月〜金曜日 21時48分〜21時54分


三重・まちかど博物館  

 三重県はコレクションや伝統の技、手仕事などを個人の住宅、仕事場などで博物館長と語り合いながら見ることができる新しい形の博物館「まちかど博物館」の開設を個人や企業の協力で進めている。2000年3月現在で上野市、名張市など伊賀地区の7市町村で91館、津市など津地区の11市町村で64館、尾鷲市、熊野市など東紀州地区の8市町村で90館、合わせて245館がオープンしている。三重県はこのまちかど博物館事業をさらに推進し、三重県の文化事業のメインにしようとしている。今回は名張市の20館のうち6館、美杉村の6館すべて、青山町の5館のうち3館のまちかど博物館を紹介する。


 
名張市のまちかど博物館(1)  放送 5月28日(月)
宇流冨志禰神社・能狂言面コレクション 古くから名張市の鎮守神として地元の人たちの崇敬を集めているのが宇流冨志禰(うるふしね)神社。この神社に名張・藤堂家から寄贈されていた能、狂言面を展示公開しているのが「宇流冨志禰神社・能狂言面コレクション(中森孝栄館長・入館要予約)」。これらの能、狂言面は県の文化財に指定されている貴重なもので、桃山時代の「朝倉尉」、江戸時代の「増女」「橋姫」などの逸品がある。
 代々医術に携わってきた吉住家に残る貴重な資料を展示しているのが「吉住邸・自在庵(吉住完館長・入館要予約)」。自在庵は診察の際に使っていた馬の飼育小屋を改築したもので、江戸時代の人体解剖図を描いた長さ20mの絵巻や漢方薬を調合する薬研(やげん)と呼ばれる道具、医学文献などが展示されている。また趣味として収集された万華鏡50点も同時に展示され、幻想的な世界がのぞける。
(写真は 宇流冨志禰神社・能狂言面コレクション)

堤側庵・伊賀の組紐 伊賀地方の伝統産業のひとつに「伊賀の組紐」がある。組紐の歴史は古く、奈良時代にさかのぼると言われている。和服の帯締めや羽織の紐など使われ、江戸時代には甲冑(かっちゅう)や刀剣に使用され生産が増えた。江戸組紐の技術を習得した広沢徳三郎と言う伊賀出身の人物が、明治35年(1902)に郷里の伊賀に組紐の技術を伝えたのが伊賀組紐の始まりと言われている。
 「中内組紐工房・堤側庵(中内中館長・入館要予約)」は、邸内のギャラリー「堤側庵(ていそくあん)」に館長の作品を展示している。中内館長は従来の組紐スタイルにとらわれない創造的な作品に取り組んでいる組紐作家。絹糸が織りなす繊細で優美な色彩の組紐は日本の伝統美と言える。伊賀の町のあちこちで聞こえていた懐かしい組紐を打つ音を、このまちかど博物館で間近に聞くことができる。
(写真は 堤側庵・伊賀の組紐)


 
名張市のまちかど博物館(2)  放送 5月29日(火)
旭金時地酒博物館 良質の地下水が湧く名張は酒どころでもあり地酒の醸造元が多い。創業が江戸時代後期の天保年間と言われる北村酒造が開いているのが「旭金時地酒博物館(北村嘉孝館長・入館要予約)」。酒造りの道具を展示したり、酒造工程のスライドを上映して、酒造りを楽しみながら学べるように工夫している。地ビールの製造もしており、その説明を館長らから聞きながら試飲することもできる。
 同じく名張の酒造業・木屋正酒造が開いているのが「高砂地酒博物館(大西武夫館長・入館要予約)」で、酒造道具などの見学のほかに、名張についての幅広い話が大西館長から聞けるのも楽しみのひとつ。また冬季は実際に酒を作っている酒造工程を見学させてもらえる。
(写真は 旭金時地酒博物館)

はなびし庵 先祖が江戸時代末に町年寄りをしていたと言われる老舗のすみた酒店内の「はなびし庵(角田勝館長・木曜日休館)」で、江戸時代から明治時代に欠けての角田家に伝わる家宝が所せましと並んでいる。角田酒店の先々代が日本全国を旅して集めた明治時代初期の観光絵はがきが目を引く。奥座敷には大名火消し装束や江戸時代後期の津藩の儒学者・斉藤拙堂の筆による屏風、アラビア織なども展示してある。また館長夫妻の愛情あふれる口調の名張の町の語りもはなびし庵の名物になっている。
(写真は はなびし庵)


