前橋汀子 ヴァイオリン名曲選
[ヴァイオリン]前橋汀子
[ピアノ]松本和将
日時 |
2015年6月27日(土) 14:00 開演 13:00 開場 |
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会場 | ザ・シンフォニーホール |
料金 | 全席指定 3,500円 |
一般発売日 | 2015年1月25日(日) |
優先予約日 | 2015年1月23日(金) |
プログラム | ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 「春」 op.24 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 ヴィエニャフスキー:モスクワの思い出 ドヴォルザーク:我が母の教え給いし歌 ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 op.72-2 クライスラー:中国の太鼓 op.3 シューベルト:アヴェ・マリア D.839 <懐かしの名曲集>(丸山貴幸編) 枯葉 “ウエストサイドストーリー”より「マリア」 イエスタデイ “オペラ座の怪人”より「オーバーチュア」 愛の賛歌 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン |
お問い合わせ先 | ABCチケットインフォメーション 06-6453-6000 |
前橋汀子スペシャルインタビュー!
2015年で演奏活動53年目を迎えられる前橋汀子さん。日本人として初めて旧ソ連に留学されて日本を代表する国際的ヴァイオリニストとして活動を続けています。ザ・シンフォニーホールでも1982年の開館以降、数多くの名演が聴衆の心に焼き付いています。今年もリサイタル公演にご出演頂く前橋さんに色々なお話をお伺いしました。
−幼年期にヴァイオリンを始めて、小野アンナ先生に出会われてからソ連への憧れがもの凄く強くなり、中学生になって私はソ連に行くんだという強い決心を持たれたとお聞きしていますが、そのきっかけとは?
「小学校3、4年の時に日ソ国交回復後の文化使節として来日したヴァイオリンの巨匠オイストラフのコンサートを聴いてからです。母には色々な演奏会に連れて行ってもらいましたが、日比谷公会堂で行われた彼の演奏会で、ヴァイオリンの音が本当にふくよかで、まるで体の一部となって自由自在に動いていると感じ、子供心に非常に感銘を受けました。私はまだ小さく、小さな楽器しか弾けなかったので、ヴァイオリンの本質が聞こえたような気がしました。それで単純にソ連に行けばああいう風に弾けるんだと思ってしまったんでしょうね。それで私はソ連に行って勉強するんだと決めたんです。その時は子供の夢だったんです。そこへ行った人もいないし、どうやって行けるのかも分かりませんでした。」
−5才からヴァイオリンを手に触れられて、どのようなコンサートを聞きに行かれたんですか?
「母が貴重で高価なチケットを1枚だけ手に入れて、私だけ会場に入るんですよ。そして母は終演まで会場の外で待っている。とにかく一流の演奏家の演奏を私に聴かせたい一心で連れて行ってくれたんですね。そして53年のシゲティ先生の演奏会では、たまたま通路にいた私の頭を彼が通りがかりに撫でてくれた事が記憶に残っています。またその時プロコフィエフの逝去の報に接し、アンコールに1番のコンチェルトの第2楽章のスケルツォを弾かれたんです。話は飛びますが、その10年後にレニングラード(現サンクトペテルブルグ)でプロコフィエフの没後10年のガラ・コンサートがあり、それに出演させて頂いてソナタの2番の第3、4楽章を弾きました。何かご縁があるんでしょうね。」
−17才で単身ソ連に行かれて、言葉にできないような苦楽を体験されたと思いますが?
「今振り返ってみるとソ連も特別な時代でしたよね。面白いと言ったら語弊があるかもしれませんが、冷戦時代で食糧難でもあり、寮に住んでいましたが練習したくても場所が無かったり、お湯が出ないのでお風呂にも苦労しました。日常生活は大変ではありましたが、勉強する環境は最高でした。当時は演奏家の最盛期で、キラ星のごとく才能あふれる音楽家がいて、そこに立ち会えた訳ですから。」
−一時帰国されてから、アメリカのジュリアード音楽院という全く違う環境に行かれる訳ですが、いかがでしたか?
