月〜金曜日 18時54分〜19時00分


福井・美味いもの巡り 

 越前国・福井は古代から豊かな海の幸、山の幸に恵まれていた。北前船の寄港地でもあったことから蝦夷地の食べ物も入り、美味しいものがたくさんあった。日本海から北風の吹きつける冬の越前を訪れ、伝承料理、郷土料理など美味しいものを探訪した。


一乗谷朝倉氏の伝承料理
(福井市) 
放送 1月19日(月)
 福井市の市街地から東南へ10kmの地に一乗谷朝倉氏遺跡がある。戦国大名の朝倉氏は文明3年(1471)一乗谷に一乗谷城を築いて本拠地とし、天正元年(1573)織田信長に滅ぼされるまで5代、103年間にわたって強大な軍事力と富で越前の国を支配し栄華を極めた。

 一乗谷は一乗川に沿った狭い平地の両側に山がそびえた要害の地で、ここに朝倉氏の館、武家屋敷、寺院、町家、職人屋敷が建ち並び、最盛期には人口が1万人を超え、京文化を積極的に取り入れた城下町は、北陸の小京都と呼ばれていた。昭和42年(1967)から本格的な発掘調査が始まり、一乗谷朝倉氏遺跡の全容が約500年ぶりに明らかになった。


朝倉氏遺跡 復原町並

(写真は 朝倉氏遺跡 復原町並)

一乗ふるさと交流館


 一乗谷朝倉氏遺跡の南北200mの道路沿いには武家屋敷、職人らの町家が復原されている。平成19年(2007)に一乗谷朝倉氏遺跡の出土品が国の重要文化財に指定され、先に一乗谷朝倉氏遺跡が国の特別史跡、特別名勝に指定されており、これと合わせてトリプル指定となった。

 5代朝倉義景が永禄11年(1568)に室町幕府最後の将軍となった15代将軍・足利義昭を17の膳で持て成したと言う「伝承料理・朝倉膳」が伝わっている。 「一乗ふるさと交流館」では一乗地区に住む人びとの手で「朝倉膳」の一部が再現され、予約すればこの朝倉膳を味わうことができる。

(写真は 一乗ふるさと交流館)


 朝倉膳は「一乗ふるさと料理クラブ」の主婦たちが、一品一品心を込めて丁寧に作りあげている。採算は二の次で、喜んで食べてもらえることに喜びを感じている人たちばかりである。

 膳に並ぶ料理は「もち米と黒豆の黒豆ご飯」「サトイモと黒ゴマのごまころ」「ゼンマイの白和え」」「大豆をつぶして作る呉汁」「ナスとピーマンの味噌でんがく」「手打ちそば」「黒ゴマ水ようかん」など、全部で11品もありボリュウムたっぷり。なかでも珍しい料理が呉汁。水に浸した大豆をすりつぶして熱湯に入れ、味噌を入れたふわふわした感じの汁にしたもので、誰しも舌鼓を打つ。

伝承料理朝倉膳

(写真は 伝承料理朝倉膳)


越前おろしそばの極意
(越前市)
放送 1月20日(火)
 黒っぽいそばの上にたっぷりの大根おろし、花がつお、ネギを乗せ、出し汁をかけて食べるのが福井名物の「越前おろしそば」。

 越前市内には約50軒ものそば屋があるが、今回は「そば蔵・谷川」を訪ねた。店主の谷川正美さんは脱サラして40歳代半ばで開業したそば職人。知人のそば打ちを見て触発され、30歳のころから趣味でそば打ちを始めた。そば打ち道具の扱っていた会社員時代には得意先や社内でそば打ちを披露していたと言う。

そば打ち

(写真は そば打ち)

辛味大根 辛之助


 そんな谷川さんにショックを与えたのが、自家製粉のそば粉で打った透き通ったような「十割そば」との出会いだった。さっそく自宅に眠っていた石臼をとり出してそばの実を手挽きし、つなぎを使わず100%そば粉のそばを打った。この「十割そば」に自信を持ち「そば蔵・谷川」の開業にこぎつけた。

 その日に使うそば粉は毎日、石臼で自ら挽く自家製粉。粗挽きのそば粉で作った十割そばはやや太めで、そばの実が荒く混ざっている。かつお節は注文を受けてから削り、大根おろしは自家製の三種類の大根を用い、食べる直前におろされるので新鮮みたっぷり。そののど越しは絶妙で忘れられない一品になる。

(写真は 辛味大根 辛之助)


