月〜金曜日 21時48分〜21時54分


伊賀まちかど博物館 

 新しいスタイルの博物館・まちかど博物館が三重県伊賀地区7市町村に2000 年3月に誕生した。91館のまちかど博物館は、個人のコレクションや伝統の技、手仕事などを仕事場や個人の住宅の中で見せ、館長の語りが加わるところに魅力があり、展示物や製作工程が身近に感じられる。
 入館料はいずれも無料で、館長のボランティア精神に負うところが多い。観光客向けの一般の博物館とは違い、個人宅や仕事場に入り込むので、プライバシー侵害や仕事の邪魔をしないなどのマナーが見学者に求められる。また開館日、開館時間の確認や予約が必要な博物館もある。いきなり訪れても見学できないケースがあり、事前の問い合わせが必要。
 伊賀まちかど博物館は上野市29館、名張市20館、青山町5館、阿山町11館、伊賀町14館、大山田村9館、島ケ原村3館がオープンしており、今回は代表的なまちかど博物館15館を紹介する。他の博物館についての問い合わせは各市役所、町村役場のまちかど博物館係へ。各市町村にはまちかど博物館案内マップなどが用意されている。


 
上野市のまちかど博物館  放送 9月18日(月)
シンガーのミシン 伊賀上野城の城下町、俳聖・松尾芭蕉生誕の地、伊賀流忍術の里と知られる上野市は伊賀地方の中心地。観光スポットが多い中で、ユニークなまちかど博物館に人気が集まりつつある。
 私的民俗博物館(松生治館長、要予約)は、館長の祖父の時代からのコレクションを展示している。明治時代にアメリカから輸入された「シンガーのハンドミシン」や冬の芝居見物の必需品「携帯用の火鉢」など珍しい品がいっぱい。松生館長は伊賀上野の語り部としても活躍中で、松生さんの話を聞くだけでも楽しく、時間の経つのも忘れてしまうほどだ。
(写真は シンガーのミシン)

鎌田製菓のかたやき 昔ながらのかたやき屋さん・鎌田製菓店(鎌田順蔵館長、午前8時〜正午、午後2時30分〜5時まで毎日開館、不定期の休館日があり要確認)は、忍者の携帯食が原型と言われる「かたやき」を作っている。小麦粉と砂糖を練り合わせ、円く平に伸ばしながら1枚、1枚時間をかけて焼き上げる。堅いのが特徴で歯の弱い人には敬遠されがちだが、口に含んでいれば柔らかくなり香ばしさが味わえる。店では焼き立てのかたやきが味わえる。
 錦絵館・野駈(のがけ)(米井淳文館長、土、日曜日と7月20日〜8月31日の毎日、午前8時〜午後4時開館、要予約)は、江戸時代に活躍した役者絵の歌川国貞(初代)や武者絵の歌川国芳、風景画の安藤広重から明治浮世絵の三傑・豊原国周、月岡芳年、小林清親までを中心に約50人の作品、約200点を展示している。浮世絵(錦絵)は絵師、彫師、摺(すり)師の共同職人芸によって完成する芸術品で、その繊細な表現力が鑑賞できる。
(写真は 鎌田製菓のかたやき)


 
名張市のまちかど博物館  放送 9月19日(火)
酒仙蔵博物館・瀧自慢の仕込み蔵 名張市では伊賀盆地で栽培される酒米の山田錦と赤目四十八滝の伏流水で美味しい地酒が生まれている。
 瀧自慢酒仙蔵博物館(杉本和三館長、午前9時〜午後4時開館、月曜日休館、1週間以上前に要予約)は「酒をこよなく愛する人はどうぞ」をモットーに、酒造期には酒造りの工程見学、それ以外の時期は仕込み蔵の見学ができる。酒造道具の展示やビデオによる酒造工程の上映、酒の試飲もできる。予約の際に酒をいかに愛しているかを伝えてほしいと杉本館長は希望している。
(写真は 酒仙蔵博物館・瀧自慢の仕込み蔵)

盃洗・柿盃洗堂 とつくり館(中森俊明館長、午前11時〜午後5時開館、木曜日休館)は、古美術商を営む中森館長が趣味として集めた明治以降の信楽焼の燗徳利(かんとっくり)約200点を展示している。燗徳利とは酒を1合、2合とまとめて燗をする大型徳利のことで、昔はどこの家庭でも使われていたが最近はほとんど見られなくなった。「燗徳利の収集にかけては日本一」との館長の自負が込められた博物館。
 柿盃洗堂(門脇正司館長、毎月第3日曜日とその前日の土曜日の午前10時〜午後5時開館)は、伊万里焼、九谷焼を中心に江戸時代以降の盃洗約60点を展示している。盃洗は酒席で盃を洗うための水を入れておく器のことで、門脇さんは「幼いころ実家の盃洗を見てその魅力に引かれた」と言っている。現代では盃洗よりも果物入れや花瓶として使われていることが多いと言う。海外でも同じような使われ方をしているそうだ。
(写真は 盃洗・柿盃洗堂)


