月〜金曜日 21時48分〜21時54分


春の古都・奈良 

 古都・奈良の春は、早春に梅、3月中旬から奈良公園周辺にアセビの花が咲き、次いでサクラが満開になる。花から新緑へと自然が衣替えをする今の時期は、古都が最も華やぐ 時で、春の観光シーズンを迎えて修学旅行や観光客らでにぎわう。


 
猿沢池  放送 4月2日(月)
采女神社 興福寺の南にある猿沢池は、周囲360mの小さな池だが、その水面に興福寺の五重の塔を映し、古くから南都八景のひとつにあげられている名所。猿沢の池は、興福寺が捕らえられた生き物を逃がしてやる「放生会」のための放生池として、天平21年(749)に造られた人口の池。また「澄まず、濁らず、出ず入らず、藻生えず、魚七分に水三分」 と、その不思議な池の生態が伝えられている。
(写真は 采女神社)

柿寿賀 猿沢池の西端の采女(うねめ)神社の社殿は、入り口の鳥居に背を向けて建っている珍しい神社。これには采女の悲しい伝説が秘められている。
 文武天皇に仕えていた采女(女官)が、天皇の心変わりを嘆き名月の夜、猿沢池に身を投じた。采女の入水を知った帝はその霊を慰めるため、池のほとりに小さな社を建てたのが采女神社。采女の霊は身を投じた池を見るに忍びず、池に背を向けてしまったと伝えられている。池の東には采女が身を投じる前に衣を掛けたという衣掛(きぬかけ)柳がある。毎年、中秋の名月には采女の霊を慰める采女祭が行われている。
 衣掛柳の近くに干し柿とユズ皮を組み合わせ、柿の甘みとユズの酸味を生かした大和の銘菓「柿寿賀」の店があり、奈良公園を散策する人たちがよく立ち寄っている。
(写真は 柿寿賀)


 
依水園  放送 4月3日(火)
依水園 東大寺の西側にある依水園は、若草山、三蓋(みかさ)山、東大寺南大門を借景にした奈良市内で唯一の鑑賞庭園。前園と後園の2つの回遊式庭園が組み合わされた大庭園で、特に春から初夏にかけてはツツジ、サツキが咲き乱れ、新緑に映えて美しい。
 江戸時代初めの延宝年間(1673〜81)に奈良晒(さらし)業者の清須美道清が建てた別邸に、趣向を凝らして造ったのが前園。この茅ぶきの別邸の名称「三秀亭」は、宇治市の万福寺の二代目住職木庵禅師が名づけた。後園は明治32年(1899)奈良の豪商・関藤次郎によって造られ、現在の依水園が完成した。
(写真は 依水園)

三秀亭のうなとろ御膳 園内には万葉集に歌われている吉城(よしき)川の清流が取り入れられ、頼山陽の書が掲げられている清秀庵や柳生堂、氷心亭、挺秀軒などの茶亭、あずま屋が点在している。明治維新後の神仏分離令で荒廃した南都七大寺の礎石や郡山城から運ばれた菊の文様入りの手水鉢(ちょうずばち)などが、庭に何気なく置かれている。
 園内には中国、韓国の陶磁器、青銅器、書画などを展示している寧楽(ねいらく)美術館がある。また三秀亭では名園を眺めながら、山の芋を使った「うなとろ御膳」「麦飯とろろ」などの食事ができる。
(写真は 三秀亭のうなとろ御膳)


 
ふとんの資料館  放送 4月4日(水)
ふとんの資料館 奈良町界隈には古い商家や民家が建ち並び、昔の人々の暮らしの息吹が感じられる。また、これらの古い建物の住空間を利用した資料館がいくつかある。このほど新しく「ふとんの資料館」がオープンした。
 天正17年(1589)創業という麻織物では日本最古の老舗で、宮内庁御用達ふとんメーカーの杉山繊維工業会社が、平成11年(1999)まで使用していた本社建物をふとんの資料館に転用した。
(写真は ふとんの資料館)

2階の生活雑貨(ふとん資料館) 1階には宮内庁に献上したふとんやひざ掛けなどの品々の復刻版や同社の業績を示す製品が展示されている。2階には昭和30年代の懐かしい冷蔵庫や洗濯機、ミシン、家具類、レコード、雑誌などの生活雑貨が並んでおり、手に取って楽しむことができる。
 裏庭一帯は休息ゾーンとして自由に使え、約150年前に建てられた建物の風情を楽しみながら弁当をひろげたり、談笑にふけることもできる。
(写真は 2階の生活雑貨(ふとん資料館))


