月〜金曜日 18時54分〜19時00分


京都市・きぬかけの路 

 洛西・衣笠山の山すその仁和寺、龍安寺から金閣寺まであたりを「きぬかけの路」と言う。春はサクラ、秋は紅葉が美しい通りで散策には最適のコース。付近には京都を代表する名だたる神社や寺院が多く、きぬかけの路沿いには和装品、和菓子、京料理、京漬け物、しゃれた喫茶店などの店もあり、寄り道するのには事欠かない。


 
仁和の心  放送 11月11日(月)
 きぬかけの路の西端にある仁和寺は、光孝天皇が仁和2年(886)創建に着手したが翌年死去、次帝の宇多天皇が父帝の遺志を継いで仁和4年に完成させた。宇多天皇は31歳で退位後、上皇としてこの寺に御座所を置いたことから、御室(おむろ)御所と呼ばれるようになった。地上すれすれに地をはうように咲く「御室(おむろ)の桜」は遅咲きの桜で有名。
 仁和寺の堂塔伽藍は応仁の乱によって応仁2年(1468)に全山全焼し、江戸時代まで復興されなかった。徳川3代将軍家光の援助を受けて再興にとりかかり、御所の紫宸殿(ししんでん)を移築した金堂(国宝)や仁王門、五重塔など、現在の堂塔はこの時期に再建されたものが多い。

宸殿(仁和寺)

(写真は 宸殿(仁和寺))

割烹佐近

 御室御所跡を代表する建物が宸殿(しんでん)で、寝殿造と書院造を混合した様式。
宸殿には白砂を敷き詰めた南庭と池、滝、築山を配した明るく雅な北庭がある。北庭の築山には光格天皇が好んで使った茶室・飛濤(ひとう)亭(国・重文)がある。仁和寺境内は春の御室桜から始まって秋の紅葉まで四季折々の美しさがあり、北庭の飛濤亭付近の秋の景色は素晴らしいと言う。
 仁和寺の拝観と境内の散策の心地よい疲れを味で癒してくれるのが、仁和寺門前にある京料理とフランス料理を調和させた料理が自慢の「佐近」。仁和寺宸殿前の右近の橘、左近の桜にちなみ、人に愛される店を願い左近に人偏をつけた「佐近」にした。ここの料理は洋風懐石ではなく、伝統的な京料理と本格的なフランス料理の一品一品を、それぞれのコースにコーディネイトして、その調和とおいしさを追求している。

(写真は 割烹佐近)


 
京の雅  放送 11月12日(火)
 龍安寺は宝徳2年(1450)室町幕府の管領・細川勝元が、徳大寺家の別荘を譲り受けて創建した。応仁の乱で焼失後、長享2年(1488)勝元の子・政元が再興して以来、細川家の菩提寺として寺運も隆盛した。現在の諸堂宇は寛政9年(1797)の火災で焼失後に再建されたものである。方丈は塔頭・西源院の方丈を移築したもので、大規模な禅宗寺院の方丈の典型として貴重な建物である。
 方丈前の枯山水庭園の石庭は世界的に有名である。三方を築地塀に囲まれた東西約30m、南北10m余りの長方形の庭に白砂を敷き、15個の石が東から西へ7・5・3と配され、白砂に筋目で波紋が描かれている。境内の樹木を借景にし、石庭には草木は一本もない。15個の石は目の高さでどこから見ても微妙に重なり合い、どうしても14個しか見えず、これを「虎の子渡し」とも言う。虎が子供を連れて川を渡る時、必ずその子を隠すことから隠れた石を虎の子に見立ててこう呼んだ。

鏡容池(龍安寺)

(写真は 鏡容池(龍安寺))

ねじり箱(京小物衣笠)

