月〜金曜日 18時54分〜19時00分


兵庫・新温泉町、香美町

 平成17年(2005)4月に香住町、村岡町、美方町が合併して香美町、同年10月 に浜坂町、温泉町が合併して新温泉町がそれぞれ誕生した。海あり、山あり、温泉ありの両町は今、冬の味覚の王様・松葉ガニのシーズンで活気があふれ、グルメツアーの観光客らでにぎわっている。


 
湯村温泉(新温泉町) 放送 11月27日(月)
 新温泉町は湯村温泉を抱える温泉町と日本海に面する浜坂町が合併して誕生したが、第一の観光資源は何と言っても夢千代日記でも知られる湯村温泉。
 山峡の春來川の清流に沿うこの温泉は、平安時代初期の嘉祥元年(848)に慈覚大師によって開かれたと伝わる。大師が発見した源泉「荒湯」は、摂氏98度、日本一熱いと言われる温泉で、今ももうもうと湯煙をあげながら毎分470ℓの湯が湧き出している。お湯は弱アルカリ性で肌に優しく、湯上がりはさらっとして肌はつるつるの美人の湯であると言う。

慈覚大師

(写真は 慈覚大師)

薬師堂

 豊富な湯量を誇る荒湯は温泉旅館のほか各家庭にも給湯されている。土地の人びとがこの煮えたぎる湯壷で玉子や野菜などをゆでる風景もまた名物のひとつ。昔は春來川へ流れ出た温泉で洗濯をする風景も見られた。
 今は荒湯からあふれ出た温泉を引いて春來川沿いに「湯村温泉大根物語・ふれ愛の湯」と名づけられた足湯が設けられ、散策で疲れた足を癒す観光客が多い。温室やコイの養殖用の温池にも利用され、あらゆる方面で温泉は恵みをもたらしている。

(写真は 薬師堂)

 温泉街にある薬師堂には湯薬師像と温泉を発見した慈覚大師を祀っている。春来川沿いの「ふれあい手形散歩道」には、文化人や吉永小百合ら芸能人の手形があり、湯上がりの散歩を楽しくしている。
 夜になると日本で初めてとされる温泉地の景観ライトアップが行われている。湯村温泉地の春來川沿い、夢千代広場、夢千代橋、薬師堂の桜並木、正福寺などの観光スポットが、昼間の温泉街とは異なる幻想的な空間を現出している。ライトアップの時間は日没30分後から午後10時まで。

湯薬師像

(写真は 湯薬師像)


 
湯村温泉・夢千代の里
(新温泉町)
放送 11月28日(火)
 源泉の「荒湯」が発見されてから1200年に近い歴史を持つ湯村温泉だが、近くはドラマ「夢千代日記」の舞台となり、夢千代の里として人気が沸騰した。
 荒湯から夢千代橋を渡ると夢千代広場。そこには何やら吉永小百合の面影を伝える夢千代像が立ち、荒湯や温泉街を見おろしている。湯村温泉を訪れた観光客は、この夢千代像をバックに記念写真を撮り、湯村温泉とは切っても切れないシンボル的存在となっている。

夢千代像

(写真は 夢千代像)

夢千代館

 近くの「夢千代館」は湯村温泉博覧館で、ドラマ・夢千代日記の主舞台となった置屋「はる屋」と旅館「煙草屋」のセットを再現したり、夢千代日記物語の世界を切り絵風で紹介している。
ドラマ関連のコーナーばかりでなく、湯村温泉の昭和30年代の空間も再現されており、懐かしい昭和のよき時代にひととき戻ることができる。
 「平和祈念コミュニティ広場」では、被爆2世の夢千代を演じた吉永小百合さんが取り組んでいる平和維持活動が、吉永さん直筆の色紙やパネル、映像で紹介されている。

(写真は 夢千代館)

 湯村温泉街の中心部から北へ上がった標高275mの山の斜面にある「リフレッシュパークゆむら」は、温泉浴、森林浴、日光浴が楽しめる、文字通り心身が癒される新しい湯村温泉の施設。
 温泉が滝のように流れ落ちる滝風呂は豪快で爽快感が味わえる。このほか四季風呂、酒樽風呂、蒸気風呂、洞窟展望風呂の5種類の展望風呂が楽しめるほか、うたせ湯、あわ湯など8種類の健康風呂、25mの温水プールがあり、好みに合わせた温泉活用のリフレッシュができる。公園内には但馬ビーフをメニューの中心にしたレストランなどもあり、家族団らんの食事も楽しめる。