「これは全くの偶然の産物です。レニングラードに3年居て、無理をしたため少し体を壊したので、一時帰国したんです。その時はもう一度ソ連に戻ろうと思っていました。たまたま帰国した年にジュリアード・カルテットが日光でワークショップを開いていました。そこで即席に弦楽トリオを組んでシェーンベルクの三重奏をレッスンしてもらいました。それがきっかけでロバート・マンさんからジュリアード音楽院への奨学金を用意してあげるという話が出ました。すごく魅力的なお話でしたが、当時ソ連に行っていたのでアメリカへのビザや航空券代の問題が大きかったです。それもマンさんや廻りの方々の援助でクリアになり、ジュリアードに行ける事になりました。
ジュリアードには学生として1年間滞在し、その後ニューヨークにそのまま住んでいましたが、ソ連で抑制されていたものがはじけて、羽目を外してしまいました。(笑)
その当時何も無かったソ連から、使い捨ての文化のアメリカ、特にニューヨークという別世界との変化に戸惑ったのかもしれませんね。」
−高校の時から海外で学びながら、究極の東西をご覧になられた前橋さん。80年代に日本に戻って来られて、その演奏活動の途中、1982年にザ・シンフォニーホールが開館しました。そこでお客様を迎えて最初のオープニング・コンサートのソリストとして初めて登場したのが前橋さんでした。
「あの時は朝比奈隆先生の指揮で大阪フィルハーモニー交響楽団とベートーヴェンの三重協奏曲を演奏しました。あの曲はチェロに比べてヴァイオリンが難しい割に余り目立たない曲なんですよ。朝比奈先生はヴァイオリンを弾かれるし、ベートーヴェンの一音一音にイメージがおありだったので、細かい指示が出て叱られました。本当に厳しかったことを覚えています。」
−2002年に東京のサントリーホールと大阪のザ・シンフォニーホールでヴァイオリン名曲選を始められ、2005年からはほぼ毎年続けて開催されています。お客様も年1回のこのコンサートをとても待ち望んでいます。今年のコンサートの全体的な流れや曲目はどんな風に決められたのですか?
「曲目に関しては“スプリング・ソナタ”と“ツィゴイネルワイゼン”を軸に考えました。そこにフランクのヴァイオリン・ソナタを前半に加えました。後半は私の好きな小品で構成してみたんです。さらに今年はちょっと趣向を変えて〈懐かしの名曲集〉を組み込んでみました。この中の“枯葉”とか“ウエスト・サイド・ストーリー”、“イエスタデイ”などの曲は多分、私のコンサートに来てくださる年代の方々の青春時代に流行った曲じゃないですか。そんなメロディを聞くことによって、青春時代を懐かしんでいただけたら・・・という発想なんです。」
−この〈懐かしの名曲集〉はご自身で選ばれたのですか?
「もちろん、自分で。どういう選曲にしようかとか、どういうつなぎで行こうかって全部自分で考えるの。結構頭を悩ますとこなんです。今回の曲は編曲もいいし、演奏部分もいいし、聴いて頂くとすごく楽しいと思いますよ。それからピアノの松本さんはにこういった曲も得意。音を実際に出してみて、『あ、ちょっとここのとこ、こういう風に』とかアドバイスをくれたりして一緒に随分協力してくれました。」
−前橋さんの目から見たザ・シンフォニーホールの印象はどんなものですか?