 この有名な石庭のために見落としがちだが、境内には苔むす庭園など龍安寺十勝と呼ばれる景勝地がある。山門を入るとすぐ目に入る鏡容池もそのひとつ。この池は徳大寺家の別荘当時のままの姿を残しており、かつてはオシドリが群れ遊んでいたこともあった。池の畔に立つと龍安寺の後ろに連なる衣笠山などの山々の四季の移ろいを眺めることができる。
 京の寺院の境内には女性の着物姿がしっとりと溶け込む。龍安寺の鏡容池の畔も和服の女性が周囲の紅葉と相まって美しい。このような女性の足を止めずにおかないのが龍安寺門前の京小物の店「衣笠」。匂い袋の入った名物の「ねじり箱」をはじめ、女心をくすぐらずにはおかない和装の品々が、小さな店内いっぱいににあふれている。

(写真は ねじり箱(京小物衣笠))


 
美の巡礼  放送 11月13日(水)
 きぬかけの路には美しい女性の着物姿が映えるスポットが多いが、着物好きの女性なら思わず目を輝かせるところが帯の「織悦」。
 明治30年(1897)に生まれ、西陣の変わり織物屋で修業した織悦の創業者・高尾菊次郎氏は、研究と創意工夫を重ね、独自の素材、文様、色彩で織り出した帯は名品の評価が高い。江戸時代初期の芸術家・本阿弥光悦に心酔し、この光悦好みと織物一筋の悦(よろこ)びの心境を表して「織悦」の商号をつけた。また帯に「織悦」の商号を織り込んだのも高尾氏が西陣で最初だった。
 高尾氏は確かな審美眼を養うため正倉院の宝物を研究したり、能装束や古代の織物の布を集めたり、画家や陶芸家との交流を通じて、美に対するセンスを磨くなどした。これら織悦の創業者の研究と知識、精神は、現在の織悦のすべて帯の創作に生かされている。

紺地鳳凰文様唐織裂(桃山時代・織悦)

(写真は 紺地鳳凰文様唐織裂(桃山時代・織悦))

京都府立堂本印象美術館

 立命館大学近くにあるのが堂本印象美術館。2002年秋に開催の特別展の見ものは、印象が昭和30年(1955)に完成させ、福井地方裁判所のホールを飾っている大ステンドグラス「楽園」のミニチュア版。福井地裁のものは高さ7m、幅3mと言う巨大なもので、楽器を奏でる人びとの様子が理想郷さながらに描かれている。ミニチュア版はこれを3分の1に縮小したものである。
 近代日本画の大家・堂本印象(1891〜1975)は多くの作品を残したが、その作風は伝統的な日本画から抽象画にいたるまで華麗な変遷をたどり、日本画壇に強烈な刺激を与えた。昭和41年(1966)にオープンしたこの美術館は内装、外装とも印象が自らデザインしたものである。平成3年(1991)美術館はその所蔵品とともに京都府に寄贈され、京都府立堂本印象美術館となった。

(写真は 京都府立堂本印象美術館)


 
四季を食す  放送 11月14日(木)
 きぬかけの路には京ならではの味の店がいくつもある。これらの味は京都らしさを存分に出しており、地元でなければ味わえないものばかりである。
 京漬け物の「富川」は壬生菜、すぐき、千枚漬の聖護院かぶら、赤かぶら、かぶら、水なす、瓜など、あくまで京野菜の自然素材を使い、旬の漬け物づくりにこだわり続けている。京漬け物の真髄はその塩加減にある。その塩の加減も一子相伝のように親の手から子の手へと「良い加減」が伝えられ、その伝統が守られている。全国に名物の漬け物は多いが、京漬け物は独特の塩加減と味で人気を集め、贈答品などに喜ばれている。

京つけもの 富川

(写真は 京つけもの 富川)

きぬかけ

 味覚のみならず視覚にも鮮やかに四季の色を映し出してくれるのが和菓子。京都は和菓子の本場でもあり、茶席や寺院での催しなどに、その鮮やかな色とデザインが彩りを添え、奥ゆかしい贈答品としても人気が高い。
 上菓子司「きぬかけ」の栗や菊など、季節を象った愛らしい生菓子は、菓子職人が精魂を込めて作った技が凝縮され、芸術の域に達した菓子である。きぬかけの路を散策する女性たちには大変喜ばれそうな数々の菓子が店頭に並べられており、美味しい生菓子とお茶でちょっと一服、きぬかけの路の散策疲れを癒すのも京ならでは趣向になりそうだ。

(写真は きぬかけ)


