月〜金曜日 18時54分〜19時00分


古都・奈良の夏 

 いま、古都・奈良の夏の夜が楽しい。8月6日から15日まで奈良公園一帯を舞台に繰り広げられている「なら燈花会(とうかえ)」が、ほのかなろうそくの灯りで幽玄の世界を現出している。また東大寺や興福寺、薬師寺、平城宮朱雀門など、11ヵ所の堂塔や名建築物がライトアップされ夜空に浮かんでいる。夕涼みがてらにそぞろ歩きを楽しむと、昼間とは異なる古都・奈良の顔がかいま見られる。


 
興福寺 放送 8月11日(月)
 猿沢池から仏門に入るための52の階段を表していると言われる、通称「五十二段」の石段を上ると興福寺の境内へ入る。燈花会(とうかえ)の期間中は猿沢池の周囲350mにろうそくの灯りが並び、猿沢池の水面にライトアップされた興福寺五重塔が映る。この景観は燈花会ならではのもので、絵画のような夜景と言える。
 興福寺へ上る「五十二段」の両脇にもろうそくの灯りが並び、人びとを燈花会の世界、仏の世界へといざなうように炎が揺れている。猿沢池、五十二段、興福寺の五重塔の夜景に見とれ、しばし夏の暑さを忘れさせてくれる。

興福寺

(写真は 興福寺)

東金堂(国宝)

 藤原氏の氏寺だった興福寺は、天智天皇8年(669)中臣鎌足(藤原鎌足)の夫人・鏡女王(かがみのおおきみ)が、夫の病気平癒を祈って建立した山城国の山階(やましな)寺が起源とされている。
 壬申の乱後、都は近江から再び飛鳥に移り、山階寺も飛鳥の厩坂(うまやさか)に移って厩坂寺となった。さらに和銅3年(710)都が藤原京から平城京に遷都したのに合わせて、鎌足の子・藤原不比等が、厩坂寺を現在地に移して寺の名も興福寺とし、以後藤原氏の氏寺として隆盛を極めた。

(写真は 東金堂(国宝))

 塀がないお寺・興福寺は、誰もがいつでも気軽に境内へ入ることができ、国宝の五重塔や東金堂(とうこんどう)も非常に親しみ深いものに感じられる。
 東金堂は即位したばかりの聖武天皇が、神亀3年(726)元正太上天皇の病気平癒を祈願して建立した。その後、幾度も火災や兵火で焼失し、現在の建物は室町時代の応永22年(1415)に再建されたもので、堂内には本尊の銅造薬師如来座像(国・重文)が安置されている。天平2年(730)光明皇后の発願で東金堂の南隣に五重塔が建立された。当時、五重塔と東金堂とは回廊で囲まれており、夫妻和合の聖域とも言われていた。東金堂は2003年8月いっぱい午後7時30分まで夜間拝観ができる。

薬師如来坐像(重文)

(写真は 薬師如来坐像(重文))


 
東大寺  放送 8月12日(火)
 平成11年(1999)から始まり、今年で5年目を迎えた「なら燈火会(とうかえ)」は、古都・奈良の夏のイベントとしてすっかり定着してきた。この「なら燈火会」のろうそくの灯りに誘われて、奈良の夏の夜のひとときを楽しむ観光客や地元の人たちが多い。「なら燈火会」で一躍注目されるようになったのが、4000本のろうそくの炎が、何やらこの世のものならぬような光景を現出する「浮雲園地」。このほかに「猿沢池と五十二段」「浮見堂と鷺池」「浅茅ヶ原」「奈良国立博物館前」の5ヵ所は例年通りで、5周年記念会場として今年は「東大寺鏡池」「興福寺参道」「春日大社若宮神社(14、15日のみ)」が加わり、8会場で灯りの花が咲く。この「なら燈火会」は8月6日から15日まで午後7時から10時までろうそくがともされる。。

東大寺

(写真は 東大寺)

南大門(国宝)

 「なら燈火会」のろうそくの灯りがゆらぐ浮雲園地を右手に見て、夕刻の東大寺参道を進むとライトアップされた東大寺南大門(国宝)が眼前に迫ってくる。古都・奈良の顔でもある東大寺は「奈良・あかりのヒストリーロード」のひとつとして、10月31日まで南大門、中門(国・重文)、大仏殿(国宝)がライトアップされる。
 ライトアップされた南大門の両脇を守る仁王像(国宝)も、夜の参詣者をいつもと変わらぬ「あ」「うん」の表情で迎えてくれる。しかし夜の仁王さんはちょっとばかり怖いようにも見える。南大門をくぐり参道を進むと朱色と白の中門(国・重文)が夜の幻想的な美しさを鏡池に映している。

(写真は 南大門(国宝))