「ザ・シンフォニーホールは開館からもう30年以上が経っていますが、世界中のクラシック音楽家の中で、大阪の『ザ・シンフォニーホール』という名前、そして存在感は十分に確立したと思います。世界中の音楽家がホールの素晴らしさを賞賛していて、皆がそこで演奏することを楽しみにしています。大阪のザ・シンフォニーホールで演奏できるという事自体が、彼らにとって大きなステータスなんです。このことを私はハッキリと申し上げたいです!開館から30年以上経ったという事ですが、本当に感慨深いです。私はヴァイオリンですから弦楽器というのはホールの響きに大きく影響されるので、とても弾きやすくてステージとお客様とのこの微妙な距離感がとても心地良いです。」
−ステージとお客様との距離が近いですよね。「私も最初の頃はちょっとそう感じていました。今はそれが「シンフォニーホールはこうだ!」という特徴になっていて、非常に心地よいというか、雰囲気を含め演奏しやすいです。
世界中には伝統的なクラシックの良いホールが沢山あります。そこにはアーティストにとって必要な楽屋とか設備とかそして何よりスタッフの方々の心遣いが行き届いていて非常に良く整っていると思います。それは演奏するアーティストにとって理想的な環境です。」
−ザ・シンフォニーホールもそれに負けていないレベルでしょうか?
「もちろん、もちろん!そういうことも含めて、世界中のクラシックの音楽家が競って演奏したがるホールってあるじゃないですか。例えばニューヨークのカーネギーホール、ベルリンのベルリン・フィルハーモニーホール、ウィーンの楽友協会とか・・・・大阪ではもう『ザ・シンフォニーホール』なんです。このホールの独特の雰囲気も含めて長年育てていくものだと思いますし、これからもずっといつまでも『ザ・シンフォニーホール』で在り続けて頂きたいです。私もこの素晴らしいホールで1回でも多く演奏・・・弾き続ける事ができればと願っています。」
−最後に前橋さんの現況を教えて頂けますか?
「最近、弦楽カルテットに取り組み夢中です。私はずっとソロで活動してきたので、これまでカルテットでの演奏の機会がなく、同級生でもある東京カルテットの創立メンバーの1人でもあるチェロの原田禎夫さんの快諾を得、ヴァイオリン:久保田巧さん、ヴィオラ:川本嘉子さんというメンバーで去年ベートーヴェンの弦楽四重奏曲でコンサートを実現。皆さん忙しい方々ばかりですが、2016年に第2回目を計画しています。
ベートーヴェンの初期・中期・後期の弦楽四重奏曲を弾くことによって、私も改めて彼の多岐多様な面を勉強することができました。今回のコンサートで弾く“スプリング・ソナタ”にも活かされると思います。これからも少しでも色々な角度から自分の演奏が深めていけれたらと。音楽を追求する気持ちは前より強くなってきています。」
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クラシック専用ホールで生の演奏を味わうひととき
前橋汀子 ヴァイオリン名曲選
毎年お楽しみ頂いているこの「ヴァイオリン名曲選」は前橋汀子さん自らが曲を選び、出来るだけ多くのお客様にヴァイオリンを、そしてクラシック音楽を気軽に楽しめるようにとの想いから始まったコンサートです。演奏される数々の名曲は普段クラシックを聞かない方でも毎週のように足繁くザ・シンフォニーホールに足を運んで頂いている方でも誰もが心地よく楽しめる曲を散りばめて、毎年たくさんのお客様に“至福の時間”をお届けしています。
今回は前半に美しい旋律が全編に煌めく、ベートーヴェンの「スプリング・ソナタ(春)」と色彩豊かな情景が瞼に浮かぶフランクの「ヴァイオリンソナタ」が並びました。どちらもヴァイオリンソナタの人気曲で、2曲とも一つの主題やモチーフが複数の楽章に現れる“循環形式”と呼ばれる手法が用いられていることでも共通しています。この“豪華2本立て”を前橋さんの演奏で聞く機会、クラシック好きには聞き逃せません!
後半にはドヴォルザークの「我が母の教え給いし歌」(クライスラー編曲)、シューベルトのアヴェ・マリア、そして丸山貴幸さん編曲“懐かしの名曲集”としてビートルズの不朽の名曲「イエスタディ」、“ウエストサイドストーリー”より「マリア」、愛の賛歌など古今東西の名曲が続きます。珠玉の名作が散りばめられた後半を締めくくるのは、知らぬ者なきサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。まさに“名曲選”の名にふさわしいラインナップで前橋さんが奏でるヴァイオリンの魅力をそして生演奏の魅力を存分にご堪能ください!