月〜金曜日 21時48分〜21時54分


室生寺 

 「女人高野」として女性参拝者に親しまれている室生寺は、奈良時代末に興福寺の僧・賢憬が創建、賢憬の弟子・修円が伽藍(がらん)を整備した寺。室生寺は、室生山の深山に囲まれ、室生川の清流が流れ、山岳信仰や雨乞いの祈とう道場としても知られている。境内には、金堂、弥勒堂、本堂、五重の塔。そして、奥の院の御影堂などの古い建物が並んでいる。春はサクラ、初夏にはシャクナゲと新緑、夏は樹陰の涼風、秋は紅葉、冬は淡雪など、室生寺境内では四季折々の景観が楽しめる。


 
甦る五重塔  放送 10月16日(月)
太鼓橋と表門 平成10年(1998)9月22日、近畿地方を襲った台風7号によって、奈良県内では文化財などに大きな被害が出た。中でも室生寺の国宝・五重塔は倒れてきた高さ50mの杉の大木の直撃を受け、西北隅の5重の軒先が大破し、相輪も折れ曲がるなどの大きな被害を受けた。幸い塔の軸部には大きな被害はなかったが、室生寺や文化財関係者らを始め、優美な五重塔の姿に心をひかれていた人々は大きなショックを受けた。
(写真は 太鼓橋と表門)

国宝・五重塔 平成11年1月から修復工事が始められた。元通り復元するには3年はかかるのではないかといわれていたが、関係者らの努力で修復作業は順調に進み、このほど(1年後の平成12年)作業は終了、色彩も鮮やかな元の姿が甦り、落慶法要が10月21日に行われる。
 修復作業は塔全体を覆う素屋根を架け、桧皮を取り除き、4重、5重は解体、2重、3重をジャッキアップして、初重から順に修復していった。屋根をふく桧皮は室生寺境内のヒノキから採取して調達した。屋根を桧皮でふき替え、軒先の塗装、壁塗りも終わり、優美な姿が復元した。
(写真は 国宝・五重塔)


 
秋色の優美な小塔  放送 10月17日(火)
五智如来 室生寺の国宝・五重塔は高さ16.1mで、屋外の五重塔としてはわが国で最小の塔である。国内で最大の京都・東寺、奈良・興福寺の五重塔の3分の1である。 奈良時代末の創建当時からの建物はこの五重塔だけとなっていた。
 今回の修復作業で使われていた用材の年輪年代測定で、建立は西暦800年ごろと推定された。また、建立後、鎌倉時代末期、江戸時代の明和年間(1764〜1772)、明治時代に大きな修理が行われたこともわかった。このほか、塔の建立時には天平尺よりやや長い平安時代初期の尺度が使われていたことや、創建当初の屋根の形式、筋違を使用した最古の建物であったことなどもわかった。
(写真は 五智如来)

重文・御影堂 素屋根が取り除かれた五重塔は、5重の各軒先の塗装も鮮やかで、室生寺五重塔の特長とされる相輪最上部の宝瓶(ほうびょう)も据え付けられている。五重塔初重内部に安置されていた、大日如来像を中心に4体に如来像が配置されている秘仏の五智如来像も元の場所に安置され、室生寺五重塔は完全に元通りの姿を取り戻し、その優美な姿が秋の日差しに輝いている。参拝した信者たちも色鮮やかに甦った五重塔に手を合わせ、それぞれの願いを念じている。
 開眼供養の始まる10月21日ころには、境内の紅葉も始まり、うっそうとした杉木立と紅葉の中に色鮮やかな五重塔がマッチして、室生寺ならではの秋色の景観を現出してくれる。
(写真は 重文・御影堂)


 
金堂  放送 10月18日(水)
国宝・釈迦如来立像 境内の鎧(よろい)坂の石段を登りきると、小さな平地に平安時代初期に建立された国宝・金堂がある。流れるような、こけら葺きの屋根の正面5間、側面5間の単層寄棟造。本来は側面4間だったが、江戸時代に正面に1間通しの礼堂を付け加えたので、側面5間となった。石垣上に張りだしたようなこの礼堂が、うまくマッチして建物に変化を与え、独特の建築美を現している。数回にわたる修理が行われているが、五重塔と共に平安時代初期の仏堂として高く評価されている。
(写真は 国宝・釈迦如来立像)

