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「負けていたら弟の無念晴らせなかった」重度脳障害の男性が死亡前日に不可解な自宅売却 「契約は無効」遺族の訴えを認め不動産会社に2150万円賠償命令 大阪地裁

05/30 19:17 配信

 重度の脳障害がある男性が病気で亡くなる前日に結んだ自宅の売買契約は無効だとして遺族が訴えた裁判。大阪地裁は不動産会社に2150万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。

(柳南秀さん)「完全勝訴というかたちで、もし負ければ弟の無念を晴らすどころか報われない」

 判決後、弟への思いを口にした大阪市内に住む柳南秀さん。7年前、南秀さんの弟・発秀さんは交通事故に遭い、高次脳機能障害と診断されました。その後は就労支援施設に通いながら、大阪市内の自宅で1人暮らしをしていました。

(南秀さん)「(事故後)意思疎通はできるが、高度な難しいことを考えようとしたら支離滅裂になったり、全然違うことを言ったりとかそういうことはあった」

 そんな中、2022年6月、発秀さんは自宅とは別の集合住宅で倒れているのが見つかり、病院に搬送されましたが亡くなりました。 

(南秀さん)「6月の蒸し暑い中、ちっちゃな扇風機があるだけで冷蔵庫もエアコンもないような部屋に入っていて」

 自宅ではない集合住宅に転居していたことを不審に思った遺族が調べたところ、不可解な点が見つかりました。自宅は死の前日に売られていて、発秀さんには不動産会社の役員に2200万円の借金があり、それを相殺するために自宅を売却する契約を結んでいたのです。

 さらに契約書や借用書にもおかしな点があったといいます。

(南秀さん)「亡くなるまでの2年間にお金貸して2200万円になったというが、これ一括で貸したようなハンコになっていて、そんなものを普通まともな人間がこれにハンコ押します?」

 書類に実印は押されていたものの、直筆での署名はなく口座への入金もありませんでした。

(南秀さん)「ハンコは本人が押したとか言っているが、弟の遺品の中に実印がないですし」「病気で亡くなる前日にこんな契約、普通はできるのかなって」

 遺族は2022年10月、不動産売買の契約は無効だとして不動産会社を提訴しました。不動産会社側は「契約は発秀さん自らの意思で結ばれたものである」として、訴えを退けるよう主張。

 30日の判決で大阪地裁は、契約書は発秀さんの死亡後に作成された疑いが強いなどとして遺族側の訴えを全面的に認め、不動産会社側に2150万円の支払いを命じました。

 裁判を終えてー
(南秀さん)「(きょうの勝訴は)戦っていくための下地ができたにすぎないと思っている」
「発秀に対して言いたいのは、見守っていてほしいし、もし力添えできるようなことがあれば、あの世からでも力添えしてほしいなという気持ち」

最終更新:05/30 19:17

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