月〜金曜日 21時48分〜21時54分


神 戸 

 徳川幕府が大政奉還した年の慶応3年(1867)に神戸港が開港され、それ以 来、神戸にはさまざまな欧米文化が入ってきた。神戸では関西独自の文化に合わせた 文明開化が進み、東京、横浜とは一味違う文化を醸成していった。その名残が今も神 戸の街のあちこちに残っている。


 
ファッショナブル・タウン  放送 2月12日(月)
日本近代洋服発祥の地・モニュメント 神戸市役所南側の東遊園地にスーツの型紙を形取った「日本近代洋服発祥の地」のモニュメントが建っている。慶応3年(1867)の神戸港開港後の明治2年(1869)に外国人居留地でイギリス人が洋服店を開店している。その後、日本人も洋服店を開業するようになり、各地から仕立て職人が神戸に集まってきた。江戸時代の足袋(たび)職人、馬具職人らも時代に合わせて洋服の仕立て職人に転職していった。神戸港に入ってくる外国の最先端の洗練されたファションを取り入れた神戸の洋服仕立て技術は、日本のトップレベルにまで達した。「神戸洋服」と言われるブランド名まで生まれるほどになり、日本のファッション界をリードする街となった。
(写真は 日本近代洋服発祥の地・モニュメント)

マキシン 今もその地位は衰えずインポートからオリジナルまで、さまざまなハイセンスのブティックが神戸の街には数多い。そんな中で異人館の町・北野町の「HRM・バークス」は、ベーシックで上品なカジュアルな品をそろえている店として知られている。いつもの服に表情の違う品を加えてカジュアルな着こなしが粋な神戸スタイルに仕上がっている。
 三宮のトアロードにある婦人帽子専門のオーダーメイドの店「マキシン」は創業が昭和15年(1940)の老舗。キャリア45年の技術者を筆頭にベテランの婦人帽子のデザイナー、職人らがひとつひとつ手作りでモダンでシックな帽子を生みだす。マキシンでは、皇族や大女優、航空会社のスチュワーデスの帽子も数多く手がけ、 女性の美しさを一層引き立たせてきた。
(写真は マキシン)


 
中国からの風・南京町  放送 2月13日(火)
中国料理北京城 神戸・南京町は神戸港開港の翌年、明治元年(1867)に誕生したといわれている。神戸港開港とともに海岸地帯に外国人居留地が設けられたが、当時の清国は日本と非条約国だったため中国人は居留地に住むことができず、居留地の西側に隣接する元町の南に住宅や店を構えたのが南京町の起こりである。
 以来、この周辺が飲食、雑貨、漢薬店など各種の店が軒を並べ、最盛期の昭和初めごろには世界各国の珍品がそろい「南京町に行けば何でもある」と言われ、全国各地から買い物客が押しかけにぎわった。第2次世界大戦の空襲で大打撃を受けたが、徐々に復興が進み昭和52年(1977)には戦前をしのぐにぎわいを見せる町に成長した。
(写真は 中国料理北京城)

天仁茗茶店内 阪神淡路大震災でも大きな被害を受けたが復興し、長安門をくぐると異国の香りと熱気があふれる南京町によみがえった。旧正月の春節祭は冬の南京町の名物で、ダイナミックな龍の踊りが繰り広げられ大勢の見物客でにぎわう。
 中国宮殿風のゴージャスな雰囲気の中国料理店「北京城」では、腕自慢の本場のシェフが作る100種類以上のメニューから好みの料理が堪能できる。
 烏龍茶、鉄観音茶、ジャスミン茶など中国茶を扱っているのが「天仁茗茶会社」。中国茶をおいしく飲むために茶の入れ方から教えてくれ、烏龍茶を入れる茶器セットも売っている。
 南京町の近くにある神戸華僑歴史博物館には、華僑の歴史を語る品々が展示されている。神戸港開港と同時に長崎からやってきた11人の華僑が神戸華僑のルーツで、外国から珍しい品を輸入、神戸から海産物などを輸出した。これらの神戸華僑が南京町を生みその発展に大きな役割を果たした。
(写真は 天仁茗茶店内)


