月〜金曜日 20時54分〜21時00分


奈良・明日香村 

 奈良・東大寺二月堂のお水取りが終わると、大和路は春本番を迎える。飛鳥の里もサクラ、そしてレンゲの花が咲き競い、飛鳥巡りには最高の季節。キトラ古墳では石室内で新しい壁画が次々に見つかり、古代への興味をかき立てている。万葉の詩情を感じさせてくれる「奈良県立万葉文化館」も平成13年(2001)オープンした。春が間近なそのような明日香村を散策してみた。


 
奈良県立万葉文化会館  放送 3月18日(月)
 「万葉集」を中心とした古代文化のミュージアム「奈良県立万葉文化館」が平成13年(2001)9月、万葉のふるさと・明日香村に誕生した。
 万葉文化館はわが国を代表する日本画家たちが、万葉の秀歌を題材に描いた作品を集めた日本画展示室。映像、ジオラマ、音楽など、さまざまな手法を用いた万葉時代の生活や暮らしぶりの紹介。日本の古典芸能のエッセンスを生かしながら、新しい創作歌劇として構成した「万葉のヒロイン額田王」「宮廷歌人柿本人麻呂」、アニメーション「万葉のふるさと」の三作品を上演する万葉劇場など、さまざまな工夫をこらした展示などで万葉の時代を知り、その心にふれられる施設である。

富本銭(複製)

(写真は 富本銭(複製))

飛鳥池工房遺跡復原

 万葉文化館は平成7年(1995)に全体構想を策定、翌年から建設予定地の文化財発掘調査を始めた。工房後などが出土、さらに詳しい発掘調査が行われ日本で最古の貨幣「富本銭」が出土した。貴重な遺跡の上にミュージアムを建設することに対する反対運動も起こったが、予定通り建設は進められた。発掘調査で明らかになった「飛鳥池工房遺跡」の保存にも努め、遺跡の復元展示をして遺跡との共存を図っている。
 万葉集を中心にした総合文化拠点として「調査・研究」「展示」「図書・情報サービス」の3つの機能を備えている。
 万葉図書・情報室には万葉集をはじめ広く日本の古代文化の図書資料を収集しており、江戸時代に刊行された貴重な「寛永版本万葉集」をはじめ約1万冊の蔵書がある。全国で初めての万葉集や万葉に関する情報を収録した本格的なデータベースがあり、万葉集4500首の原文の万葉仮名、口語訳や歌人の名前、地名などを、さまざまなキーワードで検索できる。

(写真は 飛鳥池工房遺跡復原)


 
万葉体感  放送 3月19日(火)
 奈良県立万葉文化館は単に資料の展示にとどまらず、映像、ジオラマ、音楽などの手法を駆使して、来館者も万葉の世界に参加し、時空の旅を体験できるようになっている。
 「八十(やそ)のちまた」とは、たくさんの道が分かれるところを指し、人びとの行き交う交差点であり、集う広場でもある。この八十のちまたをイメージし古代の市の様子を再現した「歌の広場」や、ガラスや富本銭などを作っている工人たちの様子などが、人形を使って展示されている。

歌の広場

(写真は 歌の広場)

奈良県立万葉文化館

 万葉おもしろ体験コーナーは、万葉びとと対話できる「万葉びとの暮らしインタビュー」、画像合成で万葉びとに変身できる万葉版プリクラ「ファッション変身ゲーム」などがある。子供たちもゲーム感覚で楽しみながら万葉の世界を疑似体験ができ、万葉びとの気分にひたれる。
 館内の見学に疲れたら、万葉の草木を植栽した万葉文化館周囲の庭園に出て庭園内を散策できる。復元された「飛鳥池工房遺跡」を見学したり、奈良県在住の著名な書家5人が揮毫(きごう)した万葉歌碑で万葉集の歌を口にするのもよい。

(写真は 奈良県立万葉文化館)


 
酒船石遺跡と明日香民俗資料館  放送 3月20日(水)
 明日香村には謎の石造物が多い。そのひとつ、酒船石が伝飛鳥板蓋宮跡の東の小高い丘陵にある。この丘陵一帯を酒船石遺跡と呼んでおり、丘陵北側裾の発掘調査で新たに亀形石造物、小判形石造物が平成12年(2000)に見つかった。出土した時は考古学ファンの間で大変な話題になり、現地説明会には全国から見学者が訪れた。
 造形的にも優れたこの2つの石造物は石槽になっている。大土木工事を好んだと言われる女帝・斉明天皇の時代に導水施設として造られ、祭祀空間として使われていたのではないかと見られる。現在は遺跡周辺はきれいに整備され一般公開されている。この亀形石造物や小判形石造物を古代人が実際に使っている様子が、すぐそばの明日香民俗資料館のモニターテレビにコンピューターグラフィックで描き出されており、飛鳥時代への思いを駆り立てる。

酒船石遺跡

(写真は 酒船石遺跡)

