月〜金曜日 20時54分〜21時00分


奈良国立博物館 

 明治維新による社会改革で西洋主義の風潮、排仏毀釈(はいぶつきしゃく)などによって、伝統的な文化財や社寺に伝わる仏像などが散逸したり、破損する恐れが強まった。
これらの文化財の保存、調査、研究を図るため明治22年(1889)東京、京都、奈良に帝国博物館が設置されることになり、帝国奈良博物館(現奈良国立博物館)が明治28年(1895)開館し、以来「美と知識と憩いの場」として多くの人たちに親しまれてきた。


 
仏の表情  放送 2月18日(月)
 興福寺と春日大社の間、鹿が群れ遊ぶ奈良公園内の一角にある奈良国立博物館本館(国・重文)は、仏教美術を中心とする文化財の収蔵、展示、調査研究を目的として明治28年(1895)に開館した。設計は当時の宮内省内匠寮技師の片山東熊(かたやまとうくま)氏によるもの。フレンチルネサンス様式で明治時代中期の代表的な欧風建築である。特に西玄関まわりの装飾のデザインは優れたものと言われている。

本館(重文)

(写真は 本館(重文))

薬師如来坐像(平安時代・国宝)

 この博物館の館蔵品は、平成12年度末現在で1257点、そのうち国宝は12点、国指定の重要文化財は91点。社寺などからの寄託品は1727点、そのうち国宝46点、重要文化財299点にのぼっている。飛鳥から鎌倉まで各時代にわたる彫刻の常設展示が行われている。
 同館所蔵の薬師如来座像(国宝)は、平安時代初期のカヤの一木彫像で、高さ49.7cmの小像。伏し目の表情ながら堂々とした風格があり、平安時代初期の一木彫像の代表的なものとされ、“奈良博薬師”として名高い。この薬師如来座像は京都・東山の若王子社の本地仏だったと伝えられている。明治時代初めの神仏分離令による騒動のときに民間へ流れ、後に国有品となった経緯がある。
 多聞天立像(鎌倉時代、国・重文)は、大きなポーズを取り、顔の表情、筋肉の隆起を強調した迫力ある守護神像である。

(写真は 薬師如来坐像(平安時代・国宝))


 
地下回廊  放送 2月19日(火)
 高さ39.1cmの獅子像(平安時代、国・重文)は、その背中に鞍を乗せる鞍褥(くらしき)があることから、本来はここに文殊菩薩像を乗せていた獅子像である。
 この種の獅子像は口を開いているものが多いが、この獅子像は口を閉じている極めて珍しい例と言える。また、頭部を横に向けているのが一般的だが、真っ直ぐ正面を向いているなど、特徴的な獅子像とされている。

獅子像(平安時代・重文)

(写真は 獅子像(平安時代・重文))

地下回廊

 本館と東、西の新館とを全長150m、延面積2150平方mの広々とした空間で結んでいるのが地下回廊。ここは入場無料のフリースペースだが、単なる連絡通路ではない。
様々な仏像の名称とその違いをパネルで解説したり、仏像の製作過程がわかる模型を展示している。このほか、仏像や奈良の代表的社寺の基本知識をコンピュータ画像で教えてくれる「デジタル仏像ミュージアム」も設置されていて、むずかしい仏像の知識などが楽しく勉強できる。また、レストランや仏教美術関係の本や展覧会図録、関連グッズなどが買えるミュージアムショップなどもあり「学びと憩いのゾーン」となっている。

(写真は 地下回廊)


 
西新館  放送 2月20日(水)
 新しい陳列館として昭和47年(1972)に完成したのが西新館。周囲の景色を取り込む総ガラス張りやコンクリート打ち放しの柱、陳列品を引き立たせるために簡素な仕上げの内部空間など、デザインと素材に工夫が凝らされている。外観は正倉院のイメージを取り入れ、本館や周辺の環境との調和に配慮している。
 1階は、映像と図書で博物館所蔵の国宝や仏教美術全般の知識が得られる学習コーナー、2階が絵画、書跡、工芸、考古の展示場となっている。

一字金輪曼荼羅(平安時代・重文)

