月〜金曜日 21時48分〜21時54分


京の涼 

 暑い京の夏。この夏を涼感を巧みに生かして過ごそうとした先人たちの生活の知 恵があちこちに見られる。それは雅な涼であり、自然を巧みに生かした涼でもある。 平安時代から千数百年が過ぎた今も、京の涼は脈々と受け継がれている。


 
貴船の川床  放送 7月17日(月)
貴船神社 京の奥座敷と言われる貴船。うっそうと木が茂り、木の根の山道が多いことから 「木生根(きぶね)」とも言った。山の冷気が漂う中に貴船神社がある。平安京遷都 後、都の水源の鴨川の源流にあたる貴船神社は、水を司る神を祭っている。
 奥宮にある船形石と呼ばれる石積みは、水の神が難波の津から淀川、鴨川、貴船川を上ってきた船 を、人目から隠すため石で覆ったと伝えられている。この石は航海安全にご利益があ ると、船乗りたちが持ち帰りお守りにしている。
(写真は 貴船神社)

床料理 鴨川の源流・貴船川に渡された川床で賞味する川床料理の味は暑い夏の暑気払い に打ってつけ。アユやハモ、山菜、そうめん料理が、見た目にも涼しい器に盛られて いる。山と川面の冷気が昼間でも夏を忘れさせるほどだ。すっかり貴船の夏の風物詩 となった貴船の川床は、家族連れやグループで気軽に利用でき、冷気の中で味わう料 理の味は、暑さにうだる街の人たちには楽園とも言える。
(写真は 床料理)


 
町家の夏  放送 7月18日(火)
坪庭 盆地の京都の夏は暑い。この暑さを少しでも涼しく過ごそうと、京都の市街地の 町家では昔から住まいの中の調度品に様々な工夫を凝らしてきた。
 京都の町家は昔、税が家の間口の広さに対してかかったことから、間口の狭いウナギの寝床のような建物が多い。住宅の奥には坪庭を設けて緑を配し、手水鉢を置き、打ち水をしてそこを吹き抜ける風 に涼を求めた。室内のふすまや障子をはずして竹のすだれやつい立で風の通りをよく しており、通り抜ける風に鳴る風鈴の音も涼やかだ。
(写真は 坪庭)

町屋 すだれは万葉の昔から利用されていたが、京では大宮人が住んだ寝殿造りの部屋 の仕切りとして使われた。御殿のすだれは四方に絹地のへりをつけ、巻き上げたとき 金具にかける房ひもがついており、御簾(みす)と呼ばれ、雅で洗練されたものだっ た。
 今も京都にはすだれをつくる業者がある。ほとんどが手作業のため1日に2枚を編 み上げるのがやっとだと言う。室内で使う「京すだれ」は、伝統の技に支えられた高 級すだれとして他では真似のできない風合いを持っている。
(写真は 町屋)


 
夏の京のきもの  放送 7月19日(水)
綴れ織りを織る 京を代表するファッションの和服にも夏をしのぐ様々な工夫が凝らされている。 西陣で織りあげられる特色ある織物に四季の風物などを織り込んだつづれ織りがある。 模様の原図を上塗りするように、横糸に様々な色の糸を使って織りあげる。つづれ織り の中でも最高級品は、職人の爪をノコギリの歯のようにギザギザにして、横糸を丹念 にかき寄せる爪掻(つめかき)本つづれ織り。根気のいる爪先の技が、織物に生命の息 吹を与える。
 この爪織りは複雑な文様だと1日に1cmほどしか織ることができない。機械で織る つづれ織りもあるが、高級品はやはり爪織り。江戸時代から「1寸(3.3cm)1両」 と言われたほどの高価な織物で、主に帯地や袋物、壁掛け、ネクタイなどに使われて いる。
(写真は 綴れ織りを織る)

