21世紀の第九
[指揮]ケン・シェ
[管弦楽]日本センチュリー交響楽団
[合唱]京都バッハ・アカデミー合唱団
[ソプラノ]尾崎比佐子
[アルト]福原寿美枝
[テノール]松本薫平
[バリトン]キュウ・ウォン・ハン
日時 |
2011年12月28日(水) 19:00 開演 18:00 開場 |
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会場 | ザ・シンフォニーホール |
料金 | A 6,000円 B 4,500円 C 売切れ |
一般発売日 | 2011年7月24日(日) |
優先予約日 | 2011年7月22日(金) |
プログラム | ベートーヴェン:交響曲 第9番「合唱付」 |
お問い合わせ先 | ABCチケットセンター 06-6453-6000 |
佐渡裕さんからタクトと魂を受け継ぎ、
新たなる「21世紀の第九」で鮮烈なザ・シンフォニーホールデビューを果す
ケン・シェさんに直撃インタビュー!!
若きマエストロの燃える想いが炸裂します!!
Q 指揮者になろうと思われたきっかけは?
最初は、指揮者になろうとは全く思っていませんでした。父が、私が医者になる事を希望していたので、高校では科学の勉強に集中していたのですが、それは私の本意ではありませんでした。大学でも、最初は法律の勉強をしていましたが、音楽に対する情熱から、音楽専攻に変更してピアノと打楽器に打ち込んでいました。ですが20歳のときにハンドボールで怪我をしてしまって、状況が変わってしまったのです。
悩んでいた時に、テレビで小澤征爾さんがベルリン・フィルの野外コンサートを指揮されている姿を観て大変感動しました。また、バンクーバー・ユース・シンフォニーで私が打楽器奏者として演奏していた時に、秋山和慶さんが「カルミナ・ブラーナ」を指揮されている姿に大変感銘を受けました。秋山先生の指揮は、大変明確かつ音楽的で、もし今どこの部分を演奏しているのか分からなくなってしまっても、先生を見れば誰でもすぐに分かる、と友人に話したことを覚えています。このお二人の存在が、指揮者になろうと思った最初のきっかけです。それ以来、指揮をすることは常に心の片隅にあり、
21歳の時、初めて職業としての「指揮者」を志すようになりました。
Q カナダで生まれ、現地の音楽大学で音楽を勉強されていたマエストロですが、日本に来られたきっかけとは?
大学3年生の時に、オックスフォード音楽祭で会った友人を訪ねるために来日して、私が指揮者に興味があるということを話しました。友人は斎藤秀雄氏の最初のアシスタントだった岡部守弘氏を紹介してくれました。マエストロ小澤氏、秋山氏、大友氏、沼尻氏など多くの素晴らしい指揮者を輩出されている岡部先生ですが、この時すでに桐朋学園を引退されていて、最初は私に会おうとはしてくださらなかったのです。それでも、駅で15分
だけなら良いということでお会いしたところ、その15分が3時間にも及ぶ素晴らしい会話になり、先生は私に生徒になるよう仰って下さいました。岡部先生と僕の間には何か共通の感覚があり、最初の出会いからお互いに何か特別な絆を感じていたように思います。先生のもと、桐朋学園で勉強することになりましたが、日本語が話せなかったので最初は本当に大変で、1年目は非常に辛かったです。また一文無しでしたので、いくつかアルバイトをしなければなりませんでしたし、最初に借りたアパートはお風呂やシャワーすらありませんでした。ですが幸いにも、素晴らしい友人たちのおかげで乗り越えることができました。
Q マエストロ佐渡裕さんとの出会いについて教えていただけますか?
マエストロ佐渡との出会いは、2003年に私がパシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)に副指揮者として初めて参加した時のことでした。背が高く、音楽的に圧倒的な存在感を放っておられ、また周囲を全て受け入れるような、優しくてあたたかいオーラをこれほど強く日本人男性から感じたのは初めてでした。音楽的な師であるだけでなく、素晴らしい友人でもあります。音楽のことのみならず、人生のことも尋ねることができる兄のような存在です。私はバーンスタインを尊敬していますので、バーンスタインがどんな風に指揮をしたのか、どんな人柄だったのか、などの話を佐渡さんから聞くことができ、大変興味深かったです。
ちなみに、佐渡さんと私は、共通の趣味や考え方をたくさん持っています。例えば、私達は食べることが大好きで、マヨネーズが好きということも共通していますし、二人ともよく食べよく飲みます。一度回転寿司に一緒に行ったのですが、回転寿司のレーンから寿司が見えなくなるほど食べました! また二人ともゴルフが好きで、ゴルフ場や練習場に一緒に行きました。彼は本当に練習熱心で、ゴルフのラウンドが終わった後も自分の
スコアに満足できず、すぐに練習場に行ったこともありました。
Q 世界の様々なオーケストラで指揮をされており、今は、バンクーバーで主に躍されていますが。
バンクーバーはとてもユニークな都市です。多文化国家のカナダには様々なバックグラウンドの方が集まっていますが、オーケストラも同様で、カナダのオーケストラはとてもオープンマインドで柔軟性がありますね。これまで米国、ブラジル、日本、台湾、フランス、フィンランド、カナダ、中国など世界中で指揮をする機会がありましたが、それぞれの国の文化やパーソナリティを知ることができ、楽しい学びの経験になっています。
日本のオーケストラは、音楽的に本当に素晴らしい技術を持っていると思います。指揮者がオーケストラから引き出そうとすることに敏感に反応し、それを実現してくれるのです。日本センチュリー交響楽団を初めて指揮したのは2008年でしたが、素晴らしい経験でした。関西でHPAC以外のオーケストラを指揮をしたのは初めてでしたし、
素晴らしいコラボレーションが生まれたと思います。団員の方たちはとてもあたたかくて反応も良く、素晴らしい音楽と音色を奏でますし、良いチームスピリットを持っていますね。
Q マエストロにとって、ベートーヴェンの第九とは、どういう存在でしょうか?