 中門をくぐると木造建築として世界最大の大仏殿がその威容を示している。大仏殿、そしてその中に安置されている大仏さまは、昼間に訪れても夜に訪れても日本人の心に安らぎの気持ちを与えてくれるように思える。
 8月15日は大仏殿へ続く中庭の石畳の上が約2000基の灯籠で埋めつくされる「東大寺万燈供養会」がある。大仏さまに燈火を供え、もろもろの霊を供養するのがこの万燈供養会。この日の夜は大仏さまの顔が大仏殿の外から拝める。大仏殿正面の窓が開かれ、その窓に夜の大仏さまの顔がくっきりと浮かぶ。その大仏さまの顔は幻想的とも、荘厳的とも、威厳的とも言える雰囲気である。東大寺の代表的な行事の万燈供養会で先祖を供養し、大仏殿の窓から大仏さまを拝観してお願いごとをすれば霊験があるのでは…。

大仏殿(国宝)

(写真は 大仏殿(国宝))


 
ならまち格子の家  放送 8月13日(水)
 猿沢池の南の奈良町は江戸、明治時代の面影を色濃く残す町として、近年、特に人気の高い観光スポットとなっている。奈良町は行政区画としての町名ではなく、一般に猿沢池の南一帯、又は元興寺境内を中心に2km四方の古い街並みを残す地域をこのように呼んでいる。
 奈良町一帯はかつては南都七大寺のひとつ元興寺の門前町として栄えたが、都が平安京へ遷都して元興寺は衰微した。しかし奈良町の町衆はその才覚を発揮して商業の伝統を守り続け、伝統ある町家を今日へ伝え、残してくれた。今もその町衆の心意気が受け継がれ、古い旧家での生活が営まれている。

ならまち 格子の家

(写真は ならまち 格子の家)

中庭

 奈良町の代表的な町家を建設して再現したのが「ならまち格子の家」である。奈良町の町屋は間口が狭く、奥行きが深いいわゆる・「ウナギの寝床」・と言われる様式。
「ならまち格子の家」もその例にもれず「みせの間」「中の間」「奥の間」「中庭」「離れ」「蔵」が一列に並んでいる。
 通りに面した所には奈良格子がはめられている。この格子は外から家の中が見えない目隠しの役目、中からは外がよく見えるハーフミラーの効果がある。音や風をよく通し、外で遊ぶ子供たちを格子越しに見守ることもできる。階段の下の空間を利用した箱階段、土間の採光をよくする明かり取り窓、ひさしの下には通風をよくする虫籠窓(むしこまど)、屋根には煙り抜きなど、暮らしへの工夫があちこちに見られる建物である。

(写真は 中庭)

 奈良町には「ならまち格子の家」のような町家が多く残っている。その代表的なのが江戸時代中期に建てられ、国の重要文化財に指定されている藤岡家住宅である。
 このほか奈良町には観光スポットがいっぱいある。奈良町の伝統と文化を知る上で貴重な資料の仏像、書画、商家の看板、民具など7000点を収蔵し展示している奈良町資料館。日時計や天体観測器、カラフルな暦など時の歴史がわかる時の資料館。
古代ペルシャの美術品を展示している奈良オリエント館などがある。奈良町の商店街には伝統の工芸品や民芸品を売る店もあり、民家の軒先につるされている庚申(こうしん)信仰から生まれた、赤いぬいぐるみの「身代わり猿」も売っている。

箱階段

(写真は 箱階段)


 
仏教美術資料研究センター  放送 8月14日(木)
 春日大社一の鳥居から参道を少し進むと、左手北側に和風建築にイスラム的な装飾など洋風を加味した独特の魅力を持つ建物が望める。これは奈良国立博物館の仏教美術資料研究センターで、元は奈良県物産陳列所として明治35年(1902)に建てられた。
 仏教美術資料研究センターを所管している奈良国立博物館は、明治28年(1895)帝国奈良博物館として開館した。ネオ・バロック形式の旧本館(国・重文)は、レンガ造りで外装に花崗岩や青石を用いた純洋風の建物で、当時の奈良では初めての洋風建築物だった。

奈良国立博物館本館

(写真は 奈良国立博物館本館)

仏教美術資料研究センター

 仏教美術資料研究センターの前身、奈良県物産陳列所は、設計段階で「西洋建築は古都の景観にふさわしくない」との論争が起こった。そこで洋風を加味した木造瓦ぶき1階建とし、正面に唐破風の車寄せをつけて宇治の平等院鳳凰堂になぞらえた形に落ち着いたと言う経緯があり、周囲の奈良公園の景観との調和が図られている。
 奈良県物産陳列所は後に、奈良国立文化財研究所の庁舎として使われていたが、昭和58年(1983)奈良国立博物館へ移管された。建物は改造工事が行われていたため、奈良国立博物館へ移管後、中央ホールなど内部の保存修理を行い、建設当時に近いものに復旧した。