 
美杉村のまちかど博物館(1)  放送 5月30日(水)
岩ひば栽培館 周囲を山に囲まれた山村の美杉村にも2001年3月、6館のまちかど博物館がオープンした。山村の美杉村らしいまちかど博物館が「岩ひば栽培館(久穂正夫館長・入館要予約)」。館長が西日本の山地の岩の上に生える岩ひばを30年間、手塩にかけて育ててきた岩ひばの逸品がすらりと並んでいる。岩ひばは10年間に2〜3cmしか成長しないと言われ、栽培館にある50cmを超える岩ひばは圧巻で、栽培の苦労話は並々ならぬものがある。岩ひば愛好家には金銭には換えられないもので、久穂さんは大切に育てた岩ひばを絶対に売ろうとせず、わが子のように育てることに生きがいを感じている。
(写真は 岩ひば栽培館)

伊勢紙型工房・坂本館 染め物に使う型紙を素材に村の歴史や風景を切り絵にして展示しているのが「伊勢型紙工房・坂本館(坂本為一館長・入館要予約)」。館長は地元の人にも手ほどきしており、地元民の手先の器用さはなかなかのものだ。グループ制作の「東海道五十三次」は見事な出来栄えで来館者には好評だ。館長の制作テクニックとその話術は、集まる人々を切り絵の世界へ引き込んでしまう。
 「緑と水と歴史のふるさと美杉村でそば打ちを体験してみませんか」と言うのが「そば道場・清貧館(国嶋泰彦館長・入館要予約)。定年退職後にそばの道に打ち込んでいる館長の思いを聞き、そば打ちを体験し、自らが打ったそばの素朴な味を楽しむのは最高のグルメかもしれない。
(写真は 伊勢紙型工房・坂本館)


 
美杉村のまちかど博物館(2)  放送 5月31日(木)
ロンディフラワー博物館 「陶素人(とうしろう)館(登四郎館長・入館要予約)」は、郵便局員の仕事の合間をぬって焼き物に自己表現をめざす作陶の素人と館長の名前をもじってつけたのが館の名前。
登さんは「人間が本来、持っている素朴な生命力を焼き物に表現したい」と作陶に打ち込み、その作品を展示している。
 ロンディ(布生地)を使って四季の花や盆栽の松などを再現した作品を並べているのが「ロンディフラワー博物館(前川春夫館長・入館要予約)」。ロンディフラワーの美しさに引かれて館長の指導を受けている人も多い。美しいものを作る喜びを味わうことができる博物館でもある。
(写真は ロンディフラワー博物館)

野村青空工房 ヨシズがけの作業場が「野村青空工房(野村朝雄館長・入館要予約)」は、木材の伐採が本業の館長が、木や木の根の暖かみを生かして表情豊かな動物を彫る。イメージのわいた動物をノミを使って彫っており、特に小動物が得意で、すでにえとの十二支は完成している。大型の動物もひとつの木から彫りあげるが、折れないように割れないようにと細心の注意を払いながらのノミさばきは見事なものだ。
(写真は 野村青空工房)


 
青山町のまちかど博物館  放送 6月1日(金)
お菓子史博物館・橋本瑞祥堂 伊勢へ通じる初瀬街道の阿保の宿、青山町には5館のまちかど博物館があるが、その中から3館を紹介する。
 この街道筋の老舗の和菓子屋の「お菓子史博物館・橋本瑞祥堂(橋本博志館長・入館毎日自由)」は、昔ながらの手作業を守り続けて和菓子作りをしている店主の橋本館長が開いたものだ。現在も使っている和菓子作りの木型などを見学しながら、製造工程を分かりやすく解説してもらえる。大正時代のレジスターや古い銅鏡、六歌仙の画板なども展示されており、独特の雰囲気が漂っている。店の外観も往時の街道の面影が残る町並みにマッチしている。
(写真は お菓子史博物館・橋本瑞祥堂)