ベートーヴェンは私にとって最も崇拝する作曲家の一人です。彼は様々な性格を持っており、音楽をロマン派の方向へ開花させた改革者でもありました。またとてもロマンティックな人で、人生の悟りに関して多くの考えを持っていたのではないかと思います。
第九は、音楽の世界に無数の新しいアイデアと方法を開拓した、革命的な最高傑作であり、全ての指揮者の人生にとって節目となる特別な存在です。
世界の創造にも例えられる低弦楽器のざわめきから始まる第1楽章、これまで常識であった楽章の順序を変えた第2楽章のスケルツォ。叙情的でゆったりとした速度の第3楽章は、より個人的な、もっと言えばベートーヴェンが探し求めた霊的世界への探究を表しています。そして、ワーグナーが「テラー・ファンファーレ(恐怖のファンファーレ)」と呼ぶ、不協和音と狂気に満ちたパッセージから始まる第4楽章。第1楽章から第3楽章までの旋律が短く引用され、それを弦楽器がはねつけますが、あの「歓喜の歌」の旋律が入ってくると、楽しさと歓びが益々加速し、そして合唱も加わり、クライマックスでは、「そのやさしい翼に抱かれれば、すべての者は兄弟になる」と歌われる…本当に聴きどころが沢山あります! 光栄なことに私は、第九に対して造詣が深いクルト・マズア氏の指導のもと、ブラジルで第九を指揮する機会を頂いた事があります。第九を指揮することは、私にとって大変意義深いことなのです。
Q 関西では、兵庫県立芸術文化センターでよく指揮をされていますが、関西、特に大阪の印象はいかがですか?
大阪は、私にとって第2の故郷のようになりましたし、関西の人々に大きな愛を感じるようになりました。阪神タイガースの大ファンにもなりましたよ。ファン魂がとても強くてエネルギッシュですし、試合中に甲子園球場から聞こえてくる音はとにかく大きくて圧倒される!
また大阪は食べ物がとても美味しいですね。十三に、よく行くお気に入りのお好み焼き屋さんがあります。本当に美味しくて、広島焼きとは全く違いますね。また、梅田には、夜遅くによく行くたこ焼き屋さんもあります。うどんはまだ食べたことがないので、この機会に食べてみたいですね。
Q ザ・シンフォニーホールとの出会いについてお話いただけますか?
初めての出会いは2003年で、PMFのアシスタント・コンダクターとしてで、とても大きなコンサートホールではないけれども、それがかえってシンプルで親しみがあると感じました。
ひとたび、音楽が始まれば、その音響の素晴らしさに驚かされたことを覚えています。お互いの音をステージ上で聴くことができ、親密に反応しあうことができますし、ステージと聴衆の繋がりが非常に密なので、彼らも音楽を作っている過程の一部だということを実感したことを記憶しています。昨年のマエストロ佐渡の「21世紀の第九」公演にも伺いましたが、音響がとても澄んでいて非常に素晴らしく、間違いなく卓越したホールだと改めて思いました。
Q その「21世紀の第九」を、今度はケン・シェさんが、佐渡さんからタクトを継ぐ形で開催されますが、ぜひ意気込みをお願いします。
マエストロ佐渡から、このバトンを受け取ることは、大変名誉なことです。ベートーヴェンの第九を18年間指揮されてきて、マエストロはとても深くこの交響曲を理解し、深い愛情をもっておられます。私は、マエストロ佐渡が築いてきたこの素晴らしい伝統を継続していくことを、そして、この偉大なる名曲に対する私の考えと解釈を、皆様と共有できることを楽しみにしています。
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21世紀の第九
ザ・シンフォニーホール年末の風物詩として、満席のお客さまに愛され続けた「佐渡裕指揮 21世紀の第九」。
昨年12月末の全5公演も記憶に新しいところです。
今回、佐渡裕からタクトを受け継ぐのは新進気鋭の指揮者=ケン・シェ。リニューアルされる新たな「21世紀の第九」にご期待ください!
1993年から僕の一年の締めくくりだった、ザ・シンフォニーホール「21世紀の第九」の指揮台を、今年から若き才能あふれる指揮者ケン・シェ氏に委ねることとなりました。
ケンとの出会いは2003年、札幌のパシフィック・ミュージック・フェスティバルでした。その後僕は、パリのラムルー管弦楽団や兵庫芸術文化センター管弦楽団の客演、「題名のない音楽会」出演などに推薦を続けてきました。彼は実際、素晴らしい成果を上げてくれています。
ケンが今年からこの指揮台を務めることで、同じ曲なのに毎回新しい発見があり、成功と失敗を繰り返して、この世界遺産ともいえる大曲の一音一音、全ての音を自分の身体の中にしっかりと刻み込むことでしょう。それは彼をますます成長させ、毎年進化した第九を皆さんに届けてくれるはずです。
ケンちゃん、この「21世紀の第九」は、ザ・シンフォニーホールの一年の締めくくり、それは大阪の締めくくり、関西の締めくくり。聴きに来てくださるお客様の、来年も良い年でありますようにと願いのこもった特別な演奏会なのです。演奏者とお客様とが一緒に創るこの特別な場所の指揮を、貴方に託します!
佐渡 裕