月〜金曜日 18時54分〜19時00分


加西市、西脇市

 今週は東播州の加西市と西脇市を訪ねた。加西市は綿織物と農業が主産業で、市の中心部の北条町は西国街道の宿場町としても繁栄した所で、今も古い商家が旧街道沿いに残っている。西脇市は200年の伝統を誇る先染織物・播州織の産地、釣り針の生産地でもあり、特に播州毛針は伝統的工芸品に指定されている。近年は日本のへそのある町として全国の知られるようになった。


 
五百羅漢(加西市) 放送 10月16日(月)
 加西市の北条町は奈良時代に創建された住吉神社、酒見(さかみ)寺の門前町として発展した。
姫路と京都、また山陽と山陰を結ぶ交通の要衝で、西国街道・北条の宿として栄えた。
 そんな往時のにぎわいをしのばせる民家や商家が北条町の通りには何軒も残っている。こうした民家には格子戸がよく似合い、卯建(うだつ)やいろいろなデザインの虫籠(むしこ)窓があり、漆喰壁に鏝(こて)で絵が描き出された旧家など、それぞれに繁栄した宿場町の風情を伝えている。
(写真は 北条の宿)
北条の宿

(写真は 北条の宿)

五百羅漢

 古い町並が残る北条町の中心から北西に少しはずれた所に羅漢寺がある。その境内の石仏群・五百羅漢は、大分県中津市本耶馬渓町、山梨県甲斐市吉沢の五百羅漢像とともに全国的に知られている石仏群である。いつ、誰が、何のために、これだけ多くの石仏を彫ったのかを知るための手がかりは何ひとつない。
 戦や飢饉などで無残な死を遂げた人たちの霊を弔うため、縁故の人や信仰心の篤い人たちが純粋な信仰心を込めながら彫ったと見られる石仏群は、現代人に何かを語りかけようとしているようにも見える。

(写真は 五百羅漢)

 これらの石仏は極めて稚拙とも言える技法で彫られており、その稚拙さゆえに素朴さが一層際だった仏様たちである。一体、一体の石仏の表情は異なり、笑ったり、泣いたり、考え込んだり、それぞれ表情豊で人間味に富んでいる。長い間、風雪にさらされ、野趣豊かな野の石仏として静かにたたずんでいる。
 この地の古謡に「親が見たけりゃ北条の西の 五百羅漢の堂にござれ」とあり、四百数十体の羅漢さんの中に必ず親の顔に似たものがあるのだろう。

本尊壇

(写真は 本尊壇)


 
古法華自然公園(加西市) 放送 10月17日(火)
 加西市南部の古法華(ふるぼっけ)自然公園は、標高150?250mの峰続きの谷間に広がる自然公園で、小鳥のさえずりが樹林に聞こえ、自然との触れ合いが満喫できる空間である。
 北東の山麓は古くからの石切場で、山々には荒々しい岩肌が目立つが、そうした岩の間に架けられた吊り橋を渡って山頂の展望台へ。この展望台からは明石海峡大橋や淡路島まで見渡すことができる。古法華自然公園内には多くの石仏や磨崖仏があり、公園内の散策をいっそう楽しくしている。

古法華寺

(写真は 古法華寺)

石造浮彫如来像(白鳳時代)

 公園内には1300年昔、寺院の堂塔が建ち並んでいたと言う場所があり、今は古法華寺が建っている。この寺の収蔵庫に白鳳時代にこの山の石材に彫りつけたと見られる日本最古の石仏「石造浮彫如来像及び両脇侍像付石造厨子屋蓋(国・重文)」が安置されており拝観できる。
 この石造三尊像は凝灰岩の切石の表面に、椅子に腰掛けた中尊の如来像と蓮華座上に立って腰をややひねっている脇侍を半肉彫りにしたもので、上には石造の厨子屋蓋がある。この三尊石仏像は火災に遭ったようで、半肉彫りの部分が一部剥落しているのが残念である。

(写真は 石造浮彫如来像(白鳳時代))