 
阿山町のまちかど博物館  放送 9月20日(水)
伊賀焼博物館・長谷園の登り窯 信楽焼の滋賀県信楽町に近い阿山町西部の丸柱地区は、天平宝字年間(757〜765)に始まったと伝えられる伊賀焼の産地として知られ、今も窯元、焼物店が多 い。
 伊賀焼博物館・長谷園(長谷優磁館長、午前9時〜午後5時毎日開館)は、天保3年(1832)創業の老舗で、創業当時の状態で保存されている登り窯は必見の価値がある。伊賀焼の伝統を引き継いでいる陶工たちの作陶作業が見学でき、展示室では多くの登り窯作品が展示、即売されている。希望者には陶芸体験もできる。
(写真は 伊賀焼博物館・長谷園の登り窯)

伊賀焼縁側博物館・伝法窯の伊賀焼 同じく丸柱地区にある伊賀焼縁側博物館・伝法窯(今岡謙次館長、午前9時〜午後3時毎日開館)は、伊賀焼陶工として45年の経験を持つ館長の職人技が見学できる。おだやかな館長の人柄そのものを現した焼物が自宅縁側に並べられており、和やかで親しみやすい家庭的な雰囲気の中で作品が鑑賞できる。10人ほどの少人数の有料陶芸教室も予約制で開いている。
 木村和楽器博物館(木村俊美館長、午前8時30分〜午後5時毎日開館、但し日曜日のみ要予約)は、日本の代表的な弦楽器の三味線、琴を中心に尺八などの和楽器を展示している。最近は機械作りの三味線、琴が多くなっているが、木村和楽器製作所では2週間を費やし手作りで三味線を作っている。この製作工程が見学でき、簡単な三味線の奏法の手ほどきも受けられる。
(写真は 伊賀焼縁側博物館・伝法窯の伊賀焼)


 
伊賀町のまちかど博物館  放送 9月21日(木)
糸紡ぎ作業、織物博物館 古くから拓けた農村地帯の伊賀町だけに、まちかど博物館にもそれらをしのばせるものがある。
 糸と織物博物館(山本恭子館長、月、水、金、日曜日開館、要予約)は、誰もが身につける衣服の布の原点を探っている。1枚の布は、1本の糸、その糸は綿花、その種子や蚕の吐き出す絹糸、1粒の蚕の卵にさかのぼる。女性館長・山本さんは畑で自ら育てた綿から糸を紡ぎ、藍で染めて布に織りあげている。卵からふ化させた蚕を育て、まゆから紡いで絹糸を作る。館長からこれらの過程の説明を聞きながら、展示された作品の鑑賞ができる。
(写真は 糸紡ぎ作業、織物博物館)

ひょうたんの里・奥出のひょうたん畑 中島つる細工博物館(中島吉男館長、毎日開館、要予約)は、つるの持つ素朴で自然な風合いが好まれ、つる細工品がもてはやされるようになったつる細工品を展示している。中島館長は定年退職後に山仕事で入った自分の山で見つけた1本のつるでかごを編んだのがきっかけとなり、今では200点以上の作品を作り、展示している。つるを使ったランプシェードやオブジェなどにも製作範囲を広げている。
 ひょうたんの里・奥出(奥出末治館長、毎日開館)は、館長自ら育てたひょうたんに絵付けした作品約80点が展示されている。奥出館長はひょうたんの作品作り錬士3段の腕前。この段位取得のきっかけとなった網目模様のひょうたんは、複雑な曲線を描くひょうたんに鮮やかな網目模様が浮かび出る芸術的作品。ひょうたん作りにかけては第一人者の館長に秘伝の製法を聞き出せれば…。
(写真は ひょうたんの里・奥出のひょうたん畑)


 
大山田村のまちかど博物館  放送 9月22日(金)
伊賀ろくろ彫り博物館のろくろ彫り 村の全面積の4分の3が山林、原野と言う大山田村のまちかど博物館には、素材に木の持ち味を生かしたものが多い。
 梅屋博物館(中西慶三郎館長、午前8時〜午後5時毎日開館、要予約)は、今も旅館業を営んでいる。建築後100年を経過した商家そのものが博物館。ここ平田宿は、旧伊賀街道の宿場町として栄えた。梅屋と同じような建物が数多く軒を連ねていたが、改築が進み当時の面影を残す建物は数少なくなってしまった。
(写真は 伊賀ろくろ彫り博物館のろくろ彫り)

