月〜金曜日 21時48分〜21時54分

京の味 

 約千年の京都王朝文化の歴史の中で育まれたものに京料理がある。ひち口に京料 理と言っても、それぞれにルーツがあり有職(ゆうそく)料理、精進料理、懐石料 理、川魚料理、町方料理に大別できる。今回はこれらの京料理を紹介する。


 
美濃吉本店・竹茂楼  放送 4月17日(月)
大正時代の美濃吉 享保年間(1716〜1736)に美濃国大垣から仕官の道を求めて京にのぼっ た武士が、仕官が望み通りにかなわず三条大橋近くで腰掛け茶屋を開いたのが「美濃 吉」の始まりと言う。
 江戸時代後期に京都所司代から川魚生洲(いけす)料理8軒の内の1軒として認可 を受けた。そのころから調理直前まで生きていた川魚を主体にした料理を出す店とし て栄えた。
(写真は 大正時代の美濃吉)

鰻おこわ 川魚料理に工夫を凝らし、京野菜とうまくマッチさせた美濃吉の料理は評判にな った。京の夏の風物詩となっている鴨川の川床。美濃吉は大正末から昭和初めごろに かけ珍しい3層の川床を鴨川に出し、川風で涼を取りながらの川魚料理の味が人気を 呼んだようだ。
 調理場の近代化にいち早く着手したのも美濃吉だった。また、昭和初めに料理法の 解説や川魚料理普及のため「味覚時報」という新聞を月1回発行するなど、新しいこ とに積極的に取り組んだ。太平洋戦争中の食料難の時代に営業をやめていたが、戦 後、場所を東山区の粟田口に変え老舗「美濃吉」を再開した。
(写真は 鰻おこわ)


 
有職(ゆうそく)料理・萬亀楼  放送 4月18日(火)
生間流式包丁・小西将清 宮廷ゆかりの料理を有職料理と言う。有職料理法のひとつが式包丁。式包丁は平 安時代から宮中の節会など、めでたい日に行われる食の儀式。烏帽子、袴、狩衣姿 で、まな板の上の魚や鳥に直接手を触れずに包丁を使って料理し、めでたい形に盛り つける技を言う。その流儀のひとつが生間(いかま)流式包丁。
 生間流式包丁の雅な技を継承しているが「萬亀楼」の当主・小西重義氏で生間流2 9代家元。享保7年(1722)創業の造り酒屋の「萬屋」が、約60年後の天明の 飢饉の時、料理店に商売替えして「萬亀楼」を営むようになった。
(写真は 生間流式包丁・小西将清)

萬亀楼 現在の萬亀楼の料理は有職料理の伝統技法を踏まえ、現代風にアレンジした「萬 亀流有職料理」と言える。肉や洋風野菜は使わず、豊富な京野菜を中心に食材の持ち 味を生かし「まったり」した味付けが特徴。「まったり」とはおだやかに口になじむ 雅な味を言い、余韻を残す味とも言える。
 こうした京料理をゆっくり楽しむには、少人数で落ち着いた雰囲気の中でおだやか に味わうのがよい。京の風情にピッタリした料理とも言える。萬亀楼では本当の有職 料理の味わってもらうため、1席20人以下に抑えている。
(写真は 萬亀楼)


 
いもぼう・平野屋本家  放送 4月19日(水)
えび芋 江戸時代中ごろ平野屋の初代当主・平野権太夫が宮様の九州行幸にお供をした 際、唐芋(からいも)を持ち帰り、京で栽培したところ円山あたりの地味が合ったの か立派な芋に育った。形がエビに似ていたことから海老芋と呼ばれるようになった。
 この海老芋と宮中への献上品のボウダラを炊き合わせるとおいしい味になり、これ が京の名物料理「いもぼう」の始まりとなり、以来、一子相伝の料理として平野屋に 伝わっている。
(写真は えび芋)

