毛虫のことは嫌いでも、森のことは嫌いにならないでクダサイ!」そんなイメージで始めた観察会ですが、予想に反して子どもたちは毛虫たちと大の仲良しになってくれました。子どもたちの自由な好奇心はスタッフである私たちの予想を遙かに超えていたのです。それは、子どもたちが持っている可能性の大きさを私たちに再認識させてくれました。
ちょっと冒険だった初めての取組でしたが大成功に終わることができ、私たちも観察会を企画するに際して、もっといろいろなことにチャレンジしてもかまわないんだということを教えられた観察会でした。(岡田和久)
観察会でこんなに毛虫で盛り上がったのはホント初めて。大人はドン引きでしたが、子ども達は、"触っても大丈夫なんだ"と分かったら、一切の不安もなく、掴みにいく適応力はすごい。改めて、子供たちのすばらしさを実感しました。(大谷栄徳)
子どもたちがどんどん虫を見つけ、虫の特徴を捉えてはおもしろい名前をつけて(「フワフワくん」「強気君」「ねんちゃく君」など)スケッチしていき、あっという間に時間は過ぎていきました。子どもたちの育ちを豊かなものにしていきたいとあらためて思いました。(田村恵利子)
子どもたちのきらきらした瞳は、私たちには見えない自然の魅力をいっぱい見つけてくれるのだと改めて実感しました。この森の魅力を体いっぱいで受け止め、きっと森のことをいっぱいいっぱい好きなってくれたと信じています。(岡田恵美)
「植物も虫も生き生きとしている初夏の森には、新発見や驚きがいっぱい!」
「根来山げんきの森」は命のエネルギーで溢れていました。
まずはチョウや蛾の幼虫であるイモ虫を見つけてみんなでスケッチ。それぞれ名前も付けました。初めのうちは恐がっていた子どもたちもだんだんと愛着が湧いてきたようで、しばらくすると素手で触れられるようになっていました。
私も初めてイモ虫を触りましたが、意外な感触です。毛並みがフワフワで気持ち良いんです。小さな命を手のひらにのせ、愛おしそうに見つめる子どもたちの表情が忘れられません。
他にも巣立ちが終わった野鳥の巣箱を観察したり、植物の葉っぱを紙ヒコーキのように飛ばしてみたり、自然の中でしかできない体験にみんな大興奮!夢中になって遊んでいました。
最後は野いちごをパクリ!初めて食べた野いちごは甘酸っぱい大人の味だったかな?でも、「おいしいね」と笑顔がこぼれていました。
森の環境にあっという間に慣れ、自然の中でたくましく活動する子どもたちの力に驚かされました。自然や生きものを大切にする気持ちをこれからも持ち続けてほしいです。