 古法華寺の観音堂に安置されていた三尊石仏像は、その美術的、歴史的価値が評価されずに埋もれていたが、昭和30年(1955)甲陽史学会(西宮市)の田岡香逸氏らの調査でその価値が認められ、奈良国立博物館で保存展示されていた。昭和36年(1961)国の重要文化財に指定され、その後、文化庁が古法華寺に収蔵庫を建設し、昭和40年(1965)に古法華寺に返還されて収蔵庫に安置された。
 こうした三尊石仏像や石仏が数多くあることから、公園内には石彫アトリエ館がある。予約しておけば石仏を彫ることができる。ここで制作された約300余体の石仏は公園内に安置されている。

石彫アトリエ館

(写真は 石彫アトリエ館)


 
西国三十三カ所第26番札所
・一乗寺(加西市)
放送 10月18日(水)
 一乗寺は西国三十三カ所第25番札所の清水寺と同じ法道仙人の開基と伝わる。法道仙人はインドから紫雲に乗って日本に渡来し、現在の一乗寺のある法華山に留まって修行し、民衆を救済したと言う。
 大化5年(649)孝徳天皇の病を法道仙人が加持祈祷して治したことから、天皇の帰依が篤くなった。翌年、仙人が法華山に一宇を建立すると、行幸した天皇から「法華山一乗寺」の山号を賜った。後に聖武、孝謙、仁明天皇の勅願寺となり、花山法皇が西国三十三カ所第26番観音霊場としてから朝野の崇敬を集めるようになり、寺運は隆盛した。

開山堂(奥之院)

(写真は 開山堂(奥之院))

本尊 聖観世音菩薩(お前立ち)

 創建後、兵火で堂塔を度々焼失しており、現在の本堂(国・重文)などは寛永5年(1628)姫路城主・本多忠政が再建したもので現在改修中である。本尊の銅造聖観世音菩薩像(国・重文)は秘仏となっている。
 奈良、平安時代に最も隆盛した寺で、朝廷の崇敬も篤かったため、数多くの国宝、重要文化財がある。三重塔(国宝)は平安時代の承安元年(1171)に建立されたもので、造立銘から建築年代のはっきりした塔であるとともに、軒の出が深く、相輪が高い美しい塔として建築史上でも貴重な存在とされている。

(写真は 本尊 聖観世音菩薩(お前立ち))

 このほか聖徳太子と天台宗の傑出した高僧9名を描いた聖徳太子及天台高僧画像10幅(国宝)は、藤原時代の傑作として貴重なものである。
 一乗寺を開いた法道仙人は、瞬時に空を飛ぶことができる術を会得しているなどと言われ、架空の人物なのか、モデルとなる人物がいたのかなど諸説があるが、真相は分からず伝説的な人物であるとの説が濃厚である。
 一乗寺は播磨中部丘陵県立自然公園中にある自然豊かな景勝地で、御詠歌も深い緑の中の寺らしく「はるははな なつはたちばな あきはきく いつもたえなる のりのはなやま」と詠まれている。

賽の河原

(写真は 賽の河原)


 
旧來住家住宅(西脇市) 放送 10月19日(木)
 西脇市の市街地中心部には同市出身のアーティスト・横尾忠則氏がよくモチーフにした独特のY字路が見られ、どこか懐かしい雰囲気を醸し出している。
 西脇市内には大正時代の家が何軒か残っているが、その代表格が大正7年(1918)に竣工した旧來住(きし)家住宅(国登録有形文化財)で、その造りには目を見張るものがある。來住家はこの地方の大地主であっただけに、当時、最高級の用材を集めて最高の技術で建築されており、母屋、離れ、庭の総建築費は8万4000円、現在なら54億円に相当する価格と言う。

旧来住家住宅

(写真は 旧来住家住宅)

畳廊下

 この住宅を建てた來住梅吉氏は自ら各地の銘木を集め、10年間も乾燥させてねじれや節のあるものを省き良材だけを使用しており、90年を経過した今でもひずみなどは生じていない。母屋の構造は中央の廊下をはさんで南北2列の間取りとなっており、南側が接客用の部屋、北側が家族が生活する部屋となっている。廊下を畳敷きにして南北の部屋が連続性があるように見せている。
 離れ座敷の床柱と框(かまち)は縞黒檀、天井は屋久島の杉板、母屋の大戸はケヤキの1枚戸、庭の門もケヤキの1枚戸、母屋の大黒柱もケヤキ、梁は太い東条赤松が使われている。

(写真は 畳廊下)

