月〜金曜日 18時54分〜19時00分


京都市・八坂神社

 年の瀬も押し詰まった各地の神社や寺院は初詣の参拝者を迎える準備に追われている。多くの初詣客でにぎわう京都市の八坂神社を訪れ、縁起ものの準備や伝統の白朮詣(おけらまいり)の由来などを尋ねた。


 
迎春の縁起もの 放送 12月25日(月)
 「祇園さん」と呼び親しまれている八坂神社の歴史は、平安遷都の約140年前、今から1350年前の飛鳥時代の斉明天皇2年(656)に素戔嗚命(すさのおのみこと)の神霊を祀ったことに始まる。素戔嗚命は日本神話で、あらゆる災厄の象徴である八岐大蛇(やまたのおろち)を退治して、地上に幸せをもたらしたとされる神である。
 八坂神社は初め祇園社または祇園感神院と称されていたが、明治維新の神仏分離令で八坂神社となった。全国に3000の分社があり、関西の初詣客の多さでも全国屈指の神社である。

御神矢

(写真は 御神矢)

干支の絵馬

 初詣の参拝者が新しい年の幸せを祈って買い求める縁起ものは、八坂神社では12月13日の事始めの日から売り出される。縁起ものには御神矢・すなわち破魔矢、干支の動物の絵馬などのほかほかに、八坂神社には「蘇民将来子孫者也(そみんしょうらいしそんのものなり)と記した八角木守りがある。
 縁起ものは家内安全、無病息災、除災招福、厄除開運、商売繁昌などの祈念が込められたもので、早速、新しい絵馬に願いを書いて奉納する参拝者もおり、八坂神社はひと足早く元旦の雰囲気が漂い始めている。

(写真は 干支の絵馬)

 「蘇民将来子孫者也」と書かれた八角木守りは、災難除け、魔除け、家門繁栄の御神徳があると言われ、正月に授かり各家でお守りとして掲げられる。
 みすぼらしい身なりの旅人が、金持ちの巨旦(こたん)将来に一夜の宿を乞うたがすげなく断られた。旅人は貧しい暮らしの弟の蘇民将来宅を訪ねたところ快く迎えて泊めてくれた。旅人はお礼に茅(ち)の輪と蘇民将来子孫者也と書いた護符を残して去ったが、この旅人が素戔嗚尊だった。
この伝説から八坂神社では祭神のお守りとして、参拝者に授けられるようになったのが、お守りの由来である。

八角木守り

(写真は 八角木守り)


 
白朮詣 放送 12月26日(火)
 大晦日から元旦にかけて御神火をいただくのが八坂神社の白朮詣(おけらまいり)。白朮詣の参拝者は境内の燈籠で燃え盛る白朮火を竹の繊維で編んだ吉兆縄に移し、火が消えないように火縄をくるくる回しながら家路に向かう。この風景は京の元旦の風物詩として全国に知られている。
 家庭に持ち帰った白朮火は神棚の灯明に灯され、新年の大福茶の湯をわかしたり、新年に食べる雑煮を煮る火種に使い、1年の無病息災を願うのが京都市民の元旦のしきたりとなっている。

「祇園削掛」拾遺都名所図会

(写真は 「祇園削掛」拾遺都名所図会)

左より 火鑚臼、火鑚杵

 白朮火は前夜から参籠潔斎した神職が、12月28日午前4時、古式さながらに火鑚杵(ひきりきね)と火鑚臼(ひきりうす)を使い木と木をこすり合わせて浄火を鑚り出す。この浄火は神前の燈籠に灯され1年中絶やすことなく御神火として灯り続ける。
 この御神火から境内3ヵ所に吊るされた燈籠に移され、願いを記した白朮木とともに夜を徹して焚かれる。氏子から奉納された白朮木を桧の箸を作る時にできる削り掛け(削り屑)と薬草の白朮の根を混ぜ合わせて焚き上げるのが白朮火。

(写真は 左より 火鑚臼、火鑚杵)

 白朮はキク科の植物で根が胃腸薬として効能がある薬草として昔から知られ、天武天皇が白朮を煎じて飲んだたことが日本書紀にも記されている。家に白朮火を持ち帰る火縄は、わら縄では火がすぐ消えてしまうので、竹の繊維で作った縄が使われている。
 白朮詣の様子は江戸時代に発刊された「拾遺都名所図会」にも「祇園削掛」として、にぎわう境内の様子が描かれている。当時、削掛神事とも言われ、参詣人が人の悪口を言う合い、一年中ムシャクシャしていた腹の虫を吐き出して気を晴らす風習があったようだ。

左より 白朮木、削り掛け、白朮

(写真は 左より 白朮木、削り掛け、白朮)

◇あ    し◇
八坂神社 JR京都駅、近鉄京都駅からバスで祇園下車すぐ。
京阪電鉄四条駅下車徒歩7分。
阪急電鉄河原町駅下車徒歩10分。
◇問い合わせ先◇
八坂神社 075-561-6155

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