 
伝統の色  放送 11月15日(金)
 「ギャラリー雅堂(がどう)」は版画家・井堂雅夫氏の作品を中心にした木版画専門のギャラリーである。井堂氏は盛岡市で育ち、15歳の時から京都に移り、染色、版画などの芸術活動を始めた。伝統的な浮世絵の技術をとり入れた多色刷りの木版画で、日本の四季を強調した風景を表現している。特に京都の四季に強く引かれ、お膝元をモチーフにした「金閣寺」「龍安寺」「雪のきぬかけの路」「等持院」など、きぬかけの路の名所を情趣豊かに「日本の伝統の色」を木版の世界で創りあげている。
 井堂氏のアトリエには木版画の彫り師、摺り師の親方たちが集まり、若い技術者の養成に努めている。井堂氏は「紙すき、彫り、摺りと言う日本が誇るこの素晴らしい木版画の技術を未来へつなげる場が、ギャラリー雅堂の役目でもある」と言う。

木版画(井堂雅夫!ギャラリー雅堂)

(写真は 木版画(井堂雅夫・ギャラリー雅堂))

等持院

 等持院は暦応4年(1341)足利尊氏が、夢想国師を開山として迎え、創建した等持寺が起こりの臨済宗の名刹である。衣笠山の南麓、きぬかけの路の中ほどの立命館大学の南にある足利氏の菩提寺。
 境内には尊氏の墓や宝筐(ほうきょう)印塔、足利歴代将軍の遺髪を納めた十三重の石塔が建っている。霊光殿には尊氏の念持仏の地蔵尊像を中央に、禅宗の祖師・達磨大師像と等持院を開山した夢窓国師像がまつられている。その左右の壇上には足利15代・歴代将軍の木像がずらりと並んでいる。
 等持院の堂塔は再三の火災で焼失し、現在の建物はほとんどが江戸時代末の文政元年(1818)に再建されたものである。文久3年(1863)には、尊王攘夷派の志士たちが霊光殿に押し入り、尊氏、義詮、義満像の首を斬り、三条大橋の橋詰めにさらした事件があった。方丈の東西には衣笠山を借景とした夢窓国師作庭と伝えられる見事な庭園が広がっている。

(写真は 等持院)


◇あ    し◇
仁和寺、佐近(料理店)京福電鉄北野線御室駅下車。 
京都市バス、京都バス御室仁和寺下車。
龍安寺、衣笠(京小物)、織悦(帯)、富川(京つけもの)京福電鉄北野線龍安寺道駅下車徒歩10分。
京都市バス龍安寺前下車。
京都府立堂本印象美術館、きぬかけ(京・上菓子)、等持院京都市バス立命館大学前下車。
ギャラリー雅堂京都市バス桜木町下車。  
◇問い合わせ先◇
きぬかけの路推進協議会075−464−1655 
仁和寺075−461−1155 
佐近075−463−5582 
龍安寺075−463−2216 
衣笠075−461−2631 
織悦075−461−3732 
京都府立堂本印象美術館075−463−0007 
富川075−466−6675 
きぬかけ075−465−1039 
ギャラリー雅堂075−464−1655 
等持院075−461−5786 

◆歴史街道とは

     日本の歴史の舞台を尋ねながら、日本文化の魅力を楽しみながら体験できる
ルートのことです。
     伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸の歴史都市を時流れに沿ってたどるメインルートと地域の特徴を活かした8本のテーマルートが設定されています。

 

(1)・・・ひょうごシンボルルート   
(2)・・・丹後・丹波伝説の旅ルート
(3)・・・越前戦国ルート              
(4)・・・近江戦国ルート              
(5)・・・お伊勢まいりルート         
(6)・・・修験者秘境ルート           
(7)・・・高野・熊野詣ルート         
(8)・・・なにわ歴史ルート           

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」
を目指し,
    官民188団体によりソフト・ハード両面の事業が推進されています。

◆歴史街道テレフォンガイド

     テレビ番組「歴史街道〜ロマンへの扉〜」と連合した各地の歴史文化情報を提供しています。
                  TEL:0180−996688    約3分 (通話料は有料)

 

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