 調度品にも贅が尽くされている。鳥やコウモリなどが彫られた欄間、湯殿にはイタリア製タイルと高野槙の湯船。客間座敷や離れ座敷から眺められる庭園には、鞍馬石、貴布禰石、鴨川石などをふんだんに使い、石灯籠、五重石塔などが配されている。
 この邸宅には犬養毅元首相、朝香宮(東久邇宮の兄)や画家らの芸術家も訪れており、その作品などが残っている。現在では入手困難な用材が使われており、同じ邸宅を再現することは不可能だと言われいる。入館料無料でボランティアが邸内を案内してくれるので、ぜひ一見しておきたい邸宅である。

客湯殿

(写真は 客湯殿)


 
日本のへそ(西脇市) 放送 10月20日(金)
 西脇市は東経135度と北緯35度が交差する日本の中心として「日本のへそ」を自負し、さらに「日本のへそ公園」を設け、JR加古川線に「日本のへそ公園駅」が開業したほどである。
 日本のへそ誕生のきっかけは、大正8年(1919)多可郡で開かれた小学校数学教師の研修会で、講師の旧制東京高等師範学校(現筑波大学)付属小学校の肥後盛熊先生が「ここには日本の中心に当たる東経135度、北緯35度の交差点があり、一度来てみたかった」と発言したことで、一挙に注目を集めることになった。そして大正13年(1924)に「東経百三十五度北緯三十五度交差点海抜六十三米標識」と刻んだ石の標柱が建てられた。

日本のへそ公園

(写真は 日本のへそ公園)

にしわき経緯度地球科学館 テラ・ドーム

 この経緯度交差点標柱は第2次世界大戦で人びとから忘れ去られていたが、昭和52年(1977)からの「へその町復活運動」で再び見直された。その後、この地域の岡之山公園を日本のへそ地点まで拡大して「日本へそ公園」としての整備した。
 公園内には地球をテーマにした「にしわき経緯度地球科学館テラ・ドーム」や「宇宙っ子ランド」などが建設された総合公園となった。テラ・ドームには国内最大級の81cm反射望遠鏡や映像ホール、展示室などがあり、地球のすばらしさ、宇宙の神秘さを知ることができる。

(写真は にしわき経緯度地球科学館
                                   テラ・ドーム)

 公園内に立つ4本のポールの「日本のへそモニュメント」は、アメリカの人工衛星GPSを使った平成の地球大測量で判明した、もうひとつの東経135度北緯35度の日本のへそ地点。へそ公園のへそ地点から南東に437.6m離れたところにある。なぜへその位置が異なっているかとうと、日本列島が100年間で1.5m移動しているため、へそ地点も刻々と変化しているからだ。
 日本のへそ公園そばには、3両連結の列車を思わせる外観の岡之山美術館があり、西脇市出身の画家・横尾忠則氏の作品を収蔵展示している。テラ・ドームでの宇宙の神秘を体感した後、横尾氏のユニークな芸術作品にも出会える。

日本のへそモニュメント

(写真は 日本のへそモニュメント)


◇あ    し◇
羅漢寺、五百羅漢北条鉄道北条町駅下車徒歩10分。
古法華自然公園、古法華寺、
石彫アトリエ館
北条鉄道播磨下里駅下車徒歩20分。
JR山陽線姫路駅から古法華自然公園行きバス
(1日2便)あり。
一乗寺北条鉄道法華口駅からバスで法華山口下車徒歩50分。
JR山陽線姫路駅からバスで法華山口下車徒歩50分。
旧來住家住宅JR加古川線西脇市駅下車徒歩30分。
JR加古川線西脇市駅からバスで西脇下車徒歩10分。
日本のへそ公園駅、テラ・ドームJR加古川線日本のへそ公園駅下車すぐ。
JR加古川線西脇市駅からバスで寺内下車徒歩10分。
◇問い合わせ先◇
加西市観光協会0790−42−8823
羅漢寺0790−43−0580
加西市羅漢保存委員会0790−42−8740
古法華自然公園0790−42−0112
石彫アトリエ館0790−46−0268
一乗寺0790−48−2006
西脇市観光協会0795−22−3111
旧來住家住宅0795−22−5549
西脇市教育委員会生涯学習課0795−23−8639
日本のへそ公園0795−22−3111
にしわき経緯度地球科学館
テラ・ムード
0795−23−2772

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    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
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  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」

    の3つの目標を掲げ、その実現を目指しています。

 

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