月〜金曜日 18時54分〜19時00分


福知山市 

 福知山市は京都府の北西部に位置し、平成18年(2006)に周辺の大江町、三和町、夜久野町の3町を編入合併して市域が広がった。中世以降、北近畿の中心地として発展、由良川の舟運や陸路の要衝の地となり、明治時代以降は鉄道の開通で山陰地方の物資の中継地となった。


福知山城と佐藤太清
記念美術館 
放送 2月2日(月)
 福知山城は天正8年(1580)ごろ、織田信長の命を受けて丹波を平定した明智光秀が丹波の拠点として築城に着手、同時に城下町の整備も始めた。本能寺の変後、山崎の戦で羽柴秀吉に敗れた後も秀吉の配下の武将が城主となり、関ヶ原の戦のころには城と城下町の整備が終わり、現在の福知山の基礎ができた。

 郷土資料館となっている3層4階の天守閣は、昭和61年(1986)に再建されたものだが、銅門(あかがねもん)番所と天守台などの石垣は光秀築城当時のものである。
福知山城

(写真は 福知山城)

福知山故城之図(模写)


 約400年の歳月に耐えて築城当時の面影をそのまま伝えている石垣は、穴太積(あのうづ)み、野面積(のづらづ)み、乱石積みなどと呼ばれる自然石をそのまま用いた豪放なもので、五輪塔や宝篋印塔など大量の石塔が使われているのも福知山城の特徴のひとつ。

 光秀は主君・信長を討ったことでその評価を落としたが、城下町づくりの際には町民の税を免除するなどして、今日の福知山市の基礎を築いた武将として、今も市民らから敬われ、親しまれている。

(写真は 福知山故城之図(模写))


 福知山城公園の一角にある城の櫓を外観にした福知山市佐藤太清記念美術館は、福知山市出身の佐藤太清(たいせい)画伯の作品を展示している。佐藤画伯は自然の風景や花鳥を題材にして、その生命力や一瞬のひらめきを独自の表現力で現代的な日本画を完成させ、平成4年(1992)文化勲章を受章した。

 美術館には佐藤画伯の60余点の作品とデッサン、スケッチブックなどを収蔵、展示している。これらの作品は観賞する人びとに深い感動と安らぎを与えており、館内には画伯アトリエも再現されている。

佐藤太清記念美術館

(写真は 佐藤太清記念美術館)


由良川と治水記念館  放送 2月3日(火)
 福知山市内を流れる由良川は、京都府北部の福井、滋賀県境に源を発し、府内を北流して福知山市内で土師川と合流して日本海に注ぐ北近畿最大の一級河川。かつては日本海に通じる北近畿の経済の動脈としての舟運でにぎわい、現在も流域沿いの美しい自然景観と飲み水や農業、工業用水など豊かな恵をもたらしている。

 その一方で福知山市の下流で川幅が狭くなるため沿岸住民は洪水に悩まされ、福知山市民は洪水との戦いが続き、その歴史が刻まれた跡が市内のあちこちに残っている。

「タカ」

(写真は 「タカ」)

浸水の跡(昭和28年 台風13号)


 福知山城を築いた明智光秀も由良川の治水には苦労したようだ。由良川の堤防決壊を防ぐため堤防に竹を植えて補強しており、今も由良川の堤防に「明智薮」と呼ばれる竹薮が残っている。

 由良川の堤防決壊、氾濫による歴史に残る大水害が、明治29年(1896)と明治40年(1907)、昭和28年(1953)に福知山市を襲い壊滅的な打撃を与えた。明治13年(1880)に建築され、呉服屋を営んでいた町家を活用した福知山市治水記念館は、こうした水害との戦いの歴史を伝えている。

(写真は 浸水の跡(昭和28年 台風13号))


 治水記念館になった町家には洪水時に荷物を2階へ避難させるための「タカ」と呼ばれる吹き抜けとテラス、荷揚げ用の滑車が設けられている。屋根裏には水屋(みずや)と呼ばれる避難部屋を備えているなど、建物そのものが水害との戦いの歴史資料である。

 館内には水害時の状況を再現したジオラマ、浸水時の水位の跡が残るふすま、過去の水害の水位を表示した水位モニュメントなど生々しい資料がいっぱい。ほかに由良川と地域の暮らしを物語る民具なども展示されている。

水位塔

(写真は 水位塔)


福知山鉄道館ポッポランド  放送 2月4日(水)