 
志賀直哉旧居  放送 4月5日(木)
志賀直哉旧居サンルーム 春日大社から“ささやきの道”を高畑に抜けたところに文豪・志賀直哉(1883〜1971)の旧居がある。大正14年(1925)に京都・山科から奈良市に引っ越してきた志賀直哉が、昭和4年(1029)に風光明媚な高畑に自ら設計して住宅を建て、鎌倉に移り住むまでの10年間を過ごした。
 この旧居は数寄屋風造りで洋風や中国風の様式も取り入れており、洋風サンルームや娯楽室、書斎、茶室、食堂を備えた当時としては大変モダンで合理的な建物だった。
(写真は 志賀直哉旧居サンルーム)

たかばたけ茶論 志賀直哉は、ここで「暗夜行路」のほか「痴情」「プラトニック・ラブ」「邦子」などの作品を書いた。また、志賀直哉を慕って白樺派の武者小路実篤や小林秀雄、尾崎一雄、小林多喜二らの文人や画家がしばしば訪れ、文学論や芸術論などを談笑した文化サロンとなり、いつしか“高畑サロン”と呼ばれるようになった。
 書斎や2階の客間から若草山や三蓋(みかさ)山、高円(たかまど)山の眺めが美しく、庭園も執筆に疲れた時に散策できるように作られていた。志賀直哉旧居の向かいにある「たかばたけ茶論(さろん)」には、奈良散策の疲れを癒す人たちが立ち寄る。
(写真は たかばたけ茶論)


 
白毫(びゃくごう)寺  放送 4月6日(金)
閻魔大王坐像(重文) “花の寺”としても知られている奈良市南東部の高円(たかまど)山の山麓に建つ白毫寺は、霊亀元年(715)天智天皇の第七皇子・志貴皇子の山荘跡に建てられた。白毫とは仏の額にあって光を放つ白い毛のことを言う。都が奈良から京都に遷都してからこの寺も寂れたが、鎌倉時代に西大寺の中興の祖として名高い叡尊(えいそん)が白毫寺の再建にも力を注いだ。
 室町時代に兵火で堂塔はすべて消失、江戸時代の寛永年間(1624〜44)再建されたが、現在は本堂と収蔵庫、御影堂だけになっている。
(写真は 閻魔大王坐像(重文))

五色椿(天然記念物) 由緒ある仏像がある寺としても知られており、本尊の阿弥陀如来座像や閻魔王座像など8体の仏像はいずれも国の重要文化財に指定されている。太山王座像は胎内銘から運慶の孫、康円の作であることがわかった。
 境内の「五色椿」は、東大寺開山堂の「のりこぼし」、伝香寺の「ちり椿」と共に奈良三名椿のひとつとして知られ、県の天然記念物に指定されている。3月下旬から4月にかけて1本の木に赤、白、桃色、斑入りなど色とりどりの花をつけ、参拝者の目を楽しませる。また秋には、山門から境内に通じる石段の両側の萩が、可憐な花をいっぱいつけて参道をおおう萩の名所でもある。境内からは奈良市内や遠く二上山、葛城山まで望める眺望も素晴らしい。 (写真は 五色椿(天然記念物))


◇あ    し◇
猿沢池近鉄奈良駅下車徒歩5分。JR奈良駅下車徒歩10分。 
依水園近鉄奈良駅下車徒歩10分。JR奈良駅下車徒歩15分。 
ふとんの博物館近鉄奈良駅下車徒歩15分。JR奈良駅下車徒歩20分。 
志賀直哉旧居JR奈良駅、近鉄奈良駅から市内循環バス破石下車徒歩5分。 
白毫寺近鉄奈良駅からバス白毫寺下車徒歩10分。 
JR奈良駅、近鉄奈良駅から市内循環バス高畑下車徒歩20分。
◇問い合わせ先◇
奈良市観光課0742−34−1111 
奈良市観光センター0742−22−5200 
柿寿賀0742−22−2897 
依水園0742−22−2173 
依水園内食事処三秀0742−25−0781 
ふとんの資料館0742−23−5447 
志賀直哉旧居0742−26−6490 
たかばたけ茶論0742−22−2922 
白毫寺0742−26−3392

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

(1)・・・ひょうごシンボルルート   
(2)・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
(3)・・・越前戦国ルート              
(4)・・・近江戦国ルート              
(5)・・・お伊勢まいりルート         
(6)・・・修験者秘境ルート           
(7)・・・高野・熊野詣ルート         
(8)・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

    あなたも「関西の歴史や文化を楽しみながら探求する」歴史街道倶楽部に参加しませんか?
    歴史街道倶楽部では、関西各地の様々な情報のご提供や、ウォーキング、歴史講演会など楽しいイベントを企画しています。
   倶楽部入会の資料をご希望の方は、
 ハガキにあなたのご住所、お名前を明記の上、
          郵便番号 530−6691
          大阪市北区中之島センタービル内郵便局私書箱19号
                  「テレホンサービス係」
へお送り下さい。
   歴史街道倶楽部の概要を解説したパンフレットと申込み用紙をご送付いたします。
       FAXでも受け付けております。FAX番号:06−6448−8698   

歴史街道推進協議会