リフレッシュパーク ゆむら

(写真は リフレッシュパーク ゆむら)


 
浜坂に先人を偲ぶ(新温泉町) 放送 11月29日(水)
 浜坂先人記念館「以命亭」は、江戸時代中期に七釜村から浜坂に出てきて財をなし、造り酒屋を営みながら庄屋も務めた七釜屋・森家の屋敷を改修し、平成4年(1992)にオープンした郷土資料館。
 この資料館には浜坂に住む人びとが町に誇りを持って、先人たちの高い志を新しい町作りに生かそうとの思いが込められている。玄関の七釜屋の家紋の蛇の目を染め抜いたのれんをくぐると、森家の歴史や調度品などが展示されている。酒蔵を利用した以命亭ホールでは年間を通じてちりめん細工展、絵画展、書道展、写真展などさまざまな催しが開かれている。

浜坂先人記念館「以命亭」

(写真は 浜坂先人記念館「以命亭」)

西国三十三ヵ所地図

 森家の歴代当主には文人、教養人が多く、文化、経済、政治面など各方面へ秀でた人を出した。
文化、文政時代に俳諧の道を究めた4代目当主・森近三郎(藍尾)、明治時代に浜坂町と鳥取市に私塾「味道館」を設立して、1000人を超す門弟を教育した6代目当主・森與十郎の末弟・周一郎(梅園)らがいた。
 こうした当主らが江戸をはじめ各地を旅して富士登山記などの紀行文や西国三十三ヶ所道中地図などを残している。喜多川歌麿、葛飾北斎らの浮世絵、山岡鉄舟や高橋是清の書など、他の旧家と比べ文書、地図、書画類が多いのが以命亭の特色でもある。

(写真は 西国三十三ヵ所地図)

 「以命亭」は、二代目森與右衛門が屋敷の裏に茶室を備えた隠居場の庵を設けたのが起こりで、名称は中国の礼記の「君子は易に居て以て命を俟(ま)つ」から採った。
 以命亭の裏には味原川が流れ、かつては高瀬舟と呼ばれる小舟が川沿いの屋敷に荷物を運び、森家の川沿いの裏木戸には船着場が残っている。以命亭の周囲には旧家が多く、それぞれの家の石垣が味原川沿いに連なっている。野面積、矢羽積、亀甲積など、積まれた時代によって石垣の積み方が異なっており、これらの石垣沿いに整備された「あじわら小径」を散策するとまるで江戸時代に戻ったかのようだ。

味原川

(写真は 味原川)


 
香住のカニ(香美町) 放送 11月30日(木)
 香美町香住は日本海沿岸有数の漁業の町。その香住の一番の名物は何と言っても松葉ガニで、晩秋から冬の間、松葉ガニが水揚げされる漁港が最も活気づく季節である。
 荒海が育てた松葉ガニの水揚げのシーズンは11月から3月までの5ヶ月間で、真っ暗な午前3時、4時ごろにカニ漁に出ていた漁船が帰港して、早朝から活発なセリが始まる。値段を告げる早口の声と指の動きだけで、生きのよい松葉ガニが次々とセリ落とされ、京阪神や各方面へ出荷される。

松葉ガニ(ズワイガニ)

(写真は 松葉ガニ(ズワイガニ))

リュウグウノツカイ(海の文化館)

 冬の日本海沿岸の各地の旅館や民宿へは、冬の味覚の王者・松葉ガニを味わうグルメ客が訪れ、生きのよいカニを生で賞味したり、ゆでガニ、焼きガニ、カニすき、甲羅酒…と、カニ三昧に舌鼓を打っている。
 松葉ガニは200〜400メートルの大陸棚斜面に広く生息している。オスの大型の松葉ガニに人気が集まっているが、小型のメスもすこぶる美味で、特に卵巣が喜ばれる。網でカニが捕れるようになったのは、漁船が動力化されてからで、今日のようにカニが盛んに食卓に上るようになってからまだ100年にもならないと言う。

(写真は リュウグウノツカイ(海の文化館))

 日本海で捕れる新鮮な魚介類を販売しているかすみ朝市センターへは、カニのシーズンには多くの観光客が訪れ、水揚げされたばかりの松葉ガニの買い物を楽しんでいる。
 朝市センターのそばにある「海の文化館」には450種、1400点の魚類、甲殻類のはく製や1700点の貝類が展示されている。普段は図鑑でしか見られない美しい魚、珍しい魚、水族館では飼育が難しい魚のはく製がじっくり観察できる。中でもリュウグウノツカイと呼ばれる魚は、はく製にするのが難しく当館自慢の展示物。予約すれば焼きちくわ、イカの一夜干し、イワシのみりん干し、魚のさばき方などの体験実習ができる。

