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2026年3月13日

主演・伊藤健太郎×脚本・どくさいスイッチ企画×ふくだももこ監督 SP座談会

TYPEなに? 性格診断で人生決めちゃいます

伊藤健太郎というキャスティングで完成した新境地の脚本

今作の脚本はどのように紡ぎあげられたのでしょうか。

どくさいスイッチ企画(以下、ど)ふくだ監督とプロデューサーさんとで出し合ったアイデアをベースにまずお話を作りました。ドラマ脚本は初めてで、最初は映像化できるかどうかを考えずに書いちゃったのですが、ふくだ監督と何度もやり取りをして、映像化のテストもしていただきました。

ふくだももこ監督(以下、ふ)私たちがお伝えしたアイデアをすごく面白がってくださって、すごい速度で何パターンも書いてくださるんです。そのうえでやはり、どくさいさんが描いた世界観を大切にしたいとつねに考えていました。だだ、やり取りをしていく中で、つねに面白いと思っていて。新しいトピックだし、性格の違う自分を1人5役で演じるし、なにもかもがすごく斬新で。面白い作品になるというのはずっと感じていました。

良かったです。でも、書いている段階ではキャスティングが決まっていなくて、伊藤健太郎さんに決まったと聞いたときは“こりゃ大ごとになった”って。

伊藤そんなそんな!

いつもは自分が演じるコントや落語の台本しか書いたことがなかったので、伊藤さんのイメージへとセリフを調整していきました。

そうでしたね。企画段階から真っ白な空間で、しかも1人5役で撮影する方針でしたから、まったくキャスティングが想像できなかったんですが、伊藤さんに決まった時、「めっちゃいい!」って盛り上がったんですよ。足りなかったピースが完全に揃った確信がありました。伊藤さんは最初に台本を読んだ時の印象ってどうでしたか?

伊藤最初に読んだときは…震えましたね。

どういう意味で?

伊藤すべての役を自分で演じるのか!って、セリフ量に震えました(笑)。それに5役といっても同じ顔なので、オーバーに演じなきゃいけないときもあるだろうなと思いつつ、同じ人物でもあるので、そのバランスはすごく考えました。

そして、5日間で5役を演じ切った伊藤健太郎に、人生初の○○が起こる

伊藤今作では、初めて家から撮影現場に向かうまで台本が手放せなかったし、台本がボロボロになりました。基本的にセリフを覚えることって苦手じゃないんです。でも、あんなにも撮影でNGを出したのは初めてなほどで…。特に最終日はすごく詰まっちゃうことがあって。

そうなんだ…!

伊藤目を瞑ると頭の中に5人の結城が出てくるんですよ。それこそ落語のように5人が口々に喋って(笑)。

うわあ…セリフの覚え方ってどうしていたんですか?

伊藤最初はセリフの覚え方がわからなかったんですよ。これまでとは台本の読み方が圧倒的に違っていて、1人のキャラに集中して覚えるわけにはいかないので、全部を一気に覚えてからひとりで掛け合いをする感じでした。まさに落語をやっているような感覚でしたね。落語家さんってすごい!って思いました。

演じ分けるときって、セリフを覚えてからキャラクターを作っていくのですか?

伊藤そうですね。覚えてからニュアンスとか声とかをイメージして、リハーサルで監督とお話をして。キャラを詰めていくのは、衣装を着てメイクをしてカメラの前に立った時に生まれる感覚が大きいかもしれないです。ただ、今回はワンシーン撮った後に、別の性格として同じシーンを撮影するというのを5回繰り返すんです。なるべくそのシーンに慣れすぎないように意識しましたが…5日では撮影は終わらないと思っていました(笑)。

スタッフさんも含めてみんな5日で終わるって信じていなかったですね(笑)。

たいへんな台本を書いてしまって、申し訳なさが沸き上がってきました…。

伊藤そんなことないですよ!むしろ、撮影が終わったら、すごい達成感だろうなって思っていたんです。もう自分の中ではすごいチャレンジングな作品で勉強にも自信にもなりましたし、痺れましたね。

完成度の高い1人5役の緻密な撮影を実現させたキーマンとは?