明日香民俗資料館

 大和棟の農家を移築した飛鳥民俗資料館は、明日香地方で使われていた農具や生活用具を展示している。第二次世界大戦後まで使われていた道具類もあるが、現代の農家や民家ではお目にかかれないものばかり。ほかに大和の奇祭や伝統行事、信仰、生活様式などがオートスライドで見られ、古代以外の飛鳥の様子を知ることができる。
 そのひとつが明日香村稲淵地区で稲淵川に毎年1月11日にかけられる「稲淵の勧請綱」。綱の中央に男性のシンボルがつけられることから雄綱と呼ばれる。さらに上流の栢森では「栢森の勧請綱」がかけられ、こちらは女性のシンボルがつけられることから雌綱と呼ばれている。
この建物は江戸時代の元禄、宝永年間(1688〜1711)ごろに建てられ、文化、文政年間(1804〜1830)に大改修が加えられている。

(写真は 明日香民俗資料館)


 
西国三十三カ所第七番札所・岡寺  放送 3月21日(木)
 西国三十三カ所巡りが盛んになったのは平安時代中ごろの約千年前からだが、岡寺はそれ以前から観音霊場として栄えていたと言う日本最初の厄除け霊場。
 岡寺は約1300年前の天智天皇のころ、のちに天武天皇の皇太子となる草壁皇子が住んでいた宮跡を義淵(ぎえん)僧正がもらい受け、寺を建てたのが始まりと言う。本尊の如意輪観音像は高さ約4.58mで、弘法大師がインド、中国、日本の三国の土で造ったと伝えられる。わが国最大の塑像で、わが国最古の如意輪観音像。白い像の唇にわずかに残っている朱色が印象的だ。

如意輪観音像

(写真は 如意輪観音像)

仁王門

 岡寺の正式名は龍蓋寺(りゅうがいじ)と言う。寺の近くで田畑を荒らす悪い龍がおり、この龍を義淵僧正が仏法の法力で池に封じ込め、大石でふたをしたのが龍蓋池。ここから寺の呼び名が生まれた。本堂前には今もこの龍蓋池があり、これが災いを取り除く厄除け信仰に発展した。
御詠歌「けさ見れば 露岡寺の 庭の苔 さながら瑠璃の 光なりけり」の通り、境内に建つ諸堂塔、そして庭、四季折々に咲く花々、さらに眼下に広がる飛鳥の里の景色、何から何まで飛鳥の自然に包まれた美しいお寺である。

(写真は 仁王門)


 
万葉のふるさと  放送 3月22日(金)
 「万葉集」は漢字ばかりで書かれた日本で最も古い歌集である。飛鳥時代から奈良時代までに詠まれた歌を、万葉歌人の大伴家持らによって約4500首が収録された。原文は現代の知識では読めない難解なもので、多くの学者たちによって分かりやすく解釈され、現代人にも親しめるようになった。
 万葉集に詠まれた歌の舞台は日本全国に及んでいるが、やはり大和に集中しており、そのまた中心が飛鳥であり、飛鳥は「万葉のふるさと」である。

石舞台

(写真は 石舞台)

飛鳥川

 明日香村を南から北へ流れる飛鳥川は、万葉歌に最も多く詠まれており万葉集には23首が収録されている。この川は生活を支える川であり、そして恋の川でもあった。
 「明日香川 明日も渡らむ 石橋の 遠き心は 思ほえぬかも」の歌は、川の中の石橋(飛び石)をつたって川を渡り、恋人の所へ行きたい気持ちを詠んだ恋の歌。現在も飛鳥川には飛び石の石橋が残っており、当時の面影をしのぶことができる。春風に吹かれながらタンポポ、レンゲの花が咲く飛鳥川のほとりのそぞろ歩きも、遺跡巡りとは異なった趣があり、飛鳥の里の良さが再認識できる。

(写真は 飛鳥川)


◇あ    し◇
奈良県立万葉文化館、酒船石遺跡、明日香民俗資料館近鉄橿原神宮前駅からバス万葉文化館西口下車。
近鉄、JR奈良線桜井駅からバス万葉文化館下車。
近鉄吉野線飛鳥駅下車徒歩40分。 
岡寺近鉄橿原神宮前駅からバス岡寺前下車徒歩10分。
◇問い合わせ先◇
明日香村役場企画課0744−54−2001 
飛鳥総合案内所0744−54−3624 
明日香村観光開発公社(酒船石遺跡) 0744−54−4577 
奈良県立万葉文化館0744−54−1850 
明日香民俗資料館0744−54−3655 
岡寺0744−54−2007 

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

(1)・・・ひょうごシンボルルート   
(2)・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
(3)・・・越前戦国ルート              
(4)・・・近江戦国ルート              
(5)・・・お伊勢まいりルート         
(6)・・・修験者秘境ルート           
(7)・・・高野・熊野詣ルート         
(8)・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

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