国宝・十一面観音菩薩立像 金堂内陣の須弥壇には、ひときわ大きな本尊・釈迦如来立像(国宝・平安時代初期)を中心に、向かって右に薬師如来立像(重文・平安時代)、地蔵菩薩立像(重文・平安時代)、左に文殊菩薩立像(重文・平安時代初期)、十一面観音菩薩立像(国宝・平安時代初期)の五尊像が安置されている。さらにその前には十二神将像(重文・鎌倉時代)が一列に並んでいる。
 五尊像は大きさや作風に違いがあり、同時代の作とは言えないが、いずれも木像彩色で各々が板光背(いたこうはい)をつけているところに特色があり、平安時代初期から藤原時代にかけての室生寺特有の作例として知られている。
 本尊・釈迦如来立像は高さ234.8cmの大きな仏像で、カヤの一木から彫られている。漆で黒く塗られた身体、朱色の衣が特徴的だ。また、本尊の背後の板壁には帝釈天曼荼羅(まんだら)(国宝・平安時代初期)が描かれている。
(写真は 国宝・十一面観音菩薩立像)


 
弥勒堂  放送 10月19日(木)
重文・弥勒菩薩立像 金堂左手に東面して建っている弥勒堂(重文・鎌倉時代)は、室生寺の基礎を築いた修円が創建時に興福寺の伝法院を移築したと伝えられ、現在の建物はその様式を受け継いだものとされている。こけら葺きの単層入母屋造で周囲に縁をめぐらしている。正確な建立年次は不明だが、様式上から鎌倉時代中期は下らないと言われており、当初のまま残っているのは、一間四方の内陣だけといわれている。
 昭和28年(1953)の修理の際、天井裏から宝篋(ほうきょう)印塔の形をした籾塔(もみとう)が多数発見された。籾塔は雨乞いと五穀豊穰を祈り、一粒の籾が陀羅尼を刷った紙に包んで納められていた。
(写真は 重文・弥勒菩薩立像)

国宝・釈迦如来座像 弥勒堂内の須弥壇上の厨子内に安置されているのが本尊・弥勒菩薩立像(重文・平安時代初期)。この仏像は檀像風で白木の高さ94.4cmの小像で、本体、天衣、瓔珞(ようらく)、蓮華座の上半分を含めてカヤの一木造り。檀像とは白檀などの香木で仏像を刻んだものを言うが、壇木に恵まれないわが国ではきめの細かい良質の木で彫ることが多い。
 脇壇の厨子内に客仏として安置されているのが釈迦如来座像(国宝・平安時代初期)は、平安時代初期の彫刻を代表する木造の仏像。螺髪(らほつ)のない小さめの頭部にどっしりとした安定感のある姿勢と身体を覆う衣のリズミカルなひだの線が特徴的だと言う。
(写真は 国宝・釈迦如来座像)


 
灌頂(かんじょう)堂(本堂)  放送 10月20日(金)
国宝・灌頂堂(本堂) 金堂からさらに石段を登ると灌頂堂に出る。灌頂とは大阿闍梨(だいあじゃり)から頭上に智水を灌(そそ)がれて仏弟子になる真言宗の重要な法義のことを言う。 その法義が行われる場所が灌頂堂で、室生寺ではこの灌頂堂を本堂とも呼んでいる。
 灌頂堂内部は前方二間が外陣、後方三間が内陣で、いずれも板敷となってなっており、灌頂の儀式を行うために外陣、内陣を厳重に区別している。
(写真は 国宝・灌頂堂(本堂))

両界曼荼羅 内陣正面の須弥壇には本尊の如意輪観音座像(重文・平安時代)が安置されている。六臂半跏(ろっぴはんか)の思惟(しい)像で、河内長野市の観心寺(かんしんじ)、西宮市の神呪寺(かんのうじ)の如意輪観音像と共に日本三如意輪のひとつで、藤原時代初期の作と見られている。
 本尊の両脇の板壁には向かい合わせの形で、大日如来の知恵を現す金剛界と慈悲と真理を現す胎蔵界の両界曼荼羅(りょうかいまんだら)が掛けられている。この両界曼荼羅の前で灌頂が行われ新たな仏弟子が誕生する。
(写真は 両界曼荼羅)


◇あ    し◇
室生寺近鉄大阪線室生口大野駅からバス室生寺前下車。 
◇問い合わせ先◇
室生寺07459−3−2003 

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