 そばは縄文時代に中国大陸から伝わり食用として栽培された。奈良時代に元正天皇がそばの栽培を奨励したと「続日本紀」に記されている。一乗谷に初めて城を築いた朝倉孝景が、戦時の非常食用としてそばを栽培させ、そばがき、そば餅などにして食べていた。

 慶長6年(1601)越前国・府中(現越前市武生)の領主として赴任した本多富正が、領内の荒れ地でそばの栽培の奨励、城下の医師と相談して、栄養価も高い大根おろしの汁をかけて食べる方法を考案させたのが「おろしそば」の始まりと言う。

おろしそば

(写真は おろしそば)


越前竹田の油あげ(坂井市)  放送 1月21日(水)

 福井県は油あげの消費量が日本一だと言う。坂井市丸岡町上竹田は山に囲まれた自然豊かな所で、油あげを使った竹田の郷土料理や浄土真宗にまつわる報恩講料理など、いずれも山の幸を活用した「ふるさとの味・おふくがの味」がある。茅葺き屋根の民家「千古の家」では、手打ちそばを味わうことができる。

 竹田地区の食文化を親から子へ守り伝えようと、竹田生活改善グループの主婦たちが「伝承料理講座」を開いてきた。さらに特産の油あげを使った「ゼンマイと油あげの煮物」「ジネンジョと油あげの煮物」などの伝承料理をまとめた冊子「ふるさと竹田の味」を発刊して伝承料理をPRした。


竹田の郷土料理

(写真は 竹田の郷土料理)

あげ焼ステーキ(竹田の油あげ谷口屋)

 上竹田には大正14年(1925)創業の高級豆腐・油あげの老舗「谷口屋」がある。おいしい油あげはまずおいしい豆腐作りに始まる。厳選された大豆と白山禅定(はくさんぜんじょう)の清水(せいすい)と呼ばれる地下水がおいしい豆腐を作る。

 こうして作られた木綿豆腐を40分から50分かけ、心を込めて丹念に油であげる。一辺が約15cm、厚さ4cmもある油あげは、一見すると厚あげのようだが、これが竹田の油あげ。この分厚くてふんわりとした油あげの中に無数の気泡があり、これがジューシーな食感を醸し出す秘訣。

(写真は あげ焼ステーキ(竹田の油あげ谷口屋))


 油あげは雪に閉ざされた竹田地区の貴重な蛋白源であった。また曹洞宗大本山・永平寺の精進料理として使われた。現代でも油あげは「あげ焼きステーキ」(フライパンで温め大根おろしとネギを乗せ、醤油をかけて食べる豪快な食べ方)や煮物などに入れるなど多様な食べ方があり、家庭料理の食材としての地位はゆるぎない。

 「千古の家」は、約700年前に建てられた民家で国の重要文化財。庭も国の登録記念物に指定されており、先祖は京都の朝廷の北面の武士だったと言う。手斧の削り跡が残る太い柱や梁などの重厚な造り、角屋(つのや)と言う珍しい茅葺き屋根など、建物自体も一見に値する。

千古の家

(写真は 千古の家)


冬はこたつで水ようかん
(福井市) 
放送 1月22日(木)
 冬になると食べたくなり、こたつに入り一家団欒の場に欠かせない福井のお菓子が意外にも水ようかん。この季節になるとデパートやスーパー、コンビニの菓子売り場の棚には水ようかんが並び、菓子店の店先では他の菓子を押しのけるように水ようかんがずらりと並んでおり、通がかりの人が自由に味見できる。

 福井市内の菓子屋さんでは冬場は水ようかんの製造に追われる。昭和12年(1937)創業の菓子店「えがわ」は、ケーキなどの洋菓子製造が主力の菓子店だが、毎年11月1日から翌年3月末までは水ようかんの製造販売が主力になり、その生産量は県内の6-7割を占める。

菓子司 えがわ

(写真は 菓子司 えがわ)

水ようかん作り


 水ようかんの材料は小豆あん、寒天、ザラメ砂糖、黒砂糖。作り方はいたってシンプルでこれらの材料を熱湯でとかし、1時間ほど煮込んで四角い紙箱に流し込み、冷やして固める。地元では紙箱に入ったまま店頭に並べられる。厚さは約2cmと薄く、専用のヘラで好みの大きさにすくい取って食べる。

 黒砂糖が使われていることで香ばしさが増し、冬の菓子にふさわしいこっくりとした味となる。少しざらっとした食感や冷たいのど越しは水ようかん独特のものである。正月に里帰りした家族たちがこたつを囲んでの一家団欒、久しぶりに再会した友人同士の語らいの場には必ず登場するのが水ようかんと言える。