参宮街道旅籠博物館・たわらや 伊勢参りの講が定宿とした「たわらや」が、大切に保存していた「参宮講看板」を一堂に集めて展示しているのが「参宮街道旅籠博物館・たわらや(富岡昭館長・入館要予約)」。
「せめて一生に一度はお伊勢参りを」と言うのが江戸時代からの庶民の願望だった。江戸時代には“おかげ参り”と呼ばれる伊勢参りのブームも起こり、伊勢参りの各街道筋は大変にぎわった。伊勢参りの参宮講の看板もそれぞれの時代の風潮や世相を表したものが多く、現代のロゴマークのようなもの。これだけの参宮講看板を一堂に集めているのは全国的にも珍しいと言われている。
 宿場町・阿保の老舗の造り酒屋・重藤酒造場内に開館したのが「青山地酒博物館・若戎吟醸館(重藤久紘館長・入館要予約)」。酒造りの工程がビデオでわかりやすく解説されている「吟醸館」では、昔から使われていた酒造りの道具類も展示されている。12月を除く11月から3月までの冬季には、実際に酒を造っているところを直接見学することができる。地酒の試飲、販売コーナーもあり、旧街道筋の酒を目と舌で楽しめる。
(写真は 参宮街道旅籠博物館・たわらや)


◇あ    し◇
宇流冨志禰神社近鉄大阪線名張駅下車 徒歩5分。 
吉住邸・自在庵近鉄大阪線名張駅から
 バス下比奈知下車 徒歩5分。 
中内組紐工房・堤側庵近鉄大阪線美旗駅下車 徒歩10分。 
旭金時地酒博物館近鉄大阪線名張駅下車 徒歩10分。 
高砂地酒博物館近鉄大阪線名張駅下車 徒歩10分。 
はなびし庵近鉄大阪線名張駅下車 徒歩8分。 
伊勢型紙工房・坂本館JR名松線伊勢奥津駅下車 徒歩20分。 
岩ひば栽培館近鉄大阪線名張駅から
 バス下登下車 徒歩3分。 
そば道場・清貧館近鉄大阪線名張駅から
 バス上太郎生下車 徒歩10分。 
陶素人館JR名松線八知駅車 徒歩15分。  
ロンディフラワー博物館JR名松線伊勢奥津駅下車 徒歩5分。 
野村青空工房JR名松線伊勢奥津駅から
 バス川上下車 徒歩7分。 
お菓子史博物館・橋本瑞祥堂近鉄大阪線青山町駅下車 徒歩8分。 
参宮街道旅籠博物館・たわらや近鉄大阪線青山町駅下車 徒歩5分。 
青山地酒博物館・若戎吟醸館近鉄大阪線青山町駅下車 徒歩5分。 
◇問い合わせ先◇
伊賀まちかど博物館推進委員会
 (三重県生活部文化課内)
059−224−2637
名張市教育委員会生涯学習課0595−63−2111 
青山町役場産業課0595−52−3220 
美杉村役場企画財政課059−272−8081 
宇流冨志禰神社
 能狂言面コレクション
0595−63−0486
吉住邸・自在庵0595−68−1110 
中内組紐工房・堤側庵0595−65−2081 
旭金時地酒博物館(北村酒造)0595−63−0010 
高砂地酒博物館(木屋正酒造)0595−63−0061 
はなびし庵(すみた酒店)0595−63−0032 
伊勢型紙工房・坂本館059−274−0394 
岩ひば栽培館059−273−0800 
そば道場・清貧館059−273−0905 
陶素人館059−272−0084 
ロンディフラワー博物館059−274−1811 
野村青空工房059−274−1060 
お菓子史博物館・橋本瑞祥堂0595−52−0051 
参宮街道旅籠博物館・たわらや0595−52−0013 
青山地酒博物館・
 若戎吟醸館(重藤酒造場)
0595−52−1153

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

(1) ・・・ひょうごシンボルルート   
(2)・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
(3)・・・越前戦国ルート              
(4)・・・近江戦国ルート              
(5)・・・お伊勢まいりルート         
(6)・・・修験者秘境ルート           
(7)・・・高野・熊野詣ルート         
(8)・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

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