(写真は 仏教美術資料研究センター)

 仏教美術資料研究センターは仏教美術に関する調査研究、資料の作成、収集、整理、保管及び公開の業務を行っている。センターには仏教美術に関する図書、刊行物、写真、模写、模本、拓本、複製品、仏教美術の調書、旧美術院の修理記録など膨大な資料が保管されている。仏教美術の図書だけでも和書29000冊、漢書3800冊、洋書800冊があり、ほかに学術雑誌、大学、博物館、美術館の研究論文集、各種展覧会目録などが保管されている。センターは毎週木、金曜日に一般公開されている。
 夏の間はこのユニークなデザインの建物がライトアップされ、奈良公園の中でエキゾチックな雰囲気を漂わせ、公園を散策する人たちの目を楽しませている。

ライトアップ<br>(仏教美術資料研究センター)

(写真は ライトアップ
(仏教美術資料研究センター))


 
浮見堂  放送 8月15日(金)
 春日大社の一の鳥居をくぐって右手、浅茅ヶ原の一角の片岡梅林内に建つ、宝形造りの茅ぶき屋根に大きな丸い窓のある木造建築は円窓(まるまど)亭(国・重文)。
鎌倉時代の建物で元は春日大社の書庫で板倉と呼んでいた。
 明治時代の初め板壁に円形の窓をくりぬき、遊園地の施設として開放した。このようなデザインの建物はほかにはあまり例がなく、高床式のこの建物がライトアップされると、まるで天空から降り立った建物のような印象を与える。

一ノ鳥居

(写真は 一ノ鳥居)

円窓亭

 この浅茅ヶ原は奈良時代、万葉人と言われた貴族たちが野遊びを楽しんだ所で、奈良公園でもこのあたりは観光客も少なく、反対に鹿の数がふえる。木々のたたずまいの趣も変わり、静かな気分が味わえる この円窓亭からさらに南へ坂を下がると、鷺池の水面に高円山を背景にした六角形の浮見堂が優美な姿を見せる。大正5年(1916)に作られた浮見堂は、平成6年(1994)新しく作り替えられた。鏡のような鷺池に映る浮見堂は、見る人によっていろいろな想像力を働かせる姿である。

(写真は 円窓亭)

 なら燈花会(とうかえ)の期間中は鷺池とその周囲、浮見堂へ通じる蓬莱橋の上にろうそくの灯りがともる。池には舳先(へさき)に灯りをともしたボートが浮かび、ライトアップされた浮見堂を中心に鷺池全体が灯りの舞台となり、鏡のような水面に映るその姿の美しさも倍加する。
 8月15日の鷺池周辺は、高円山大文字送り火を見る最高の場所で、燈火会の灯りと大文字の炎が同時に楽しめる年に一度の灯りの祭典の舞台でもある。

浮見堂

(写真は 浮見堂)


◇あ    し◇
興福寺近鉄奈良線奈良駅下車徒歩5分。JR関西線奈良駅下車
徒歩10分。
東大寺JR関西線奈良駅、近鉄奈良線奈良駅から市内循環バスで
大仏殿・春日大社前下車。
近鉄奈良線奈良駅下車徒歩15分。JR関西線奈良駅下車
徒歩20分。
ならまち格子の家近鉄奈良線奈良駅、JR関西線奈良駅下車徒歩20分。 
JR関西線奈良駅、近鉄奈良線奈良駅から市内循環バスで
北京終町又は田中町下車徒歩2分。
仏教美術資料研究センター近鉄奈良線奈良駅下車徒歩10分。JR関西線奈良駅下車
徒歩15分。
JR関西線奈良駅、近鉄奈良線奈良駅から市内循環バスで
大仏殿・春日大社前下車。
浮見堂近鉄奈良線奈良駅下車徒歩20分、JR関西線奈良駅下車
徒歩25分。
JR関西線奈良駅、近鉄奈良線奈良駅から市内循環バスで
春日大社表参道下車徒歩5分。
◇問い合わせ先◇
奈良市役所観光課0742−34−1111 
奈良県庁文化観光課0742−22−1101 
興福寺0742−22−7755 
東大寺0742−22−5511 
ならまち格子の家0742−23−4820 
仏教美術資料研究センター0742−22−3331

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

(1)・・・ひょうごシンボルルート   
(2)・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
(3)・・・越前戦国ルート              
(4)・・・近江戦国ルート              
(5)・・・お伊勢まいりルート         
(6)・・・修験者秘境ルート           
(7)・・・高野・熊野詣ルート         
(8)・・・なにわ歴史ルート           

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  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
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