(写真は 水ようかん作り)


 冷やした水ようかんは暑い夏の菓子と誰しも思う。夏の季語にもなっている水ようかんが、なぜ福井では寒い冬に食べ、夏には食べないのか?。地元の人や菓子店主に尋ねても「さあー、なぜでしょう」とか「昔から冬に食べるものと思っているので疑問に思ったことがない」などと言い、誰も違和感を抱いていない。

 菓子店主らが文献などを調べてもその由来はわからない。関西では水分が多いようかんを「丁稚ようかん」と言う。丁稚が正月に里帰りする時、主人が土産に持たせたようかんを「もったない」と、水で薄めて練りなおして食べたのが福井の丁稚ようかんで、これが水ようかんの起こりとの珍説?、いや真説とも言える説もある。

水ようかん

(写真は 水ようかん)


王者の風格・越前ガニ
(坂井市) 
放送 1月23日(金)

 福井の冬の味覚の王様は越前ガニ。越前ガニの漁期は毎年11月6日から翌年3月20日までとなっている。福井県内で水揚げされる越前ガニの足には黄色タグが取りつけられ、品質とブランドを証明している。

 福井県北部の坂井市の三国港では、全国的にも珍しい夕方にセリが行われる。朝、出港した漁船が獲ったカニをその日の夕方に水揚げし、すぐセリにかけて鮮度を落とすことなく業者の手に渡す。新鮮な越前カニは料亭や旅館、ホテル、レストランなどの高級カニ料理となって消費者の口に入り、消費者に渡るまでの時間的なロスが少ないのが夕(ゆう)セリのメリットである。

三国港の夕(ゆう)セリ

(写真は 三国港の夕(ゆう)セリ)

福井藩主松平春嶽ゆかりの品(望洋楼)


 福井の越前海岸沖で獲れるズワイガニを越前ガニ、山陰から丹後にかけての沖合いで獲れるズワイガニを松葉ガニと言う。一般に雄をズワイガニ、雌をセイコガニ、脱皮したばかりのカニを水ガニと言い、それぞれ漁期が異なり味も違う。

 三国港近くの日本海に面する旅館「望洋楼」は明治時代の創業の老舗旅館。旅館を営む前は北前船の廻船問屋を営んでいた。幕末の第16代福井藩主・松平春嶽をはじめ多くの客人に愛されてきた望洋楼には、春嶽ゆかりの品々も伝わっており、老舗旅館らしい雰囲気があふれている。

(写真は 福井藩主松平春嶽ゆかりの品
(望洋楼))


 越前ガニのフルコースはズワイガニ、セイコガニがそれぞれ1匹つき、カニ刺、焼きガニ、ゆでガニに魚介類などが並び、カニすきのつくところもある。ズワイガニのプルプルした食感の足の身、濃厚なカニミソ、セイコガニの外子、内子と呼ばれる卵や卵巣など、絶品のカニづくしの味はいつまでも忘れられない。

 カニづくしの料理に満足すれば、海が眺められる望洋楼の露天風呂にゆったりとつかり、最高の海の幸を提供してくれた日本海に向かって「ありがとう!」と叫びたくなる。

かに刺し(望洋楼)

(写真は かに刺し(望洋楼))


◇あ    し◇
一乗谷朝倉氏遺跡JR越美北線一乗谷駅下車徒歩20分。 
JR北陸線福井駅からバスで一乗谷朝倉館前下車すぐ。

一乗ふるさと交流館JR北陸線福井駅からバスで東新町下車すぐ。 

そば蔵・谷川JR北陸線武生駅下車徒歩15分。 

千古の家、谷口屋JR北陸線福井駅または丸岡駅からバスで本丸岡で乗り換え
竹田下車すぐ。 

えがわJR北陸線福井駅からバスで照手町下車徒歩5分。 

望洋楼えちぜん鉄道三国港駅下車徒歩15分。 
えちぜん鉄道三国港駅からバスで米ケ脇下車すぐ。

◇問い合わせ先◇

福井県観光連盟0776-20-0741 

朝倉氏遺跡保存会0776-41-2330 

一乗ふるさと交流館0776-43-2101 

そば蔵・谷川0778-23-5001 

千古の家0776-67-2111 

谷口屋0776-67-2202 

えがわ0776-22-4952 

望洋楼0776-82-0067 


◆歴史街道とは

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    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
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  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」

    の3つの目標を掲げ、その実現を目指しています。

 

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