今作では、ボディダブル(顔が映らないシーンを演じる代役を用いた撮影方法)を取り入れています。

伊藤代役の方々が5人いらっしゃって、そのキャラとしてしっかりとお芝居をしてくださいました。

この5人の存在がとても大きかったですね。

伊藤本当に!僕が演じた芝居を、みなさんメモまで取ってテストで忠実に再現しようとしてくださるんです。それで、再現してくださったお芝居を俯瞰に見ることで“もっとこうしてみよう!”って思えることが多くて…刺激になりましたね。

代役さんが忠実に伊藤さんのお芝居をトレースしているのに、絶対に同じようにやらなかったですよね?

伊藤嬉しい反面、もっともっとこうするよ!みたいな気持ちになっちゃって(笑)。だけど、そこが一番勉強になったんです。自分が演じた直後に、自分の芝居を別の役者さんが演じてくださる機会なんて、なかなかできることじゃないですし、自分にとって新しい発見が顕著になりましたね。

特にカリスマタイプで伊藤くんがテストでいきなり大見得を切る芝居をしたときは、ボディダブルの役者さんたちが“なになに?どんな動き?”ってざわついていたんです(笑)。でも、それくらい一所懸命に演じてくださって。

伊藤本当に、5人がいなかったらこのドラマは完成していなかったと思います。

真っ白な空間での撮影…だからこそ表現できた不思議な世界観

撮影現場に伺ったとき、代理店の人だと思われていて誰からも声をかけられない時間があったんです…。

伊藤脚本家さんだとは、まったく思わなかったんです…失礼しました。

いえいえ。この服装(スーツ)でしたから…(笑)。実際に撮影を見学させていただいて実際に伊藤さんが演じているのを拝見すると“結城ってこんな人だったのか!”っていう発見もありましたし、自分で描いたキャラクターが伊藤さんやボディダブルの方々のお芝居で、より魅力的に増強されていることが伝わってきて、本当に嬉しかったです。
――撮影現場は全面真っ白なスタジオでした。

企画段階から白い空間で、どうやって映像化していくかをずっと話していましたが、本当に真っ白なスタジオで撮影していて…。

脚本づくりは本当に楽しかったんですが、撮影が始まると、こんなにも大変なんだ!ってビックリしました(笑)。どうやったって背景は真っ白ですし。

伊藤(演じる側としては)カメラに向かってお芝居するシーンはまだ良かったんですが、4人に囲まれた結城がみんなを見渡した時に、不意に役が抜けて我に返りそうになる時があって。その意味では、小物があるセットだと感覚が難しかったかもしれないです。真っ白なスタジオだったから、ドラマの世界観に没入できたかなって、終わってみると感じますね。

確かに、お花や本があると色々と気になっちゃったかも。監督としては、こんなにも一人の芝居を見続けて向き合える経験ってすごく楽しかったです。背景が常に真っ白だからこそ、カメラマンの柴尾(和飛)くんがすごく考えていろんな角度や寄り引きで結城を撮って、照明の志村(幸也)くんも飽きさせないような不思議な空間を作って…改めて技術部の凄さを感じさせられた撮影でした。

それぞれに残る印象的なセリフから紐解く物語のメッセージ

伊藤大切にしているセリフってけっこうあるんですが、個人的には「人生すべてタイプ診断を基に、ですか」というセリフ。ドラマの根幹になるセリフのひとつだと思っていて、ドラマを観た方々がこのセリフをどういう風に受け止めてくださるかっていうのは、自分の中で気になるし、大事にしたい部分でもあって印象に残っています。

そうおっしゃっていただけてすごく嬉しいですね。お笑い芸人の僕に脚本を依頼いただいたということは、笑える面白さに期待していただいたのかな、と思って書き始めたのですが、最終的には物語で何を伝えたいか、というテーマ性を心掛けていたので、今こうして伊藤さんと共有できてよかったです。

私はラストシーンの結城の表情です。どくさいさんの脚本ですし、ゾワッとするような不思議な観終わり感にしたくて、伊藤さんに“ある表情”をお願いしました。そうしたら一発で決めてくださって。“あぁ、伊藤さんで本当に良かった”と思えた瞬間でしたし、映像表現をしていて一番の醍醐味でもあるんですが、脚本で想像していたことを役者さんが想像を超えて体現してくれる瞬間――それを目の当たりにできて幸せでした。