香りのお宿 庄屋

(写真は 香りのお宿 庄屋)


 
応挙の立体曼荼羅・大乗寺
(香美町)
放送 12月1日(金)
 応挙寺の呼称で知られる大乗寺は天平17年(745)行基が開山した。その後、寺は衰微していたが、江戸時代中期の安永年間(1772〜81)に住持の密蔵法印が伽藍(がらん)の再建に尽力、弟子の密英上人がこれを引き継いで伽藍を再興した。
 江戸時代中期の画家・円山応挙(1733〜95)は、息子の応瑞や弟子の呉春ら一門の弟子を引き連れて大乗寺を訪れ、竣工した客殿の各部屋に障壁画を描いたのが応挙寺の名の由来で、さながら円山派絵画の一大美術館とも言え、その力作に圧倒される。

客殿

(写真は 客殿)

芭蕉の間「郭子儀図」(応拳 筆)

 丹波国穴太(あなお)村(現亀岡市)の農家の生まれの応挙は、京で修業中にこの貧しい画家の才能を見抜いた大乗寺の密蔵、密英両住持が学費を援助した。その後、江戸で修業を積んで画家として大成し、円山派の始祖となった。修業中に受けた援助の恩返しに、大乗寺客殿に障壁画を描くことを引き受けた。
 障壁画は客殿仏間を中心に13室に165面(いずれも国・重文)。仏間の十一面観音菩薩像(国・重文)を中心に東には生産、経済を司る持国天、西には芸術、文化の広目天、南には政治の増長天、北には生命、医薬の多聞天の四天王が、観音を守るイメージの障壁画で立体曼荼羅を形作っている。

(写真は 芭蕉の間「郭子儀図」(応拳 筆))

 持国天が司る農業の間には農作業のさまざまな情景を描いて人の営みを表現している「四季耕作図(呉春筆)」、広目天が司る山水の間の「山水図(応挙筆)」は雄大な流れを描き山川草木など自然の摂理を表現、増長天が司る芭蕉の間にはすぐれた政治家であり人望のあった「郭子儀図(応挙筆)」、多聞天が司る仙人の間には不老長寿から生命、医薬をイメージした「群仙図(秀雪亭筆)」がそれぞれ描かれている。
 孔雀の間の「松に孔雀図(応挙筆)」は、襖に描かれた松の枝が前庭に向かって伸び、視線を向けさせた前庭にはクスノキの巨木や松があり、絵画空間と現実空間に一体感を持たせている。

孔雀の間「松に孔雀図」(応拳 筆)

(写真は 孔雀の間「松に孔雀図」(応拳 筆))


◇あ    し◇
湯村温泉JR山陰線浜坂駅からバスで湯村温泉下車。
浜坂町先人記念館以命亭JR山陰線浜坂駅下車徒歩10分。
かすみ朝市センター、香美町海の文化館JR山陰線香住駅下車徒歩20分。
カニ料理&宿・庄屋 JR山陰線香住駅下車徒歩5分。
大乗寺JR山陰線香住駅下車徒歩20分。
JR山陰線香住駅からバスで大乗寺下車すぐ。
◇問い合わせ先◇
新温泉町役場商工観光課0796−82−3111
温泉町観光協会0796−92−2000
温泉宿旅館・朝野屋0796−92−1000
湯村温泉博覧館・夢千代館0796−99−2300
リフレッシュパークゆむら0796−92−2002
浜坂観光協会0796−82−4580
浜坂町先人記念館・以命亭0796−82−4490
香美町香住観光協会0796−36−1234
かすみ朝市センター0796−36−4500
香美町海の文化館0796−36−4671
カニ料理&宿・庄屋0796−36−3512
大乗寺0796−36−0602

◆歴史街道とは

    関西は「歴史・文化の宝庫」として世界に誇れる地域です。歴史街道では、日本の歴史文化の魅力を楽しく体験し、実感できる旅のルートとエリアを設定しました。伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸といった主要歴史都市を時代の流れに沿ってたどる「メインルート」と各地域の特徴をテーマとして活かした3つの「ネットワーク」です。

 

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」

    の3つの目標を掲げ、その実現を目指しています。

 

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