 JR福知山駅から徒歩で20分の所にある新町商店街に、鉄道資料を集めた「福知山鉄道館ポッポランド」がある。全国でも珍しい商店街の中にあるこの鉄道資料館は、福知山市と旧大江町を結んでいた北丹鉄道で使用されていた品々を展示するため、新町商店街事業協同組合によって平成10年(1998)にオープンした。

 北丹鉄道は大正12年(1923)に開業以来、沿線住民の足となっていたが、乗客や貨物の減少で昭和46年(1971)に廃止となった。その後、福知山-宮津間に北近畿タンゴ鉄道が開通し、かつての北丹鉄道沿線の住民の足となっている。
JR福知山駅構内の模型

(写真は JR福知山駅構内の模型)

通票閉塞器


 「福知山鉄道館ポッポランド」で注目されているのが、福知山駅構内の線路配置を忠実に再現した150分の1の模型で、福知山市制60周年を記念して平成9年(1997)に製作された。福知山駅は山陰線、福知山線、KTR宮福線のレールが交わる鉄道の拠点で、福知山市の発展に大きく貢献した。
 現在、駅周辺の整備事業が進められ、福知山駅も新しく生まれかわるため、後世にかつての福知山駅の姿を残そうと製作された。模型の駅構内を模型の電車や蒸気機関車が走る姿は、鉄道ファンならずとも見とれてしまう。

(写真は 通票閉塞器)


 このほか館内には蒸気機関車C57形式の動輪、単線区間では安全な列車運転に欠かせなかった通票閉塞器、全国各駅の入場券、英国の鉄道ポスターなどが展示されている。ポッポランド2号館にはC58形式の蒸気機関車が展示されている。

 展示されているミニSLはSL史に長く親しまれたC11を12分の1に縮小したもので、毎年秋に開催される「ミニSLフェスタ」では、このミニSLが引っぱる列車が子供たちを乗せて商店街を走り、人気を集める。

ポッポランド2号館

(写真は ポッポランド2号館)


大江山の鬼伝説  放送 2月5日(木)
 全長8kmの稜線を描く大江山連峰の最高峰・千丈ヶ嶽は、鬼の大将・酒呑童子が棲んだ山としての伝説で名高い。平安時代、都から姫君を次々にさらっていた酒呑童子を退治するため、摂津源氏の祖と言われた源満仲の長男・源頼光(よりみつ)が大江山へ差し向けられた。

 酒呑童子の屋敷にたどりついた頼光とその家臣で四天王の渡辺綱、碓井貞光、坂田金時、卜部季武は、神便鬼毒酒を酒呑童子とその手下の鬼たちに飲ませて酔いつぶし、鬼どもを討ち果たした。

鬼のモニュメント(成田亨 作)

(写真は 鬼のモニュメント(成田亨 作))

日本の鬼の交流博物館


 大江山にはこのほかに二つの鬼退治伝説があるが、最も有名なのは酒呑童子の伝説で、鬼退治をした源頼光より酒呑童子の方が主役になっている。

 これらの鬼伝説に伴って大江山付近には多くの鬼にまつわる伝承の地がある。酒呑童子の里を見下ろす丘には、ウルトラマンをデザインした成田亨氏制作の鬼のモニュメントが立っている。ほかに鬼の足跡や頼光の腰掛け岩、鬼の岩屋などがあり、大江山の観光スポットになっている。

(写真は 日本の鬼の交流博物館)


 鬼伝承の極め付けは酒呑童子の里にある「日本の鬼の交流博物館」。高さ5m、重さ10トンの日本一の大鬼瓦が博物館前で出迎えてくれる。

 円形の屋根の両側に鬼の角をイメージした2本の角が突き出た博物館内には「鬼とは何物か」「大江山の3つの鬼伝説の紹介」「日本の鬼瓦の推移」「チビッ子鬼」「世界の鬼」などのコーナーに分かれ、鬼瓦や鬼面、絵本、絵巻物など、鬼にまつわる資料を展示している。これらをじっくり眺めていると鬼の不思議な存在が見えてきそうだ。

世界の鬼

(写真は 世界の鬼)


元伊勢三社  放送 2月6日(金)

 大江山南麓には「元伊勢」と呼ばれる神社がある。JR福知山駅と宮津を結ぶ北近畿タンゴ鉄道宮福線大江山高校前駅から歩いて10分、船岡山と呼ばれる丘陵に鎮座するのが元伊勢外宮豊受大神社。その北の大江山口内宮駅の近くに鎮座するのが元伊勢内宮皇大神社。