奥欄間博物館の欄間 伊賀ろくろ彫り博物館(米島政清館長、要予約、但し日曜日は大山田温泉「さるびの」で製作実演)は木地師の館。ケヤキ、サクラ、クワなどの美しい木目を生かし、盆、茶筒、茶びつ、茶托などを、ろくろを回して作り出す館長の職人技が見学できる。大山田温泉「さるびの」での製作実演、作品展示も、湯あがりの観光客の人気を集めている。
 高級日本住宅には欠かせないのが匠の技の粋を集めた欄間(らんま)。欄間作りの職人の仕事場が奥欄間博物館(奥友三館長、午前9時〜午後5時開館、要予約)。洋風建築が増え日本古来の建築美が忘れられようとしているが、21世紀に伝えたいひとつが欄間作りの技。奥館長の使い込まれたノミ、カンナに職人技の歴史が刻み込まれている。館長の欄間作りの工程や作品を見学し、欄間にまつわる話を聞くことができる。
(写真は 奥欄間博物館の欄間)


◇あ    し◇
私的民俗博物館近鉄伊賀線上野市駅下車徒歩10分。 
鎌田製菓店近鉄伊賀線上野市駅下車徒歩5分。 
錦絵会館野駈近鉄伊賀線上野市駅からバス勧進辻又はさつき団地下車徒歩5分。 
瀧自慢酒仙蔵博物館近鉄大阪線赤目口駅下車徒歩5分。 
とつくり館近鉄大阪線桔梗が丘駅下車徒歩10分。 
柿盃洗堂近鉄大阪線桔梗が丘駅からバス南桔梗が丘下車徒歩2分。 
伊賀焼博物館長谷園JR関西線伊賀上野駅からバス向出下車徒歩3分。 
伊賀焼縁側博物館伝法窯JR関西線伊賀上野駅からバス向出下車徒歩5分。 
木村和楽器博物館JR関西線佐那具駅からバス上川合下車徒歩1分。 
糸と織物博物館JR関西線柘植駅からバス上柘植下車徒歩3分。 
中島つる細工博物館JR関西線新堂駅下車徒歩10分。 
ひょうたんの里奥出JR関西線新堂駅下車徒歩20分又は柘植駅からタクシー10分。 
梅家博物館近鉄伊賀線上野市駅からバス山田下車徒歩1分。 
伊賀ろくろ彫り博物館近鉄伊賀線上野市駅からバス役場前下車徒歩10分。 
奥欄間博物館近鉄伊賀線上野市駅からバス千戸下車徒歩1分。 
◇問い合わせ先◇
伊賀まちかど博物館推進委員会(三重県庁生活部分科課内) 059−224−2637
上野市役所企画総務課0595ー21−4111 
私的民俗博物館0595ー21−4472 
鎌田製菓店0595ー21−1345 
錦絵会館野駈0595ー21−6274 
名張市教委生涯教育課0595ー63−2111 
瀧自慢酒仙蔵博物館0595ー63−0488 
とつくり館0595ー65−1361 
柿盃洗堂0595ー65ー0337 
阿山町役場産業課0595ー43−0334 
伊賀焼博物館長谷園0595ー44−1511 
伊賀焼縁側博物館伝法窯0595ー44−1219 
木村和楽器博物館0595ー43−0220 
伊賀町役場まちづくり推進課 0595ー45−9114
糸と織物博物館0595ー45−3495 
中島つる細工博物館0595ー45−3836 
ひょうたんの里奥出0595ー45−4881 
大山田村役場地域まちづくり推進課 0595ー47−1156
梅家博物館0595ー47−0012 
伊賀ろくろ彫り博物館0595ー46−1648 
奥欄間博物館0595ー47−0220

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

@・・・ひょうごシンボルルート   
A・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
B・・・越前戦国ルート              
C・・・近江戦国ルート              
D・・・お伊勢まいりルート         
E・・・修験者秘境ルート           
F・・・高野・熊野詣ルート         
G・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

    あなたも「関西の歴史や文化を楽しみながら探求する」歴史街道倶楽部に参加しませんか?
    歴史街道倶楽部では、関西各地の様々な情報のご提供や、ウォーキング、歴史講演会など楽しいイベントを企画しています。
   倶楽部入会の資料をご希望の方は、
 ハガキにあなたのご住所、お名前を明記の上、
          郵便番号 530−6691
          大阪市北区中之島センタービル内郵便局私書箱19号
                  「テレホンサービス係」
へお送り下さい。
   歴史街道倶楽部の概要を解説したパンフレットと申込み用紙をご送付いたします。
       FAXでも受け付けております。FAX番号:06−6448−8698   

歴史街道推進協議会