高雄、槙ノ尾、栂ノ尾を総称して三尾(さんび)とよぶ。御室から周山街道を西に進むと徐々に山間部にはいって行くが、道が大きくカーブして北に向きをかえるところの西側、谷をへだてて高雄山神護寺(じんごじ)がある。和気清麻呂の創建した愛宕山五坊の一つで、高雄山寺が前身とつたえる。804年唐国より帰国した空海(弘法大師)が809年この寺に入り、14年間をこの寺で過ごして真言宗を開く基礎をきずいた。また、伝教大師最澄も一時この寺にいたことがある。その後2度の火災で衰えたが、平安末期の1184年、文覚(もんがく)上人が後白河帝や源頼朝の庇護を受けて再興した。清滝川をのぞむ尾根を切り開いた境内の金堂(昭和)には、木造の本尊薬師如来立像(国宝、平安初期)がまつられている。唇と目にわずかに彩色のあとがのこり、きびしい表情に量感のある体、するどいノミのあとをみせる仏像は他に例を見ない傑作。金堂の西南に建つ大師堂(平安、桃山ー重文)は弘法大師の住坊跡とつたえるが、現在のは桃山時代の改築をうけた1168年再建のもの。山内で最古の建物である。柿葺の住宅風建築で弘法大師がまつられている。
金堂からさらに階段を上ると多宝塔(昭和)があり、五大虚空蔵菩薩座像(平安初期の一木造り、国宝)が豊満な姿で並んでいる。これも平安初期(貞観彫刻)の傑作。このほか絵画では肖像画の傑作、伝源頼朝像、伝平重盛像など(共に平安末ー鎌倉初、国宝)が伝わる。境内の西の広場から清滝川にむかって崖上から飛ばす「かわらけ投げ」に、昔から人気がある。この寺一帯は紅葉の名所で、秋には全山紅葉にそまる。
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