月〜金曜日 21時54分〜22時00分


奈良時代ゾーン 

 飛鳥、藤原京時代が終わりを告げ、都が奈良・平城京へ遷って天平文化が華開い た。東大寺をはじめ南都七大寺など多くの寺院が建立された。正倉院の宝物など仏 像、絵画、工芸品にも優れた遺産を残し、古事記、日本書紀などの史書も編さんされ た。律令による国家制度、天皇制が確立した時代でもある。貴族社会の基礎が形成さ れ、藤原氏が勢力を伸ばしてきた。


 
西大寺  放送 3月13日(月)
西大寺東塔基壇 西大寺は南都七大寺のひとつと言われ、称徳天皇の勅願で天平神護元年(765)に創建された。31haと言う広大な寺域に金堂、四王堂、十一面堂、東西両塔 など百十数の堂塔が建ち、東の東大寺に対する西の大寺院にふさわしい威容を誇って いた。
 しかし、西大寺は度重なる火災で多くの堂塔、仏像を失った。鎌倉時代に西大寺中 興の祖と言われる叡尊が、諸堂を再建、寺運も興隆したが、その後も火災に見舞われ て荒廃、寺域も減らされて衰退した。現在の建物は江戸時代に再建されたもので、高 さ45mもあった東西の五重塔は今はなく、東塔の巨大な基壇が当時の威容 をしのばせている。
(写真は 西大寺東塔基壇)

四天王に踏まれる邪鬼(奈良時代) 西大寺の建物は火災で焼失したため、国宝、重要文化財指定のものはない が、仏像などには優れたものが残っている。金堂には本尊の釈迦如来立像、四王堂に は十一面観音立像、四天王立像などがあり、いずれも国の重要文化財。四天王に踏み つけられている邪鬼は天平時代のもの。
 西大寺と言えば大きな茶わんで抹茶を飲む大茶盛会が有名。国家安泰を祈願して茶 を献じた中興の祖・叡尊ゆかりの茶儀で、4月と10月に行われていた。最近はこの 大茶盛会が西大寺の名物になったので、30人以上の団体で予約すれば、希望の日に 大きな茶わんでお茶をいただくことができる。
(写真は 四天王に踏まれる邪鬼(奈良時代))


 
法華寺  放送 3月14日(火)
[法華寺十一面観音立像(平安時代前期、国宝)の模刻] 法華寺は光明皇后が聖武天皇や父・藤原不比等らの菩提を弔うため、父の邸宅を 喜捨して天平時代に建立された。全国の国分尼寺を統括する総国分尼寺となり、今も 門跡格の寺としての格式を持つ尼寺。当時は金堂、講堂、東西両塔など天平の大伽藍 を持つ荘厳さを誇り、尼僧の修法道場として隆盛を極めていた。
 しかし、平安遷都後に寺は衰退し、鎌倉時代に西大寺中興の祖・叡尊が再興した。 その後、慶長年間に豊臣秀頼の母・淀君が堂塔の再建に力を貸し、現在残っている本 堂、南門、鐘楼は、この時に再建された建物で国の重要文化財。
(写真は 法華寺十一面観音立像(平安時代前期、国宝)の模刻)

犬のお守り 国宝の本尊・木造十一面観音立像は光明皇后の姿を彫ったものと言われている。 素地のままで彩色を用いず、わずかに頭髪に群青、ひとみに黒、唇に朱が塗られてい る。鋭い目つき、厚い唇、豊艶な体つきが特徴で、本体から台座までの一木造りの木 彫で平安時代初期の傑作。秘仏のため春、秋の特別開扉の日以外は拝観できない。こ の像はインドの仏師が彫ったとの伝えもある。
 境内の庭園は京都・仙洞御所の庭と通じるものがあると言われる名園。ほかに光明 皇后が困窮者のために作った蒸し風呂の「から風呂」や皇后が最初に作ったと言われ る土製の小さな犬は、安産のお守りとして人気がある。
(写真は 犬のお守り)


 
喜光寺と菅原神社  放送 3月15日(水)
阿弥陀如来座像(平安時代後期、重文) 東大寺大仏殿とそっくりの本堂があるのが喜光寺。室町時代初期に再建されたも のだが、創建当時の大仏殿の10分の1の大きさに造られた「試みの大仏殿」と言わ れており、国の重要文化財。
 喜光寺は古くは菅原寺とも言われており、養老5年(721)元明天皇の勅願で行 基が建立、元明、元正、聖武三天皇の勅願寺となった。聖武天皇が参詣したとき、本 尊から不思議な光りが放たれたことから喜光寺と寺号を改めたと言う。
(写真は 阿弥陀如来座像(平安時代後期、重文))