綴れ織りの着物 つづれ織りは古代のエジプト、中国、インカの時代からある技法。日本へはシルク ロードを通り奈良時代に伝えられ、奈良の正倉院の御物や法隆寺の宝物の中にある。 中将姫伝説で有名な国宝の「当麻曼荼羅(たいままんだら)」もこのつづれ織り。
 日本で再び登場するのが江戸時代中期の18世紀末で、京都・西陣で再興された。 桃山時代に南蛮船がもたらしたヨーロッパのつづれ織りの細微な文様の美しさに、西陣 の職人たちが創作意欲を刺激されたと言われている。
(写真は 綴れ織りの着物)


 
涼やかな風  放送 7月20日(木)
扇子の絵を描く うちわは飛鳥時代の6〜7世紀ごろに中国から渡来したものだが、扇は平安時代初 期に京で創始されたと言われている。初めはヒノキの薄板をとじて作ったもので、桧 扇(ひおうぎ)と言い現在の扇子の原形となった。また、コウモリが羽を広げた形か ら思いついたとの説もあり、「蝙蝠扇(かわほりおうぎ)」の呼び名があるのはその 説を裏付けている。
 最近は京扇子の優れた上絵などに工芸品としての人気が高まり、涼を取る道具より 室内装飾やアクセサリーとして使われるようになった。海外旅行の際の外国人への土 産品としても評判がよい。
(写真は 扇子の絵を描く)

京扇子 扇子がヒノキ板から竹と紙へと変化し、朝廷の貴人や貴族らのアクセサリーや舞 扇、仕舞扇など伝統芸能の小道具として発展した。中元用に配られる涼を取るための 扇子として、量産されるようになったのは大正時代初めと言う。
 京の伝統産業の中でも、扇子は仕事が分業化されている典型的な産業と言える。扇 子の骨を作る「扇骨」から始まり紙又は布の部分では「上絵」「箔(はく)押し」 「木版ずり」「折り」「仕上げ」の6部門に分かれている。それぞれの工程ごとに職 人たちが1軒の店を構え、1本の扇子はこれらの職人の手を渡り歩いて生まれる。
(写真は 京扇子)


 
鴨川の夕涼み  放送 7月21日(金)
鱧(はも)寿司 京の夏を代表する光景は祇園祭と鴨川の納涼床(ゆか)だろう。5月から9月まで 二条から五条にかけての鴨川右岸に料亭や旅館の床が並ぶ。京料理に舌鼓を打ちなが ら飲むビールの味は格別で、一日の疲れをいやしてくれる。
 「コンチキチン」と祇園ばやしの音が聞こえる京の夏に欠かせないのが鱧(はも) 料理。鱧落とし、鱧しゃぶ、鱧焼き、鱧すしなど板前が腕をふるい、様々な料理として登場する。この鱧 料理を納涼床で食べないと夏を迎えた気がしないと言う京都や関西の食通が多い。
(写真は 鱧(はも)寿司)

梅むらの床 鴨川の床の歴史は約400年ほど昔にさかのぼる。豊臣時代に裕福な商人が、五 条あたりの鴨川の浅瀬に床几(しょうぎ)を置き、夏の遠来の客を涼を取りながらも てなしたのが始まりと言う。
 その後、料理店などが河原に床几をおいて商売をするようになったが、鴨川の護岸 工事などが進められ、現在のように料理店に接続した高い床になった。昔はぜいたく な納涼床だったが、現在は手ごろな値段で気軽に納涼床にあがれるので、鴨川の涼風 に吹かれながら京料理を楽しむ人たちが増えてきた。
(写真は 梅むらの床)


◇あ    し◇
貴船神社叡山電鉄貴船口駅からバスで貴船下車、
    又は貴船口駅から徒歩30分。
◇問い合わせ先◇
京都市観光案内所075−343−6655 
貴船神社075−741−2016 
西陣織会館075−451−9231 
鴨川納涼床事務局075−361−9273 

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B・・・越前戦国ルート              
C・・・近江戦国ルート              
D・・・お伊勢まいりルート         
E・・・修験者秘境ルート           
F・・・高野・熊野詣ルート         
G・・・なにわ歴史ルート           

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