 
家具のぬくもり  放送 2月14日(水)
明治18年天池徳兵衛作・椅子 「洋家具発祥の地は神戸か横浜か」で議論されてきたが、その論争にピリオドを打ちそうな資料のひとつが現れた。神戸市立博物館に所蔵されている椅子に「明治18年7月17日 兵庫福原町 天池徳兵衛」の銘が入っていた。これだけで神戸が洋家具発祥の地と断定することはできないが、すでに明治18年には日本人の手で洋家具が製造されていたことが証明された。
 神戸の洋家具業は神戸港開港とともに設けられた、外国人居留地の外国人が使っていた洋家具を修理したり、古道具として買い取るなどの商売から始まった。こうした洋家具を扱っているうちに見よう見まねで外国人や外国船の注文に応じ、洋家具を作るようになった。その洋家具職人は元船大工が多かったと言う。和船の曲線加工の技術が洋家具製造の技術と通じるところがあったようだ。
(写真は 明治18年天池徳兵衛作・椅子)

カフェ・ド神戸(旧居留地十五番館) 神戸・三宮町に本社のある家具商「永田良介商店」は明治5年(1872)創業の老舗。創業当初は居留地に住む外国人の要望に応え、いろいろな家具を中古品として売りさばいていた。そのうち洋風インテリアのセンスと洋家具の知識を身につけ、明治16年(1883)に船大工たちを集め洋家具の製造を始めた。さらに家具にマッチした室内装飾の必要性からインテリアにも手を広げた。洋家具製造の初期にドイツ、オランダなど北欧家具の影響を受けた。今もその影響でオーク材の堅い材質と木目を生かしたオーダーメイド洋家具が、この店の特徴といえる。「用途、サイズが合わせた家具を提供し、メンテナンスも万全というのがオーダーメイド家具の強みです」と5代目社長は強調していた。
 1880年ごろ外国人居留地に建てられ、そのままの姿で残っていた旧居留地の十五番館(国・重文)は阪神淡路大震災で全壊したが、建築当初の材料や技法を踏襲しながら耐震工法を取り入れて復元され「カフェ・ド・神戸・旧居留地十五番館」として生まれ変わった。ここにも調度品や食べ物など異国情緒あふれる品が多い。
(写真は カフェ・ド神戸(旧居留地十五番館))


 
ミュージック・ストリート  放送 2月15日(木)
ソネ 神戸は日本のジャズ発祥の地でもある。ジャズが日本に初上陸したのは1900年ごろといわれているが、上陸地が神戸であったのかは定かでない。だが、日本初のジャズバンドが大正12年(1923)神戸で誕生したのは確かだ。大正の初めごろ太平洋航路の船中で演奏していた井田一郎というバイオリニストが、宝塚少女歌劇団で楽団員をしていた頃、幕間に仲間とジャズを演奏してクビになった。その井田を神戸の楽器店主がバックアップして日本初のジャズバンド「ラフィング・スター・ジャズバンド」を結成、神戸や大阪のダンスホールやホテルで演奏していた。だが大正天皇崩御で大阪市はダンスホールの営業を1年間停止したため、井田は東京へ演奏の舞台を移してしまった。
(写真は ソネ)

神戸の夜景 しかし、その後も神戸では次々にジャズバンドが誕生し、戦後はアマチュアを含め多くのジャズバンドが生まれた。神戸を訪れたジャズの神様と言われていたルイ・アームストロングが神戸のジャズバンドを称賛したほどの実力を持ち、神戸はジャズの街として全国に知られた。
 昭和56年(1981)の神戸ポートピア博覧会のジャズフェスティバルでは、4日間で数万人のファンが押しかけるほどの盛況だった。このファンの情熱に応えようと翌年から「神戸ジャズ・ストリート」が始まった。神戸・北野町界隈に点在するライブハウスや高級クラブで昼下がりにジャズが演奏され、入場券代わりのワッペンをつけていれば、それぞれの会場間を自由に出入りできる仕組み。
 三宮駅近くの「ソネ」はレンガ造りの落ち着いた雰囲気の中で毎夜、ベテランプレーヤーがスタンダードジャズを演奏しており、酒と食事を楽しみながらジャズ演奏が聴ける。近くの「ガレージパラダイス」も、黒人ミュージシャンのジャズの甘く切なく心に響く歌声を、ハウスワインを味わいながら楽しめる。
(写真は 神戸の夜景)