 元伊勢内宮皇大神社の祭神は天照大神で、元伊勢外宮豊受大神社の祭神は豊受大神で、いずれも伊勢神宮の内宮と外宮の元伊勢で、今も地元の人たちから篤い崇敬を集め敬われている。

元伊勢外官豊受大神社

(写真は 元伊勢外宮豊受大神社)

元伊勢内官皇大神社


 皇室の祖・天照大神は当初は皇居内に祀られていたが、天照大神と御殿をひとつにするのは畏れ多いと、第10代崇神天皇の代に大和国・笠縫村に遷し祀られた。その後、第11代垂仁天皇の時代に天皇の皇女・倭姫命(やまとひめのみこと)が、天照大神を祀る地を求めて各地を巡幸の後、伊勢の地に祀られることになった。

 倭姫命が各地を巡行している途中、大江山の麓のこの地に天照大神を一時祀ったのが元伊勢内宮皇大神社で、4年後に再び巡行して伊勢の地に祀られたと伝えられている。

(写真は 元伊勢内宮皇大神社)


 元伊勢内宮皇大神社の黒木の鳥居は、最も原始的な形の鳥居で、黒木すなわち皮つきの丸木をそのまま使ったもので、当神社と京都市の野宮神社にあり、全国で2例しかない。

 元伊勢外宮豊受大神社の祭神・豊受大神は農業の神様で、この地に遷座した天照大神が呼び寄せた。元伊勢天岩戸神社は五十鈴川渓谷に鎮座する神社で、山から神が降臨した所と伝えられ、古木に覆われ清流の中に奇岩が点在する幽境の地には、本殿と神が座したと言う御座石(みくらいし)がある。

天岩戸神

(写真は 天岩戸神社)


◇あ    し◇
福知山城、佐藤太清記念美術館JR福知山駅下車徒歩15分。 

福知山市治水記念館JR福知山駅下車徒歩25分。 
JR福知山駅からバスで広小路下車徒歩5分。

福知山鉄道館ポッポランドJR福知山駅下車徒歩20分。 
JR福知山駅からバスで広小路下車すぐ。

酒呑童子の里、日本の鬼の交流博物館
北近畿タンゴ鉄道宮福線大江山口内宮駅から
バスで大江山の家下車すぐ。
千丈ヶ嶽(大江山) 北近畿タンゴ鉄道宮福線大江山口内宮駅からバスで大江山の家下車徒歩約1時間40分。

元伊勢外宮豊受大神北近畿タンゴ鉄道宮福線大江高校前駅下車徒歩10分。 

元伊勢内宮皇大神社北近畿タンゴ鉄道宮福線大江山口内宮駅下車徒歩15分。 

◇問い合わせ先◇

福知山市観光振興課0773-22-6111 

福知山城0773-23-9564 

佐藤太清記念美術館0773-23-2316 

福知山市治水記念館0773-22-4200 

福知山鉄道館ポッポランド0773-23-5430 

酒呑童子の里0773-56-0095 

日本の鬼の交流博物館0773-56-1996 

元伊勢外宮豊受大神0773-56-1560 

元伊勢内宮皇大神社0773-56-1011 


◆歴史街道とは

    関西は「歴史・文化の宝庫」として世界に誇れる地域です。歴史街道では、日本の歴史文化の魅力を楽しく体験し、実感できる旅のルートとエリアを設定しました。伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸といった主要歴史都市を時代の流れに沿ってたどる「メインルート」と各地域の特徴をテーマとして活かした3つの「ネットワーク」です。

 

    歴史街道計画では、これらのルートを舞台に
  「日本文化の発信基地づくり」
  「新しい余暇ゾーンづくり」
  「歴史文化を活かした地域づくり」

    の3つの目標を掲げ、その実現を目指しています。

 

◆歴史街道倶楽部のご紹介

    あなたも「関西の歴史や文化を楽しみながら探求する」歴史街道倶楽部に参加しませんか?
    歴史街道倶楽部では、関西各地の様々な情報のご提供や、ウォーキング、歴史講演会など楽しいイベントを企画しています。
   倶楽部入会の資料をご希望の方は、
 ハガキにあなたのご住所、お名前を明記の上、
          郵便番号 530−6691
          大阪市北区中之島センタービル内郵便局私書箱19号
                  「 A係 」
へお送り下さい。
   歴史街道倶楽部の概要を解説したパンフレットと申込み用紙をご送付いたします。
       FAXでも受け付けております。FAX番号:06−6448−8698   

歴史街道推進協議会