(写真は 一字金輪曼荼羅(平安時代・重文))

種子華鬘(鎌倉時代)

 「金銅宝幢形経筒(こんどうほうどうがたきょうづつ)」は北九州で出土した平安時代のもので、高さ41.5cm、筒身幅15cm。筒の上部には衆生を引導する弥勒の出生を期して如法経を納めたことが記されている。経筒の上に瑠璃製の舎利容器が奉安されているが、こうした例は他に見られない貴重なものとされている。
 「一字金輪曼荼羅(いちじきんりんまんだら)」(平安時代、国・重文)は、中央に大日金輪像を描かれていて、息災、敬愛を祈る時に一字金輪法の本尊像として用いられるものである。
 「種子華鬘(しゅじけまん)」(鎌倉時代)は、滋賀・兵頭大社が所蔵していたもので、現在、奈良国立博物館に6面が所蔵されている。華鬘は仏前を荘厳にする装飾用の仏具で、団扇(うちわ)形と花輪形の二つの系統がある。種子華鬘はその折衷形とも言え、重厚な作風である。

(写真は 種子華鬘(鎌倉時代))


 
鴎外滞在の地  放送 2月21日(木)
 博物館構内の東北隅に「鴎外の門」と呼ばれている日本建築の門がある。帝室博物館総長兼図書頭に任ぜられた文豪・森鴎外(1862〜1922)が、奈良滞在中に宿舎にしていた官舎の門で、官舎はすでに取り壊されて今はない。
 鴎外は大正6年(1917)に帝室博物館総長兼図書頭に任命され、翌7年から10年にかけて毎年11月の正倉院宝庫開封に立ち会うため、奈良に来て滞在していた。奈良滞在中は公務の合間を見て、社寺や旧跡を精力的に訪ね歩き日記や歌にその様子を記している。奈良から子供たちに宛てた手紙には、官舎や博物館周辺の略図をつけ「パパノイルトコロ」などと書いており、文豪・鴎外の意外な一面をかいま見ることができる。

鴎外の門

(写真は 鴎外の門)

八窓庵(江戸時代)

 正倉院は有資格者のみに拝観が許されていたが、鴎外はその規則を改め、身分にかかわらず広く学識、一芸に秀でた人たちにも拝観の機会を与えており、鴎外の文芸に対する視野の広さを示した一例と言える。
 博物館の中庭にある八窓庵は、元は興福寺塔頭の大乗院にあったもので多窓式茶室として有名。この茶室が永久に保存されることを望んだ奈良在住の篤志家数名の努力によって、明治25年(1892)博物館に寄贈され敷地内に移築された。博物館の敷地内に大和の三茶室にあげられているこのような茶室があることは、博物館を訪れた人たちの心に安らぎを与えている。

(写真は 八窓庵(江戸時代))


 
異色の明治建築  放送 2月22日(金)
 奈良国立博物館構内の東南隅、春日大社参道脇に和風建築ながら、どこか西洋の雰囲気も醸し出している不思議な魅力を持った建物がある。これは博物館の仏教美術資料研究センター(国・重文)で、明治35年(1902)に奈良物産陳列所として建てられた建物である。現在は仏教美術に関する調査、研究資料の作成、収集、整理、保管を行い、仏教美術の図書、写真などを定期的に一般公開している。

仏教美術資料研究センター(重文)

(写真は 仏教美術資料研究センター(重文))

イスラム様式の窓

 設計段階では、西洋建築は古都の景観に不調和であるとの景観論争が起こり、全体のプランを平等院鳳凰堂になぞらえることになった。正面には唐破風の車寄せや建物の各所に各時代の建築様式を駆使し、窓にはイスラム様式の装飾を取り入れながら全体としての調和を図り、奈良公園の景観にマッチした建築物に仕上げ、洋風を加味した和風建築として貴重な存在になっている。

(写真は イスラム様式の窓)


◇あ    し◇
奈良国立博物館近鉄奈良線奈良駅下車徒歩10分。 
JR関西線奈良駅下車徒歩15分。
◇問い合わせ先◇
奈良国立博物館0742−22−7771
テレホンサービス(展示品案内)0742−22−3331

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