いもぼう 厚く面取りした海老芋と、1週間から10日かけて柔らかく戻したボウダラを、 約30時間かけて炊き上げる。煮崩れしやすい芋と煮えにくいボウダラを普通は一緒 に煮ない。だが、ボウダラから出るにかわ質が海老芋を包み込み煮崩れを防ぎ、海老 芋から出るあくがボウダラを柔らかくするようだ。素材の性質をうまく作用させた先 人の知恵の料理法と言える。お互いに助け合う仲の良い夫婦に見立てて夫婦(めお と)炊きと呼んでいる。
 平野屋の料理にはこの「いもぼう」が必ずつく。吉川英治や川端康成らも「いもぼ う」を食し、その味を絶賛したと言う。
(写真は いもぼう)


 
瓢亭  放送 4月20日(木)
瓢亭 瓢亭は江戸・元禄時代に南禅寺への参詣者の腰掛け茶屋としてスタートしたのが 始まり。当時は白川へ抜ける街道と東海道の裏街道筋でもあったので旅人の往来が多 く、これらの人たちの休息所にもなった。今も店先に草鞋(わらじ)や床几(しょう ぎ)、茶壺などが置かれ、当時の面影をしのばせている。
 江戸・天保時代から懐石料理の高級店として知られた。江戸後期の儒学者・頼山陽 や明治の元勲・山県有朋らも訪れている。
(写真は 瓢亭)

瓢亭玉子 瓢亭の季節料理として夏の「朝がゆ」冬の「うずらがゆ」は、名物の半熟玉子の 「瓢亭玉子」と共に多くの人に親しまれている。
 コイが泳ぐ池と庭に面した茶室風の部屋で、落ち着いた雰囲気にひたりながら料理 を食するひとときは、世事を忘れる時でもある。華やかな中での食事が多いこのごろだ けに、飾りをそぎ落とした瓢亭の料理がいっそう際立つのかもしれない。近くの南禅 寺、疎水、無鄰菴、平安神宮、岡崎公園などの散策後、京ならではの瓢亭の食事で、 やすらぎのひと時が過ごせる。
(写真は 瓢亭玉子)


 
山ばな・平八茶屋  放送 4月21日(金)
平八茶屋 比叡山延暦寺とつながりが深く、第三世天台座主になった慈覚大師・円仁が平安 初期、茶屋で休息した時、湯と果物を差し上げたと伝えられている。一山の僧も都へ 行く途中、平八茶屋で名物のとろろ汁を食したと言う。
 現在の平八茶屋は当代から20代までさかのぼって当主の名が確認できる、戦国時 代の天正年間を創業期としている。清流の高野川のほとりにあり、緑の松ヶ崎山を望 む自然豊かな洛北の料亭として知られている。近世になって頼山陽、岩倉具視、夏目 漱石、徳富蘇峰ら著名人も訪れている。
(写真は 平八茶屋)

麦飯とろろ 平八茶屋の前を若狭街道が通っており小浜城主の脇本陣にもなった。当時から日 本海・若狭で捕れる魚などを材料にした若狭小鯛、ぐじ(アマダイ)の造りやサバず しなど出していた。今も日本海産のぐじの造りが名物料理になっている。
 また、麦飯にとろろをかけた麦飯とろろも平八茶屋の名物料理のひとつ。ほかに四 季折々の旬の素材が味わえる月替わり懐石などメニューは豊富。街道茶屋の風情が残 り、自然に恵まれた静かな雰囲気の中での京料理の味はまた格別のようだ。
(写真は 麦飯とろろ)


◇あ    し◇
美濃吉本店・竹茂楼
京阪三条駅下車徒歩15分。
市バス神宮道下車徒歩3分。
有職料理・萬亀楼市バス堀川下長者町下車徒歩2分。 
いもぼう・平野屋本家
市バス祇園下車5分。
京阪四条駅下車徒歩10分。 
瓢亭地下鉄蹴上下車徒歩5分。 
平八茶屋
叡山電鉄修学院駅下車徒歩5分。
京都バス平八前下車すぐ。
◇問い合わせ先◇
美濃吉本店・竹茂楼075−771−4185 
有職料理・萬亀楼075−441−5020 
いもぼう・平野屋本家075−525−0026 
瓢亭075−771−4116 
平八茶屋075−781−5008

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

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B・・・越前戦国ルート              
C・・・近江戦国ルート              
D・・・お伊勢まいりルート         
E・・・修験者秘境ルート           
F・・・高野・熊野詣ルート         
G・・・なにわ歴史ルート           

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