菅原神社 本尊の阿弥陀如来座像は、平安時代後期の様式の定朝様式を踏襲した寄木造 りで、国の重要文化財。喜光寺を建立した行基は、晩年この寺で過ごし、塔頭の東南 院で没した。境内に行基の墓と伝えられるものがある。
 この付近は土師氏が住んでいたところで、菅原の姓を賜り菅原の里と呼ばれるよう になった。喜光寺の北西に菅原道真を祭る菅原神社がある。道真の母の故郷で道真生 誕の地と伝えられている。最近、近くの丘陵地帯から埴輪窯跡が発掘され、土師氏と 関連のあるものか注目されている。
(写真は 菅原神社)


 
ならまちウオーク・奈良晒(さらし)  放送 3月16日(木)
奈良町の古い町家 奈良町は元興寺を中心に発展した商業の町で、虫籠窓(むしこまど)や格子造り の町家が今も残っている。奈良町には、特産品の奈良晒を商う店が軒を並べていた。
 奈良晒は奈良盆地の麻を原料にした織物で、武士や裕福な町人らの裃(かみしも) や礼服、夏の衣類として用いられていた。麻糸を使って織り上げた麻布は、淡い亜麻 色をしており、これを水で晒して真っ白に仕上げる。この晒加工の技術が優れていた のが奈良晒。奈良晒の起源ははっきりしないが、鎌倉時代に寺院の僧尼の僧衣として 使われるようになったようだ。
(写真は 奈良町の古い町家)

大和名所図会 巻二(江戸時代) 江戸時代に入り徳川家康が、奈良晒を幕府御用達品として保護したのと、武士、 町人がぜいたくな衣類を求めるようになり生産は増大、元禄時代に最盛期を迎えた。 明治維新で武士が没落し、奈良晒は大きな打撃を受け、生産は急激に減っていった。
 現在は奈良市の東、月ヶ瀬村などでわずかに生産されている。創業が江戸時代後期 の文政元年(1818)の奈良晒の商店・中川家は現在12代目。今も奈良町の古い 町家に奈良晒の店「遊中川」を出し、手つむぎ、手織りの奈良晒から創作したのれん やネクタイ、スカーフなどを並べている。すべて手作業で織り上げられた奈良晒の風 合いが、愛好家や観光客らの人気を集めている。
(写真は 大和名所図会 巻二(江戸時代))


 
依水園と寧楽美術館  放送 3月17日(金)
依水園の庭園から見た東大寺南大門と若草山 東大寺南大門の西側にある依水園は、奈良市内有数の鑑賞庭園。吉城川の水を取り入れ、前園と後園の2つの回遊式庭園を組み合わせた一大庭園は、若草山、春日山(御蓋山)や東大寺大仏殿の甍(いらか)と金色の鴟尾(しび)を借景 にしている。
 前園は江戸時代初期の延宝年間に奈良晒(さらし)の豪商・清須美通清が、別邸を 設けて趣向を凝らした庭を作った。後園は明治32年(1899)に奈良の豪商・関 藤次郎によって作られ、現在の依水園が完成した。
(写真は 依水園の庭園から見た東大寺南大門と若草山)

寧楽美術館に展示の出土古代瓦 春から初夏にかけては、ツツジ、サツキが新緑に映えて依水園が一番美しい季節 と言える。庭園内には茅ぶきの「三秀亭」や頼山陽の書が掲げられている「清秋庵」 などの茶亭やあずま屋が点在している。明治政府の神仏分離令で衰退した南都七大寺 の礎石や、郡山城跡から運ばれた菊の文様入の石の手水鉢(ちょうずばち)などが、 庭石としてさりげなく置かれている。
 依水園内にある寧楽(ねいらく)美術館は、中国、朝鮮の陶磁器、青銅器、書画な ど東洋古美術品を中心に展示している。コンクリート造瓦ぶきのユニークな建物は、 庭園の緑とよく調和している。
(写真は 寧楽美術館に展示の出土古代瓦)


◇あ    し◇
西大寺 近鉄西大寺駅下車3分。
法華寺 近鉄奈良駅からバス法華寺前下車3分。
喜光寺・菅原神社 近鉄尼ケ辻駅下車10分。
奈良町(ならまち) JR・近鉄奈良駅下車15分。
依水園・寧楽美術館
近鉄奈良駅下車10分、
JR奈良駅下車15分。
◇問い合わせ先◇
奈良市観光課 0742−34−4739
西大寺 0742−45−4700
法華寺 0742−33−2261
喜光寺 0742−45−4630
菅原神社 0742−45−3576
奈良晒「遊中川」 0742−22−1322
依水園・寧楽美術館 0742−22−2173

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

@・・・ひょうごシンボルルート   
A・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
B・・・越前戦国ルート              
C・・・近江戦国ルート              
D・・・お伊勢まいりルート         
E・・・修験者秘境ルート           
F・・・高野・熊野詣ルート         
G・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

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