 
甘き異国の味覚  放送 2月16日(金)
フロイン堂 神戸はおいしいパンや洋菓子の老舗が多い町でもあり、主婦や神戸っ子たちはそれぞれお気に入りの店を決めている。
 阪急岡本駅前の「フロイン堂」は、駄菓子屋と見間違えるような店構えだが、昭和7年(1932)創業の老舗のパン屋さんだ。大正時代に来日し、レンガ窯でパンを焼き始めたドイツ人のハインリッヒ・フロインドリーブさんの妻のいとこが、その技術を習得してのれん分けしてもらって始めた店。今は2代目店主と3代目になる息子さん親子が、昔ながらのレンガ窯を使って店の代名詞ともなっている山切り食パンなどを焼いている。この食パンにはファンが多く毎日予約が入るほどで、時間帯によっては品切れになることもあると言う。
(写真は フロイン堂)

セセシオンの洋菓子 阪急御影駅にほど近い洋菓子工房「セセシオン」も、パンやケーキなどに古くからのなじみ客が多い店でおいしい菓子を求めて来る客が後を絶たない。
 コーヒーに凝っているのは神戸・三宮から異人館の北野町へ行く途中の北野坂の「にしむら珈琲店」。店内はヨーロッパの家具を配したゴージャスな雰囲気で、産地から直送した生豆を自家焙煎し、灘の宮水を使っていれたコーヒーのこくとまろやかさが自慢。昭和49年(1974)に会員制の店としてスタートしたが、今は一般にも開放され、コーヒーにうるさい常連客が多い。
(写真は セセシオンの洋菓子)


◇あ    し◇
ブティック・HRMパークスJR、阪急、阪神とも三宮駅下車徒歩10分。 
婦人帽子・マキシンJR、阪急、阪神とも三宮駅下車徒歩5分。
神戸華僑歴史博物館、中国料理・北京城、中国茶・天仁茗茶会社いずれもJR、阪神とも元町駅下車徒歩5分。 
洋家具・永田良介商店JR、阪神とも元町駅下車すぐ。 
カフェ・ド・神戸・旧居留地十五番館JR、阪神とも元町駅下車徒歩10分。 
ジャズクラブ・ソネ、R&B・ガレージパラダイスJR、阪急、阪神とも三宮駅下車すぐ。 
パン・フロイン堂阪急岡本駅下車すぐ。 
菓子工房・セセシオン阪急御影駅下車徒歩5分。 
北野坂・にしむら珈琲店JR、阪急、阪神とも三宮駅下車徒歩8分。 
◇問い合わせ先◇
ブティック・HRMパークス078−271−1934 
婦人帽子・マキシン078−331−6711 
南京町商店街振興組合078−332−2896 
神戸華僑歴史博物館078−331−3855 
中国料理・北京城078−326−6557 
中国茶・天仁茗茶会社078−331ー6796 
洋家具・永田良介商店078−391−3737 
カフェ・ド・神戸・旧居留地十五番館078−334−0015 
ジャズクラブ・ソネ078−221−2055 
R&B・ガレージパラダイス078−391−6640 
パン・フロイン堂078−411−6686 
菓子工房・セセシオン078−854−2678 
北野坂・にしむら珈琲店078−242−2467

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

(1)・・・ひょうごシンボルルート   
(2)・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
(3)・・・越前戦国ルート              
(4)・・・近江戦国ルート              
(5)・・・お伊勢まいりルート         
(6)・・・修験者秘境ルート           
(7)・・・高野・熊野詣ルート         
(8)・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

    あなたも「関西の歴史や文化を楽しみながら探求する」歴史街道倶楽部に参加しませんか?
    歴史街道倶楽部では、関西各地の様々な情報のご提供や、ウォーキング、歴史講演会など楽しいイベントを企画しています。
   倶楽部入会の資料をご希望の方は、
 ハガキにあなたのご住所、お名前を明記の上、
          郵便番号 530−6691
          大阪市北区中之島センタービル内郵便局私書箱19号
                  「テレホンサービス係」
へお送り下さい。
   歴史街道倶楽部の概要を解説したパンフレットと申込み用紙をご送付いたします。
       FAXでも受け付けております。FAX番号:06−6448−8698   

歴史街道推進協議会